2021/08/01
「残コンリサイクル骨材の未水和セメントが作用してビン内で締め固まった骨材が凝結・硬化してしまう現象」

残コンリサイクルコンクリートECON出荷を決定して1ヶ月。再開をよろこび再び注文をいただいた顧客もあった。現業の体制が確立せずにせっかくの注文をお断りしたケースもあった。1ヶ月を経てそれぞれが持った課題を共有した。貯蔵ビン内固結はどうだったのか?
なんで色々理由つけてやろうとしないんだろ?
残コンリサイクルコンクリート(econ)の出荷上問題となりやすい貯蔵ビン内での固結現象。対策として、7:3の割合で30%砕石をブレンドした。そのビン内の様子を撮影
動画は廣川さんが共有してくれたものだ。
1ヶ月前のミーティングで、「(ECONの出荷は)やるべきだと思います」と口火を切ってくれた彼は普段主に製造の役割を果たしている。
⚫︎参考記事: 「残コン由来の再生骨材コンクリート(ECON)の製造・出荷の再開」
出荷指示が配車から伝達されると、その時の材料のコンディションに応じて注意深く生コンを製造する。
だから、プラントのコンディションについても普段から注意深く監視している。
ECON(残コンリサイクルコンクリート)の再出荷最大の懸念事項。
ビン内固結。
残コンリサイクル骨材の未水和セメントが作用してビン内で締め固まった骨材が凝結・硬化してしまう現象。
以前はこれが度々発生して僕たちはしばらくの間ECONの製造を断念していた。
再開に当たり「7:3で30%砕石をブレンドしよう」という解決策が示され、1ヶ月間それが実行されたのだった。
「これなら、大丈夫そうです。また、骨材(残コン由来)の荷揚げは2〜3日晴れが続いた乾いたものがいいでしょう」
廣川さんの見解だ。
実際にビン内で固結が発生すれば、その皺寄せは製造を担当している彼にダイレクトだ。
その彼が、リスクを嫌がらず、前向きにこの意見を出していることに僕は感動していた。
さらに話題はコストに及んだ。
この方法で製造した残コンリサイクルコンクリートは通常の生コン(18−18)に比べて2,200円ほど安い。
今後の課題としては、30%ブレンドしている粗骨材や細骨材をスラグなど副産物系骨材を検討したらどうか。
そのことで原価はさらに安くなるし、より大地を削らない(山河を削って天然骨材を産出しない)コンクリートにもなる。
それはそのままCO2抑制を意味する。
1時間足らずで共有や意見交換が行われ、「まあ、だいたい課題も見えたし、ミーティングは定例化せず、都度情報共有していきましょう」。
こうしてECONは特別な何かではなく、長岡生コンクリートにとっての自然な流れの1つとなった。
「なんで色々理由つけてやろうとしないんだろ?」
工場からの帰り道、残コンリサイクルを主に担当しているフェラーリさんと歩いて帰る道すがら。
僕は廣川さんも、遠藤さんも、池上さん、柳川さん、今回のミーティングに関わった全ての人たちがとにかく目的をよく理解し、そして自分の役割も明確に意識し、進んで意見を出し、主体的にアクションを起こそうとしていることに感銘を受けていた。
それはフェラーリさんも同様のようだった。
(近所の杉山商店でクラフトビールとおつまみを買い込みリラックスした気分で帰途に着くこの習慣はお気に入りになりそうだ)
ドライテックの時もそうだった。
うちを含めるいくつかの前向きな工場は口の前に体を動かす。
まずは、形にする。
やってみる。
それが組織に組み込まれている。
一方、生コン産業を見渡してみると、そんな生コン工場はそれほど多くないことに気づく。
組合、独占禁止法適応除外、カルテルに保護され悪用した結果、顧客の希望ではなく、自分都合が優先されるようになっている場合もある。
「面倒くさいからできません」
「やったことないからやりません」
ドライテックの製造依頼を鼻先でシャッターを下ろされた経験を数多くした僕たちはいつしか生コンという産業に課題を抱くようになっていった。
このままでいいはずがない。
残コン問題だってそうだ。
「困ってる」
「年々処分費が高騰している」
口ではいうけれど、実際にアクションを起こしている人は一握り。
本当に困っているのだろうかと訝しんでしまう。
フェラーリさんがいう通り、「なんで色々理由をつけてやろうとしないんだろう?」。
ただ、やるだけなのに。
鍵はドライテックが創造したパターン。
発注機関やコンサル・ゼネコン、大手企業を頂きに据えたヒエラルキーでいくら真面目に頑張ってもダメ。
いつまで経ってもうだつは上がらない。
ペコペコ頭下げたって、生殺与奪の権(買う買わないの意思決定の権利)は相手側にある。
最初から負けゲームなのだ。
お願い営業は絶対に形にならない。
「買わざるを得ない状況を創る」
これに尽きる。
買わざるを得ない状況とは何か?
色々あるだろうけれど、もちろん世論・一般の共感、「それがあるべき姿だ」という市場と顧客の共感。
それを醸成するためにはドライテックでも同様の「しつこい情報(価値)発信」を行うより他はない。
さらに、今の時代圧倒的な優先順位を誇っているのは、「脱炭素」SDGs、ESG評価。
残コンリサイクル骨材がCO2発生0という事実をきちんと立証しそれを公に発信する。
規格に盛り込む。
コンサル・ゼネコン以下が「使わざるを得ない」状況を作る。
「買わせてください」を作る。
残コンリサイクルコンクリートはある意味でもう一歩のところまで来ているのだと思う。
長岡生コンクリートがやるべきことは何?
大きいことを書いたが、長岡生コンは生コン工場だ。
領分を弁えなければならない。
僕たちの仕事は、論文を書くことでも、大学の先生たちと懇親することでも、業界のパネルディスカッションに参加して悦に入ることでもない。
現場、ラストワンマイルが僕たちの仕事、領域だ。
そこが僕たちの強み。
だから、そこに100%経営資源を集中投下する。
現場・現実・現物にじっくりと向き合い、その経験を蓄積し、ノウハウ、伝えられる形にしていく。
そして、インターネットと企業間連携を通じてそのノウハウ、経験を全体に統合する。
そこでも大切な問いは、「なんで色々理由をつけてやろうとしないんだろう?」。
フェラーリさんが疑問を抱いたように、何が生コン工場・ラストワンマイルにとってボトルネック・阻害要因になっているのだろう。
その原因を解消するにはいったい何が必要なんだろう。
この疑問を常に日々の仕事の中で抱き続ける。
自分(生コン工場)と自分と同じような人たち(他所の生コン工場)のために自分の全てを捧げる人生を生きる。
ドライテックが市場を開いたように、次は残コンリサイクルコンクリートECONが市場を開くことになるだろう。
それはそのまま「大地を削らない、汚さない、蓋しない、CO2を収容するコンクリート」の実践となる。
僕たちはもう他人に頭を下げて何かを頼んだりお願いしたりしない。
凡事徹底。
自分たちができることを粛々と続けるのみだ。
宮本充也