2019/10/14
「子孫の時代までも美しい空、山、海、川を残してあげたい」

記録的、想定外。年を追うごとにこうした言葉は頻出しているようだ。四季は失われこれまで経験したことのないような異常気象に度々襲われる。自然と調和する営みについて。
なじみの景色を一変させてしまう自然
台風19号が迫る先週土曜日の東京の地面。なじみの景色は少しの雨でも水浸しになってしまう。
警戒が発令された荒川河川敷。普段ランニングに利用する道は濁流に飲み込まれている。
送電線鉄塔下は一際雨水を集めるため、直下は冠水しやすい。残された土砂がその爪痕を残す。
指数関数的な成長。
スピードが早まっているのは歳を取っただけのことではないだろう。
よくテクノロジー、特にITやAIの分野の進化は「指数関数的」と言われる。
・チェス盤の法則
・ハスの葉の増え方
・ムーアの法則
初期にはその成長は些末なもののように見えてもその深刻さに気づいた時には手遅れ。
地球環境にも同じことが言えるのではないだろうか。
西日本豪雨もそうだった。
今回の台風19号もそうだ。
記録的、想定外、こうした文字が頻出する。
もはやそれは特別なものではないことを示している。
仮にその深刻な「異常」気象が指数関数的に度合いが深まる類のものだとしたら。
僕たちには何か打てる手立てがあるだろうか。
水災害だけじゃない。
30年を振り返ってみると子供の頃の気候と明らかに違うと思われるのは気のせいだけだろうか。
子供の頃は比較的温暖な伊豆でも氷がよく張っていた。
熱中症なんて言葉はいつの間にか頻繁に使われるようになっている。
「気づいた時にはもう手遅れ」
の指数関数的な軌跡の中にもしいるのだとしたら。
僕の化学の先生、MAPEIのジョルジオさんがこぼした言葉が印象に深い。
「自分たちはいい。アルベルトや充也の時代もなんとかなるだろう。この非可逆的で指数関数的な成長を人類がこのまま続けるのなら、マリアや辰太郎の時代は難しいだろう」
https://www.nr-mix.co.jp/econ/blog/holcim_mapei_pjt.html
自分たちだけが「勝ち逃げ」できるなら。
そのつけを未来世代に回してもいいのだろうか。
経済の無い活動は活動家の扇動だ。
例えば透水性コンクリートはそんな環境を少しは癒すことがわかっている。
当事者としてはその技術や製品が世の中に広がらないことに焦りを感じている。
ただ、市場と顧客の無知や不理解を論うのは当事者としての責任を放棄している。
逆に考えると、今こうした深刻な時代に、当事者としてその危機をダイレクトに感じることができていることを喜ぶべきなのかもしれない。
その危機を感じている当事者である僕たちはさらに幸運なことにその透水性コンクリートに関する15年来の経験と知識を有している。
あとは普及に向けた具体的な取り組みだ。
政治家に頼り行政を動かす。
人は言う。
「バッチを使う」
政治家を使って発注機関に圧力をかける。
すると、普及する。
営業人生15年、言われなくともその手のことはやり尽くした。
そして、気付く。
短期的、ショートランではもしかしたらそうした発注はあり得るかもしれない。
ただ、本当に共感し心から必要だと思わない活動には連続性が無い。
「上」から指示され強制されたその活動はその「上」と言う重石がなくなればまるでなかったかのように断絶してしまう。
発注機関(つまり政府、特定の全体構想)をいただきとした既存流通(産業構造)には時代の文脈にそう新しい価値を普及させる機能や役割はもう無いのでは無いか。
SDGs、環境目標。
流行り言葉として流通はしているが、僕の知る限り生コン産業で政府主導で具体的に何かが動いている痕跡はない。
階層型ではない特定の全体構想ではなく誰もが希求する"コト"を共有した新しい産業モデル。
僕は誰かにリードされたりマネジメントされたりするのは嫌いだ。
誰か、リードされたりマネジメントされるのが好きな人はいるだろうか。
特定の全体構想(指示、強制)があってそれにお行儀良く付き従う。
勉強頑張って、いい大学入って、いい企業あるいは役所に入れば人生勝ち組。
そんなわかりやすい経済だろうか。
透水性コンクリートの普及にの末端にいて感じること。
階層的多重構造の公共発注に新たな時代の文脈に沿う新しい技術の普及は頼るべくもない。
じゃあ、どうするか?
「子孫の時代までも美しい空、山、海、川を残してあげたい」
これは誰かに強制されて思うことではないはずだ。
誰もが心根で感じていること。
だけど、その具体的な活動を起こすことができず悶々としていること。
誰か特定の指示ではなく、誰もが共感する"コト"をベースに自己組織的につながり合う階層のない産業構造。
生コン製造者や施工者がさながら網目のように互いに連り合う産業構造。
自主的に時代が自然が要求している製品を供給する経済システム。
人の一生は一瞬だ。
儚い。
僕の職業人生もきっともう30年は残されていないはずだ。
その一瞬でできることはなんだろう。
身近で激変してしまったなじみの景色。
濁流に押し流されるランニングロードを見て呆然と立ち尽くしながら考えていたことは概ねそんなところだ。
宮本充也