2021/06/07
《生コン革命》「成長戦略実行計画案」(週刊生コン 2021/06/07)

将来生コンに関わる人々はこの日の出来事を生コン革命と呼ぶのかもしれない。政府の成長戦略に特定のプロダクト生コンの、あまつさえ金額・単価まで表示された例を他に知らない。「成長戦略実行計画案」の発表、そして再定義される建設・生コン産業について。(週刊生コン 2021/06/07)
成長戦略実行計画案
⚫︎先週の記事1: 【号外】「CO2吸収型コンクリートは、2030年には需要拡大を通じて既存コンクリート同価格を目指す」(月刊透水性コンクリート)
⚫︎参考1: 成長戦略会議(第11回)配付資料
⚫︎参考2:資料1−1 成長戦略実行計画案
④カーボンリサイクルに係る産業・マテリアル産業
カーボンリサイクルは、CO2を資源として有効活用する技術であり、カーボンニ ュートラル社会の実現に重要な横断的分野である。日本に競争力があり、コスト低 減、社会実装を進めた上で、グローバル展開を目指す。
具体的には、CO2吸収型コンクリートは、2030年には需要拡大を通じて既存コンクリートと同価格(=30円/kg)を、2050年には防錆性能を持つ新製品を建築用途にも使用可能とすることを目指す。輸送機器用等のCO2と水素の合成燃料について、技術開発・実証を今後10年間で集中的に行い、2040年までの自立商用化を目指す。
マテリアル産業は、水素を用いた高炉製鉄法など、世界に先駆けゼロカーボン・ スチールの技術開発・供給を行い、2050年に年間最大約5億トン、約40兆円と見込まれるグリーンスチール市場の獲得を目指す。
将来生コンに関わる人々はこの日の出来事を生コン革命と呼ぶのかもしれない。
政府の成長戦略に特定のプロダクト生コンの、あまつさえ金額・単価まで表示された例を他に知らない。
低迷を続ける生コンクリートを職業に選んで21年目となるが一貫して下りのエスカレーター、時には「コンクリートから人へ」とまで貶められたコンクリートに今、脚光が当てられている。
もしかしたら、「結局政府が公共事業を正当化したいだけ?」くらいのことを言い出すかもしれないが、専門家諸氏にとってはこのコメントが知識の浅い人々のくだらん邪推であるということはわかるはずだ。
低迷する、つまり、世界の要望に応えないコンクリート産業の末端にあって、21年間もがき苦しんできた生コンポータルがこれまで継続して発信してきた具体的なプロダクトやサービス。
「ポーラスコンクリート」
「残コンソリューション」
いずれも、カーボンオフセットの時代にあって、そのソリューションとして注目が集まっている。
⚫︎参考記事1: CO2削減座談会YouTubeリリース!「残コン問題解決は、カーボンニュートラルの実践になる」
⚫︎参考記事2: 《コラム》「透水性コンクリートの本当の価値は水を透すことではないのかも知れない」
昨年10月のRRCSローンチと同時に発表された菅首相「2050年カーボン・ニュートラル」宣言から、ここ半年で急激に分野として開かれはじめた技術分野。
その極め付けの契機となる政府発表、CO2吸収型コンクリートは、2030年には需要拡大を通じて既存コンクリートと同価格(=30円/kg)を、2050年には防錆性能を持つ新製品を建築用途にも使用可能とすることを目指すという明示。
時代の飢餓に出会う、ということはまさしくこういうことなんだと思う。
低迷する生コン産業が、新しい市場分野を開拓する最後のチャンス。
鍵は、ラストワンマイル生コン工場の主体性
以下に、とあるスーパーゼネコンの役員に宛てて送ったメールの一文を引用したい。
先週政府から発表のあった成長戦略実行会議・
コンクリート、建設系のメディアを引くまでもなく先端技術は枚挙にいとまがない。
CO2を吸収する、或いはCCUを実装したコンクリートがそれだ。
だが、冷静になって振り返ってもらいたい。
時代や世界が求めているコンクリート技術はこれまできちんとその声に答えて普及してきただろうか。
誰もがその必要性に疑いを挟まないリサイクルコンクリートはどうか?
【予告編】再生骨材市場を活性化させるために必要なこと | RRCS対談座談会 Vol.8
歴史を振り返れば驚愕の事実に突き当たる。
「誰もが求めるリサイクルコンクリートの歴史は50年を数えるというのに、いまだに普及は限定的」
というこの事実を僕たちはどのように解釈したらいいのか。
「テクノロジーは飽和している」
スマホやパソコンを例にすれば、Win98で現代のアプリケーション(テクノロジー)は動かない、ということなのだと思う。
新しい時代に求められるアプリケーションは、前時代の産業構造では駆動しない。
CO2吸収型も、リサイクルコンクリートも、そして、ポーラスコンクリートや残コンソリューション、全て同様のことが言える。
革命という奴は、既存ヒエラルキートップの自己破壊からは生まれない。
フランス革命だって、最近ではジャスミン革命だって、常に、体制ではないヒエラルキーボトムから噴出して生じる。
無論、ことはテクノロジーの話だから、物騒な革命ではなく誰もが傷つかない平和的な革命。
革命には常に変化が伴う。
ニューノーマル、グレートリセット。
今、コンクリートに限らず、あらゆる分野が再定義されている。
それは、外圧から破壊され0から作られるものではなく、既存の構造の内側から有機的に生み出される「テセウスの船」のような革命。
⚫︎テセウスの船:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%BB%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%88%B9
構造内側からの破壊を伴わない自己変革。
さあ、今、誰もがスタート地点に立たされている。
新しい時代を切り開くのはいつだって現状に課題意識を持つごく少数のラストワンマイル。
生コンラストワンマイルが意識を高め、新しい産業構造の中でリーダーシップを発揮する。
そのことでしか、革命は革命たりえない。
生コン革命は始まっている。
宮本充也