2021/09/24
「CO2地産地消・循環・調整のハブとして新しい役割を期待される生コン産業」

昨日(2021/09/23)祝日ではあったが東京から来客を迎え「活炭素」の担い手たる生コン産業という夢について闊達な議論が交わされた。CO2は資源だ。押さえつけ、無闇に削減するものではない。目から鱗の発想を得る。
CO2は資源だ
⚫︎参考記事: 「修士の研究テーマもポーラス舗装コンにしたい」次世代型コンポジット舗装
「CO2は悪者。発生させないよう、あるいは発生させても無理やり封じ込めるべき」
カーボンニュートラル旋風が巻き起こる現代、この論調に異を唱える人はいないだろう。
そこに、落とし穴があった。
一流の頭脳とはこう言うことか、そんな感じだった。
三島駅から伊豆長岡に向かう車の中で大学の先生からいろんな話を伺うことができた。
「植物はCO2がなければ育たない。植物が育たなければ、人口爆発に向かう人類は本当の危機に陥る。地球は寒冷へ向かっている。無闇にCO2を固定化する技術を促進することには賛成できない」
もともと僕は「お行儀が良くない」を大切にしていた。
お行儀が良くない、つまり、「みんなが良しと思っている常識を簡単には受け入れない」ことが大切だと思っていた。
ただ、そんな僕も、そんな常識に絡め取られていたのかもしれない。
「カーボンニュートラルはアングロ・サクソンの陰謀だ!」
いつの時代もどんな意見に対しても反対というものはあるので、この手の論調に対しては距離を置いていたのだったが、理路整然と語られる大学の先生のプライベート講義はまさに「お行儀の悪い」「常識をぶち壊す」気持ちのいい機会だった。
なるほど。
CO2も貴重な資源であって、いかに人類とはいえその循環を無理やり押し込めることは許されない。
そもそも人類が自然をコントロールできるなんて発想自体が危うい。
とてもしっくりくる論旨だ。
で、コンクリートの中性化に話を戻そう。
乱暴に言えば、石灰石CaCO3からCO2を抜くことでできるセメント(コンクリート)が再び大気中のCO2に出会い反応し先祖返りする。
これが、中性化だ。
そのプロセスの根幹に位置し全国に散在しているのが生コン工場となる。
カーボンキュアをはじめいろんなCCU(Carbon Capturing & Utilization)がその普及を広げようとしているが、いつも心の中でこだまする「運ぶときにCO2を撒き散らしてんじゃん」と言うツッコミに、確かに僕自身違和感を感じていた。
わざわざCO2を液体にしたり、わざわざCO2を個体にしたりして、それを封じ込める。
そのことでCO2を撒き散らす。
本末転倒じゃあないか。
一方、生コン工場でもCO2はさまざまな局面で発生することは周知の事実だが、「ドラムを回転させるためにアイドリングストップできない」生コン車ならではの排ガスは生コン工場でも発生する。
昨日ご参加された別の大学の先生の語るところによれば、排ガスのCO2濃度は9〜11%。
大気中のCO2濃度が0.04%と言われているから、随分な高濃度だ。
その排ガスを集約した箱の中で残コン改質プロセスを行う。
無論、含まれるCa(OH)2はCO2と出会いCaCO3に先祖返りする。
固定化される。
さらに、上澄水を積んで現場まで移動する生コン車の排気ガスも高濃度Ca(OH)2に循環させることによってCaCO3を析出させる(日本コンクリート工業の特許技術「エコタンカル」)。
ポータブルエコタンカル製造機。
「カルシウムは非常に希少な資源であって、人類はそのカルシウムを無駄遣いしている」
こちらも目から鱗の発想だった。
生コン工場の問題であった「残コン」「スラッジ」「上澄水」は実はCO2吸収・固定化の媒介材になるのだ。
しかも、他のCCUと違って「わざわざ運ぶこともなく」である。
さらに、残コンは「わざわざCO2を排出して作られる」ものではないため、こちらもゼロカーボン。
おや?
なんだか、全く新しい生コン工場の役割の輪郭を朧げながら想像しているのは僕だけだろうか。
CO2は資源だ。
「出したものは引っ込めりゃいいんだろ」的な支配・統制の発想ではなく、「循環を妨げない」ながらも、生コン工場が重要な社会環境の機関として発生するCO2量の調整を行う。
なんか、腎臓とか、肝臓とか、そんな感じで活躍する生コン産業。
おや?
これって、すごく美しいストーリーなのでは?
「大地を削らない、汚さない、蓋しない、CO2を収容するコンクリート」
そして、その担い手としての生コン産業。
僕たちが望んでいた夢が少しずつだが具体化(コンクリートになっていく)しているように思う。
全ては人と人との反応が引き起こした。
まるで、水和反応だ。
そんなふうにして析出されたCaCO3(炭酸カルシウム)やスラッジパウダー(CaCO3、シリカ、鉄分)、あるいは、CaCO3を多分に含んだ残コン再生骨材は、再びプロダクト(例えば、オワコンとかドライテックの混和材)として地域インフラに還元される。
循環は止まらない。
その過程で必要なCO2の抑制に取り組むことができる。
「僕はこれからの社会でCO2地産地消・循環・調整のハブとしての生コン産業を実現していきたいと思っています」
今回ご参加くださった鹿島の坂田昇さんに僕の夢を打ち明けた。
「全面的にバックアップするよ」
恩人からの心強い言葉に今更ながら鳥肌が立っている。
ものづくりはいつだってそうだ。
アイディアや発見に鳥肌が立つほど落涙するほど感動する。
そして、その具体化に向けて全力を投じる。
みるみるうちに世界の景色は変わっていく。
生コンポータルの宮本充也の果たしたい役割。
「CO2地産地消・循環・調整のハブとして新しい役割を期待される生コン産業」
この夢の実現には誰も異論を挟まないのではないか。
いや、仮に最後の一人になったって僕はこの夢を追い続けたい。
そんなふうに思わせる、最高の夢を見つけて、僕は今感動の只中にいる。
宮本充也