2020/05/08
「雨水で地盤はゆるむの?」「地盤条件に制約がある?」透水性コンクリート・路床・地盤・地下排水

こちらもウェブ上でよく見かける質問。「透水性コンクリートには地盤条件などに制約があるからお勧めしない」という主張。その根拠は「雨水が浸透して地盤が緩む(弱くなる)」。それでは、砂利の駐車場はどうなるの?地盤のそもそも論について。
(トップ写真出典:https://www.ecocleansoil.jp/blog/399/)
「ドライテックは地盤状況に制約があるので、勾配不可の時限定」は誤り
ドライテックのエゴサーチで発見したツイッター投稿(出典:https://twitter.com/penta8786/status/1257938963219660806?s=20)。
ドライテックは地盤状況に制約があるので、勾配不可の時限定
というご指摘。
解説に入る前にまずは、
「インターロッキング」「土間コンクリート」
に並んで、
「ドライテック」
をご紹介していただいたことに心より感謝を申し上げる。
無責任な住宅会社が多すぎるので、施主向けに営業マンより100倍家に詳しくなれる情報発信。
情報弱者の施主に寄り添い有益な情報を提供しようとするその姿勢も素晴らしいと思う。
庭ファン(https://springbd.net/)もそうだけど、インターネットはこれまで情報弱者だった施主に有益な情報を届けるようになった。
こうして情報の流動性が高まり消費者により安心して選べるようになることには大賛成だ。
ドライテックは地盤状況に制約があるので、勾配不可の時限定
その上で、誠実にこちらの情報が誤りであるいことについて解説する(誰にだって誤りはある)。
多くの人たちが心配する、
「雨水が地面に浸透してしまい地盤が緩む(弱くなる)のでは?」
という懸念。
それでは、「砂利が敷いてある駐車場」
はどうだろう。
舗装されてない砂利が敷いてある駐車場が長年の雨水で緩んで落盤する?
砂利の駐車場でタイヤがハマるほど凹んだのを見たことある?
「雨降って地固まる」ということわざだってある。
「そもそも、地面とは水を浸透させる」
雨水は本来地下に浸透し樹木や草花の根系に水や酸素を届ける。
地下水系が豊かになることで湧水や井戸水は人々の暮らしを潤していた。
そもそもの自然の機能「地面は水を浸透させる」を僕たちは忘れている。
家が建っている場所の地盤だってそうだ。
そもそも雨で緩んで溶けてしまったり流れてしまったりするような地盤の上に家なんか建てない。
地面の上に透水性コンクリートを舗装することで起きる地盤のリスクはない。
粘土層などのような軟弱地盤の対策
家が建つ場所にはあまりないが雨水が浸透してぶかぶかにぬかるんでしまうな地質もある。
粘土層のように水はけが悪く強度も低い地盤だ。
こうした地盤上に家を建てる場合には地盤改良(あるいは置き換え)という措置が取られる。
駐車場に透水性コンクリートを施工する場合にも、雨水は浸透してこうした地盤をゆるませる懸念はあるので、その場合は建築前と同様に適切な措置が講じられる。
(舗装の設計において、路床強度の基準:CBRは3以上となっている ※改めてWEBで調べてみて「地盤」や「舗装」に関する一般向けの記事は生コン以上に少ないことがわかる。これでは情報が錯綜するのも無理はない)
⚫︎石灰(あるいはセメント系固化材)による地盤改良
⚫︎強度特性が確認された良質土による置き換え
など健全で安定した地盤(路床)を構築し、その上に路盤(クラッシャーラン)・透水性コンクリート舗装(表層)を施工すればこれで大丈夫。
そもそも、家の重量に比べて車両の重量は小さな物。
そんなに大袈裟な地盤改良をせずともまず危険はないのでそれほど心配する必要もない。
それでも心配という方には上記に加えて、
⚫︎遮水シートなどで地盤に水を浸透させない
⚫︎地下暗渠やなど地下における排水設備を設ける
などの方策もある。
あるにはあるが、地盤の専門家に相談してみよう。
きっと「心配しすぎですよ」と一笑に付されることだろう。
最後に。
透水性舗装=地盤の検討が必要
という概念は国道や高速道路のような不特定多数の重量車両が日に何千台も往来する舗装を設計する場合に検討される。
ダンプカーやトレーラーなどが安心して道路を往来するための高度な設計は住宅外構の分野では必要ない。
舗装施工管理における知識体系をエクステリアに準用しようとすることがそもそも大袈裟。
住宅周りの駐車場なんかせいぜい1t程度の荷重。
1t程度の荷重に耐えられないような地盤の上にそもそも家は建てない。
舗装なんかなくとも砂利を敷いておけば駐車場として機能する(草むしりが嫌だからみんな舗装する)。
冷静に考えればすぐにわかることなのだけど、インターネット時代多くの情報が錯綜するからその都度一般の人々は惑わされる。
瀬山さんのように知識のある方でも誤って伝えてしまうくらいなのだから。
生コンポータルでは引き続きコンクリートの専門家の立場から広く一般の方にもなるべく伝わるように情報発信に努めたい。
宮本充也