2020/09/10
【埼玉】「残コン処理システムに単一の正解はない」東和アークス

「日に10m3以上は持ち戻される残コン。構内に薄く広げておいて翌日破砕するのに1時間以上かかる。もちろん、振動や粉塵で近隣未迷惑をかけている」。埼玉エリア生コン供給の雄・東和アークス伊田本部長や工場を取り仕切る工場長の皆さんが生コンポータルを視察に訪れる。
時間が経つにつれて深刻化する残コン問題に終止符を!
⚫︎参考記事: 「生コン産業のドアーオープナー」 残コン・スラッジ・水回り
ブログを見返すとちょうど2年半前に初めてお会いした。
その時のお名刺は本部長ではなかったはずだ。
当時から生コン工場の合理化や職員の皆さんの士気向上を課題にされていた伊田さんから再訪の打診。
「いよいよ残コン問題が待った無しになってきたので工場長たちと共に今一度見学に伺いたい」
久しぶりのご連絡もうれしかったがとてもたくましく成長され、また、工場長ら実務を仕切る方々の信頼も厚く再会はとても実りあるものになった。
「残コン処理に関わらず他所の工場を見学するだけでもとても参考になる」
普段、品質管理の番人としてあらゆる工場実務を取り仕切る工場長という職域のカバーする内容は多岐に渡る。
時間が捻出しづらくこうして他所の工場に足を運ぶ機会も珍しい。
今回は限られた時間の中だったがじっくりと実務者の皆さんとの交流も図ることができた。
残コンステーションの見学。
⚫︎参考記事: 「残コンスラッジ処理システムの全て」
ちょうど夕方戻ってきた生コン車から現場で余った残コンがプールに排出される様子。
普段の光景だが、まだまだ生コン産業の常識とはなっていない。
投入された薬剤は高分子と急結材(Re-con ZERO EVO・MAPEI製)。
重機で攪拌されること数分で水分が失われ砂粒状に改質される。
これはそのまま翌日からリサイクル砕石として再生生コンの原材料や下層路盤材として出荷される。
生コンのように硬くならないので翌朝破砕する手間も時間もかからない。
生コンスラッジの受け入れ先の確保が厳しくなってきた
残コンステーションでは生コンスラッジの発生が0。
ドラムの洗浄水や終業時のミキサなどの洗浄水は全てこのスリット水槽で濾される。
スリット水槽に排出される残水の様子。
当日から翌朝にかけてスリット鋼管で水が搾り出され残渣が得られる。
水が搾られた残水(洗浄水)は当日の残コンとブレンドされそのまま改質される。
残渣と残コンを攪拌し砂粒状にする様子。
2年半の時を経て再訪された東和アークスグループではもともとリサイクルセンターがあった。
だから、自社でコンクリートガラの再生ができるというアドバンテージがあった。
「困っている」とはいえ、恵まれた環境ではあった。
ただ、そんな恵まれた環境ではあっても、生コンスラッジの問題は年々深刻になり、ついにグループの中でもその受け入れが不可能になってきたという。
その意味で、残コンステーションのように残コンだけでなく生コンスラッジも完全リサイクルのクローズドループのシステムがとても参考になるということだった。
残コン処理システムに単一の正解はない。
操業する地域や周辺環境、業態(大口メインか、小口に特化しているか)によってそれぞれ残コンという問題も微妙に変化する。
だから、残コン処理に関しては単一のこれといった正解はない。
それぞれの工場にとってそれぞれ正解を導き出すしか方法はないのだ。
その意味で9月に発足を予定している生コン・残コンソリューション技術研究会(RRCS)はとても有意義なプラットフォームだ。
生コン工場に限定されることはなく、あらゆるセクターの残コンに関わる人々が集い情報交換を行う。
ルール・法律の整備を企図する。
規格化を目指す。
その交流の過程で自社にとっての正解を模索する。
だから、東和アークス社にもRRCSへの加盟を提案した。
個社での参画ももちろん、組合単位での加盟もできる。
そこにはアウトだとか組合だとかという小さな前提は存在しない。
「もっといい生コン産業を」
という共通ゴールを旨に共同がスタートする。
もちろん、生コンポータル(長岡生コンクリート)としても参画し多くの分科会に積極的に参加しようと思っている。
理事長は東京大学野口貴文教授だ。
理事にも錚々たるメンバーが参加を予定している。
いよいよ残コンは問題からチャンスに変容しようとしている。
今こそ分断されてきたものづくりのラストワンマイル達が互いに交流しより良い生コン産業を作り出そうとしている。
今回のようなこうした交流がもっともっと当たり前になされればより良い生コン産業になっていくはずだ。
宮本充也