「AIで生コン性状判定」鹿島・初期欠陥のリスク排除(コンクリート新聞)
ICT、そしてAIの波が建設、生コンにも押し寄せる。スーパーゼネコンの一角鹿島建設が発表した「AIで生コン性状判定」。
コンクリート・アイで生コン全工程可視化
(出典:コンクリート新聞)
動画像を分析。IoTとの接続は?
動画像の分析といえば昨年太平洋セメントがリリースした技術が記憶に新しい。
(出典:https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/190523.pdf)
いわゆる、AIによるいわゆる「パターン認識」という機能を活用した技術。
成否を占うのは教師データと呼ばれる、
「これは、犬ですよ」
「この場合は、猫です」
「耳が長い場合はウサギです」
といった動画像のパターンと、それぞれの「犬」「猫」「ウサギ」といった答え(教師データ)を何万通りも紐付ける作業だ。
カメラに映し出されたその生コン。
「これは、スランプ18cmですよ」
「この場合は、8cmです」
「これは21cmです」
上述のようにそれぞれの動画像と実際のスランプ(あるいはRI水分計の示す値)と何万通りも紐づける。
そうすることでさながら熟練の技術者が目視で「これちょっとやわらかいな」と判断できるように、カメラを通してAIがその生コンの品質を適宜判断する。
これが、AIによる生コンパターン認識という技術。
鹿島は2024年全工程可視化を目標にコンクリート・アイというシステム構築に向けて舵を切った。
誌面からは詳細は不明だが太平洋セメントとの協業はあるのだろうか。
はたまた、教師データの提供という意味ではCommand Alkonのセンサーも有力な協業が模索できるはずだ。
(出典:https://www.taiheiyo-cement.co.jp/news/news/pdf/190523.pdf)
適時生コンのボリュームとスランプ、温度などのデータが取得され蓄積される。
上述コンクリート・アイとの組み合わせでドラム内部生コンの可視化も進むことが期待される。
こうした技術が敷衍する鍵。
あらゆる技術がそうであるように、こうしたICT×生コンといった技術も普及の成否は関係諸団体の協力にある。
つまり、生コン産業の協力だ。
今回新聞発表された内容はあくまで現場で生コンサイドの協力無くカメラで計測されるといったもの。
つまり、ゼネコンの自主的な努力。
今後原材料の管理工程から、製造、運搬、荷下ろし、打設、養生といった全ての工程にICTを導入するとなった場合ゼネコンの自主的な努力だけではプロセスは完成しない。
いつも主張していることだが技術単品では全体最適は完成しない。
プロセスに立ち会う全ての当事者の認識が同一のベクトルに向く。
パラダイムシフトが鍵となる。
そうはいっても、点での技術革新はとても重要だ。
プロセス全体が動くためにはそれぞれの点における技術革新があって、それらが集積された上で起きるパラダイムシフト(産業の再定義)があってこそ次のステージに移行することができる。
生コン産業を眺めていると、
「伝票の電子化なんか二度手間だ!」
「国交省の口車(i-Construction)には乗せられないぞ!」
と惨憺たる状況が見受けられる。
ただ、そうした向きもあと10年もすればご勇退。
それほど多くはないもののWEB上や業界内に散らばっている若く意識の高い技術者たちの発信を仄聞するに、今最も大切なのはその時が来るまであきらめず点である一人一人が技術革新を継続することだと改めて思う。
こうした技術がプロセス全体、そしてラストマイル一人一人に喜び(時短や手間のカット)をもたらすはず。
新しいトレンドに常に敏感でいたい。
宮本充也