JCI「建設用3Dプリンティング技術最前線と将来展望に関するワークショップ」に参加しました
昨日(2021/03/02)オンラインで開催されたJCI「建設用3Dプリンティング技術最前線と将来展望に関するワークショップ」に参加した。国内外の建設用3Dプリンティングの先端事例や有識者らによるパネルディスカッション、そして海外からゲストを招いたパネルディスカッション。みっちり4時間受講して感じたことについて。
要は先行するICT土工のコンクリート工版
<開催プログラム>---------------------
13:30~13:35 開会挨拶
13:35~14:35 日本における3Dプリンティング技術の現状紹介Ⅰ
(休憩10分)
14:45~15:30 日本における3Dプリンティング技術の現状紹介Ⅱ
15:30~16:00 パネルディスカッション
「建設分野で3Dプリンティングに期待すること・できること」
(休憩10分)
16:10~17:10 基調講演(Prof. Viktor Mechtcherine)
17:10~17:15 開会挨拶
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昨日(2021/03/02)3Dプリンティングによるコンクリート構造物構築に関する研究委員会(石田哲也委員長)主催のワークショップがオンラインで開催された。
石田先生のFacebook投稿を見かけて予てより興味のある分野だったので受講した。
実に時代は様変わりしたものだ。
委員の國枝先生(岐阜大学)も言及されていたが、コロナ以前であれば基調講演のスピーカーをドイツからいわゆる「あごあしつき」でお招きし講演料もお支払いするような仰々しいイベントになっていただろう。
会場選定もそうだし実行委員の方々の準備も大変な労力になっていただろう。
それが、オンラインが当たり前になった今、200名近い参加者がストレスなくそれぞれの場所から参加していた。
中には知っている顔(というよりも名前)もあった。
おそらく200名近い参加者の中で僕だけだろう。
温泉に浸かりながら受講していたのは。
ミュートで画面OFFだからこそできる、素晴らしい受講方法。
まさに、働き方改革だ。
さらに、のぼせる前に風呂から上がり(もちろん、プレゼンを聞きながら)今度は雨の中ランニングに出かけた。
走りながらスマホでZOOMのチャットに質問を投稿していた。
「建設3DプリンティングとはICT土工のコンクリート工版とお見受けしましたが、大型打設の場合は生コン工場の出番はあり得るのでしょうか」
もう一発、「蟻塚の蟻に羽が生えたようなイメージで、ドローンで3Dプリンティングによる建設は議論されうるものでしょうか」。
一発目にはきちんと反応していただいたが、二発目の質問はスルーされた。
ランニング中だったことがバレたのだろうか笑。
僕にも経験があるが、100名以上の規模のイベントというものは主催する側も参加する側も結構ストレスがある。
つまらないプレゼンだと眠くもなるが会場で寝てしまえばなんか感じ悪いし寝られない。
プレゼンする側も100名もの聴衆の前であれこれ喋るのは普段と違ってストレスフルだ。
そんで、クタクタになってイベントが終われば今度は後片付け。
懇親会。
二次会。
なんとなく充実感は得られるかもしれないが、果たして成果はどうなんだろうと、今ではパジャマや部屋着でミーティング日々から振り返ると甚だ疑わしいものだ。
そして、この変化こそ、デジタルファブリケーションの要諦なのではなかろうか。
これまで当たり前とされてきたことを疑って実践に置き換えてみる。
何日も前から捨てコンを施工して鉄筋を立て込んで型枠を組んで、そんで生コン打設のその日を迎える。
そこから何日も養生してから型枠をばらす。
コロナ禍がオフィスワーカーの現実を一変させてしまったように。
建設3Dプリンティングは数年後「あんなことやってたよね。信じられないよね」という世界を作り出すのかもしれない。
これまでの蓄積の延長?破壊的イノベーション?
石田先生の話題提供にあった。
3Dプリンティングはこれまでの技術の延長上にあるのか。
それとも、全く新しい分野から全く別の文脈で生成されるものなのか。
破壊的イノベーション?
これまでの建設を完全否定?
とかく先端技術は限界環境(宇宙とか)で活躍する無機質なロボットアームが音もなくダンスをするような光景がイメージされる。
そこには、これまでの建設に関わる蓄積が見られない。
降って湧いたかのようなテクノロジー。
これまでの建設を支えてきたゼネコン、生コン、その他関係企業は全て否定され、全く新しいスタートアップの成長により席巻されてしまうのか。
「建設業界さん、お疲れ様でした」みたいな。
故ある疑問だが、岐阜大学の國枝先生の事例紹介に建設3Dプリンティングの本質を見たように思う。
http://www.kozobutsu-hozen-journal.net/walks/detail.php?id=317
要は、すでにかなりの実装が進んでいるICT土工の技術をコンクリート工に応用する形の建設3Dプリンティング(ICTコンクリート工)。
3Dスキャン、ドローン、点群データ、建設ICT、MC(マシンコントロール)、無人化施工の類だ。
この手の話題は僕の小学校時代からの友人でもある正治組の大矢さんや大林組の杉浦さんから得た知識だ。
3D測量で得られたデータ(3次元データ)に沿ってGPSで座標管理されたICT建機が寸分の狂いもなく土工を行うという技術。
考えてみれば、まあ、土工3Dプリンティングと言えなくもない。
國枝先生以外の方々から共有された事例は確かにぶっ飛んでて「すごい」のだけど、なんだか今の建設から考えると何やらしっくりとこないのも本音だった。
そして、僕がランニングしながら共有した疑問。
「建設3DプリンティングとはICT土工のコンクリート工版とお見受けしましたが、大型打設の場合は生コン工場の出番はあり得るのでしょうか」
僕はこの問いに建設3Dプリンティングの成否の鍵が隠されているように感じている。
破壊的イノベーション。
聞こえはいいが、果たしてその技術は「誰を」幸せにするものなのだろう。
一足飛びにみんなが宇宙に移住することはあり得ない。
ノストラダムスの大予言が外れたようなもんだ。
1999年に世界は滅びなかった。
アニメーションで表現される未来の世界のあり方は人々を興奮させる。
一方、物事の変化にはそれなりの移行期間が必要だ。
従来の建設産業がストックしてきたあらゆる資産(重機、プラント、インフラ)はある日突然01で陳腐化を迎えるだろうか。
ソフトウェアの世界ならそれはあり得ることだろう。
IoTが実装されICTで無人化が図られたそのハードウェア(建設機械)は30年前の建設に携わる人々が知っているその姿、原型をとどめているのはその証拠ではないだろうか。
ある日突然3200もの生コン製造者は陳腐化するのは、おそれではなく、非合理的だと思うのだ。
一方で地産地消を唱える。
一方で、建設3Dプリンティングはどこかから特別な素材を持ってきて作ります。
小規模な実験的取り組みであればそれもあり得るだろうが、具体的に実用的に3Dプリンティングが普及しより大規模化・高度化した世界で、そのようなあり方が経済的に成り立つとは思えない。
アプリケーションとしての先端技術は今すでにあるインフラをそのまま、或いは一部変更を加えた形でインストールされることが望ましいことだと考える。
にしても、200人近い人々がいたようだが、こちとら温泉に浸かったりランニングに出かけたり、その4時間をやりたい放題過ごしていた。
なんの躊躇もなくチャットで質問していた。
リアルのイベントではとてもこうはいかない。
いい時代に突入した。
そして、僕たち生コンはそんな時代にどのように自らの姿を変える必要があるだろう。
ハードウェア、インフラだからといって、今まで通りでいいというわけではない。
時代の要請に応えて自らのOSをアップデートしていかねばならない。
「建設用3Dプリンティング技術最前線と将来展望に関するワークショップ」
デジタルファブリケーション、異方性、トポロジー最適化、チキソトロピー性、普段馴染みのない言葉の応酬をゆったり温泉に浸かりながらあれこれ思想を巡らせるのは実に気持ちのいい時間だった。
宮本充也