2020/07/26
「材料単価の比較では高くとも、トータルコストでは《めっちゃ安くなる》」土間コンクリート vs 透水性コンクリート #6

《最もよくある質問》「材料は高いのにどうして安い駐車場になるの?」。人気シリーズ《土間コンvs透水性コンクリート》では今回多くの排水設備を必要とする送電線鉄塔内(変電所)での比較を検証した。材料単価の比較では高くなる透水性コンクリートも、その機能によりトータルコストは「めっちゃ安くなる」。
高度な排水が求められる場合は《めっちゃ安い》透水性コンクリート
今回の比較検証の現場は電力会社が発注する送電線の鉄塔内舗装。
以前と比べて最近ではこうした設備も住宅街など近隣に人が住む場所に設置されることも少なくない。
田んぼのど真ん中や山間部なら全く問題にならないものの、住宅街では特に「排水」は重要な課題。
「電力設備から流出してくる水」
「感電しそう」
全く根拠はないながらも、近隣住民からの不安の声が寄せられる。
だから、電力会社にとっては排水は実に重要な課題となる。
さらに鉄塔のようなトラス状にアングルが組まれた構造体は雨天時待機中の雨粒を集めて直下に流下させる。
そのため通常の土地よりも排水すべき量が大きくなる。
そんな「特殊な」環境下では土間コンクリートのように「水を通さない」舗装の場合追加で排水設備に多額の費用がかかることになる。
それでは《土間コンvs透水性コンクリート》電力設備編は以下の通り。
土間コンvs透水性コンクリート150m2・80mm鉄塔内舗装
⚫︎透水性コンクリート
合計:720,000円(4,800円/m2)
3時間30分
⚫︎土間コンクリート
675,000円(4,500円/m2)
目地49m:49,000円
外周にU-180集水桝1基+U字溝49m:240,000円
合計:964,000円(6,427円/m2)
3日
なんと、「材料が安い」土間コンクリートで施工しているはずなのに、透水性コンクリートよりも、244,000円も高く、さらに3時間半で終わるところが3日がかりとなっている。
だから、次から次へと各電力会社ではアスファルトや土間コンクリートに代わって透水性コンクリートが選ばれている。
こちらが完成写真。
見ての通りどこにもU字溝や集水桝といった排水設備の姿はないし排水のための目地(スリット)も見られない。
だから、雑草が生えてくる心配もない。
路面自体が水を吸い込むため、近隣への流水問題も解消される。
《トータルコスト》曖昧で不明瞭な価値ではなく「ガチで安い」
コストにもいろいろあるけれど、やっぱイニシャルコスト、実額、財布からいくらお金が減るか、がとても重要だ。
「ライフサイクルコストでは安くなるんです」
こうした説明は弁解じみている。
顧客が欲しいのはそんな「将来の見積もり」ではなく「今いくら金が失われるか」という情報である場合が多い。
おかげさまで普及が拡大してきた透水性コンクリート。
ここで改めて「どうして採用されたのか?」をコスト面で振り返ることで今後舗装を検討している全ての人たちのための参考にしたい。
「将来的に雑草で苦労する」
「バスケットコートにするとドリブル音が静か」
「水たまりができない」
そんな観念的な価値に値札をつけるのではなくて、実際に機能的に(排水・周辺工事)いくら高いのか安いのか。
理路整然と情報発信することによって少しずつ日本の地面(舗装)の常識を変えていきたい。
「地球環境のために、将来に美しい環境を残すために、《高く》買ってください」
は通用しない。
市場経済で15年透水性コンクリートの普及に携わって得た実感だ。
僕も安い方を選ぶ。
だから、透水性コンクリートは安くなければならない。
そのために、製品そのものの改善ももちろんだけど、あらゆる環境における比較を整理しておくことはとても有意義なことのように感じている。
宮本充也