2019/08/18
「西日本豪雨から1年。改めて考えてみる」ラストマイルのマインドチェンジがもたらす未来

100億m3(立方メートル)のコンクリートストック。舗装の95%はアスファルト。その数字は圧倒的なものだけど、それを創り出したのも人間。仮に舗装の常識が透水性コンクリートになったなら。一体どれほどの水量が排水設備を流れず地下水系に還元されるのか。
西日本豪雨から1年。改めて考えてみる。
平成最悪の被害をもたらした西日本豪雨(出典https://donation.yahoo.co.jp/detail/5155002/)。
水は低いところに流れる。
その前提は地面が水を吸収しないということ。
記録的大雨は大量の水を地面にもたらす。
それら多くの地面は水を吸い込まない。
その箇所の排水設備の限界を超えた水量は溢れ出す。
それは低地へ低地へと移動する。
比較的低い土地に集中して集まる。
そのため、最悪の洪水被害となって人々に襲いかかる。
その限界を前提に排水計画は組まれる。
水勾配、暗渠、開渠などが設置される。
それに伴い山河を削ってコンクリートが製造される。
さらに勢いを増す降雨はこうして排水され河川、そして大洋に捨てられる。
削られた山河は本来の機能を十全に果たさない。
結果荒れ狂う自然となって人類に襲いかかる。
いたちごっこ。
とても自然と人が調和するとは言えない。
いずれかがいずれかを支配する。
仮に地面の常識が透水性コンクリートになったとしたら。
ここでは道路舗装は除く。
(共同)住宅外構だけで概算する。
仮に年間80万棟が新築され、少なく見積もってその周囲30m2が透水性コンクリートで舗装される。
年間2,400万m2の地面が水を吸い込むようになる。
透水性コンクリートの空隙率は20%。
さらに、仮装路盤と地盤透水能力を合わせた見かけ空隙率を仮に20%とする。
1m2あたり透水性コンクリートが10cm、路盤が10cmとすれば、
その20%の4cmが貯水可能な計算となる。
つまり年間、2,400万m2 × 0.04m = 96万立方メートル
およそ、100万立方メートルの水が河川や海洋に捨てられることなく地下水系に還元される。
あるいは、人々の暮らしに襲いかかることなく自然に還元される。
10年続けば1,000万立方メートルの水となる。
ここに、道路舗装やリフォームなど舗装の張り替え需要は含まれていない。
つまり上記概算はあくまで「少なく見積もった」ものとなる。
巨大すぎて現実的ではないだろうか。
この仮説は実現不可能な数字なのか?
そもそも日本の舗装に材料を供給してきた産業は、
・アスファルト
・(生)コンクリート
それぞれの供給拠点数は、
アスファルト800に、生コンクリートは3,200。
一見膨大とも思われる100億m3のコンクリートストックや、高速道路や国道の舗装は、たった3,200や800の製造拠点から供給されたものにすぎない。
舗装の95%を供給してきたのはたった800のアスファルト工場だ。
3,200を数える生コンクリート工場からすればたったの25%。
そして、現時点(2019年)透水性コンクリートの製造に協力してくれる工場の数はおよそ200工場。
この数字はここ15年で少しずつ増えてきた数字。
時代や社会の要請を鑑みれば、この数字が4倍(800)になるには15年かかるとは到底思えない。
現代の繁栄を支えてきたのはこの800や3,200の製造拠点だった。
つまり、それだけの潜在能力を持つ産業ということができる。
日本の地面を変えられないはずがない。
実現に必要なのはラストマイルのマインドチェンジ。
生コンに携わる1人1人(ラストマイル)が「どうせ無理」と思ったら上記概算は絵に描いた餅に終わる。
10年で少なくとも1,000万立方メートルの水資源の保存。
自然災害の猛威は立ちくらみを覚えるほど巨大だ。
ただ、考え方を変えれば、その猛威を作り出してきたのも産業に携わる1人1人(ラストマイル)の集積。
未曾有の繁栄をもたらした今に生きる1人1人の集積なのだ。
逆算すれば、
深刻化するヒートアイランド、ゲリラ豪雨、冠水被害は僕たち1人1人のラストマイルのマインドチェンジと実践で癒すことができる。
無くすことができるのだ。
拡大再生産。
これまでの文脈の延長上にその未来はない。
ラストマイルが1つの文脈に連携し800の生コン工場が透水性コンクリートをそれぞれの地域で供給する。
少しでもCO2を排出しないコンクリートに変えていく。
資源の再利用を実践する。
水の次に流通すると言われる「生コン」に携わるラストマイルの意識さえ変われば。
僕たちは本当に自然と人が調和する世界を作ることができるのだ。
宮本充也