2019/11/10
「僕の中身をみてください!すごいいいやつなんです!!」

うーん、惜しい。
あと一歩。
素晴らしいアイディアなんだけど、なんか一味足りない。
世の中にはそんな製品にあふれていると思う。
「○○の部分は本当に世界初なんだけど、××のために100%活かされない」
そんな感じの事態。
なかなか具体的な事例を思いつかないのが悔しいけど、
僕の経験上でもこうした残念なあと一歩製品を多く見てきた。
こうした現象はどうしても売り手が製品にこだわるから起きるんだと思う。
やっぱり、ものづくりの現場にいる僕たちは、自分の製品に誇りを持っている。
だから、自分の製品が一番、だと思いがち。
けれど、買い手は、
「誇り」を買うのではなくて、
「欲しいもの」をただ買う。
だから、作り手の近視眼的な拘りは極力冷静に客観的に見つめて、
できるだけ買い手側の立場に沿った製品づくりを心掛けなくてはならない。
そんなことを強く感じた現場があった。
通常、僕たちはドライテック(→水たまりの無いコンクリート)を販売しようとする。
なんとか成約に持ちこむために、その良さをあらゆる手段でお伝えしようとする。
これは間違っているとは言わないけれど、
本来は、「お客様の本当の『欲しい』にお客様を導く」ことが大切。
確かに、お客様の「欲しい」の中には、「水たまりのない」が入ってるかもしれない。
だけど、優先順位はそんなに高くないのかもしれない。
1.見た目
2.価格
3.機能→水たまりができない
が、お客様の欲しい優先順位だというのに、
僕が「水たまりができないんです!」と猛烈にプッシュしたら、
やっぱりうざかろう。
誰かを食事に誘うとき、
その人が実は食事そのものよりも、
「ゆったりとくつろげる雰囲気」をほしいと思っていたとして、
だけど、「ここの手羽先死ぬほどうまいんだよ」と言って、
4畳半くらいに人がごった返すカウンターに連れて行ったら、
そりゃあ、だめでしょ。
今回の現場は、まさに機能そのものを売り込むのではなくて、
「欲しい」を更に際立たせるために、
水たまりのできない、という機能が活かされた現場だった。
そのお施主さんは、
・見た目→天然石自然石の風合い
(リンクストーン 天然石自然石舗装;四国化成)
を欲しいと思っていた。
その欲しいという想いに対して、
・水たまりができない
だことの、
・水勾配を考えなくていい
・環境性能
なんかは、耳に入らない。
ただただ、天然石舗装の美しいテクスチャに憧れているのである。
その人に対して、「透水性コンクリート素晴らしいから買ってください!」
と伝える行為はまるで、スポーツ万能でイケメンに思いを寄せる女子に、
「僕の中身をみてください!すごいいいやつなんです!!」
と言っているようなもの。
この現場では結果的に僕たちのドライテック(水たまりのない駐車場)が採用された。
これは僕たちが巧んで提案したものではなく、
お客様のほうからのお問い合わせだった。
曰く、
・リンクストーンに惚れている→見た目がとても美しい
・しかも、リンクストーンはポーラス状(雷起こし状の構造)のため、水を透す
・表面の水はとどまらず抜けていく
・だけど、その下のコンクリート(下地にコンクリートが使われる)が水を透さない
・結果的に水を透さないから水たまりになる
・じゃあ、下地のコンクリートも水を透したらいいよね→ドライテック採用
なるほど!
主役じゃなくてもいい、ということに気づいた名わき役の気持ちだ。
きっとリンクストーンを作っている人も(聞いたことないけど)、
「とにかくうちの製品は美しい素晴らしい」
という想いで仕事をしているはずだ。
僕とて、「うちの水たまりのない駐車場はほんとすごい」と思ってやっている。
だけど、顧客の純粋な欲求「欲しい」はその近視眼を矯正してくれる。
やっぱり、「欲しいものを買う」だけなんだって。
今回の現場
・株式会社藤島組
・横浜市根岸記念公苑
において、横浜は東伸コーポレーションさんから運んでいただいた、
「たった1立方メートル」
の現場。
普通は看過してしまうところだったけれど、
上記のようなすごい気づきを得ることができた。
やはり、現場にすべての答えが眠っている。
透水性コンクリート普及推進の道は面白い。
宮本充也