2017/02/13
「悪いのは女子トイレだ」 シャルル・ド・ゴール ポール・アンドリュー 打ち放し

トイレの男女を間違えたことはあるだろうか?
僕は、ある。
しかも、つい先ほどだ。
ベネチアから東京への乗り換えで寄った、
シャルル・ドゴール空港(フランス)。
とにかく焦っていたのでよく確かめもせずドアを閉めて用を足す。
確かに、思い返せば男性用便器が見当たらなかった。
ひと時の一人の時間を快適に過ごし、
ドアを開けたら二人の女性がいた。
僕は、どんな顔をしていただろうか。
心の中は死ぬほど周章狼狽していたものの、
ここでおどおどしたら、真正の変態に成り下がる恐れがある。
ここは堂々と、
「なんだ、てめえ。男トイレになんで女がいやがる?」
くらいの態度で臨まなければだめだ。
こちとら16年も社会人張ってねえぞ。
そのくらいの意気込みでにらんでやった。
やはりいつだって自身は大切である。
女性二人は僕の威風堂々を見て、逆にきょろきょろと周りを見渡していた。
そう、勝利を意味していた。
颯爽と女性二人の間をすり抜け何事もなかったかのように立ち去る。
少し離れたところでエレベータのボタンを押す僕の手は震えていた。
久しぶりに心から慌てた・・・。
さて、何も僕は時差ぼけで上がったテンションのまま、
自分の変態さ加減を詳らかにしたいわけじゃない。
僕は、感動をしているのだ。
シャルル・ドゴール空港のその打ち放しコンクリートの美しさに。
女子トイレに間違って入るまではただ純粋にその美しさに感動していた。
悪いのは、女子トイレだ。
なんというか、すごくよくできた打ち放し建築だった。
こういった打ち放しもあるんだなと感心してしまうくらいだ。
調べてみると建築家は、
といって、有名なエリート官僚建築家というではないか。
しかも、アーティストにありがちなことにシャルル・ド・ゴールは崩落事故を起こし、
4名もの貴重な人命を殺めているという。
なんともいわくつきな建築だということがわかる。
他にも、
なんとも奇抜で、ザッツ建築家といった建物である。
なぜか、こうした奇天烈な建築に僕は惹かれてしまう習性がある。
たまったま立ち寄った空港で間違って女子トイレに入ってしまうなど、
およそこうした天才建築家の意図した設計思想の仕業に他ならない。
それにしても、打ち放しは美しい。
安藤忠雄建築のような打ち放しも素敵だけれど、
シャルル・ド・ゴール空港の打ち放しは、
まんまの打ち放し。
表面はエフロダレで汚れているし、
色合わせ補修を施した形跡は見て取れない(おそらくやってない)。
なのに、ほとんど補修をした形跡がなく、
おそらくフランスの威信をかけた建築工事だったろうから、
相当気合をいれて打設管理がなされたのだろう。
見事としか言いようのない打ち肌に時差ぼけの目も覚めた。
仕事柄、あちこちに出張することが多い。
ここではたと気づいたことだが、
ブログで自社の施工実績をたくさん案内するのもいいけれど、
それ以上に僕が見た多くの素敵な打ち放しコンクリートを紹介するほうが、
きっとためになるだろう。
紺屋の白袴
打ち放しコンクリートを眺めて、
「きれいだな」
で終わらせないで、
プロの視点から打ち放しコンクリートを解説してみる。
もしかしたら結構目新しい取り組みかもしれないし、
例えば、文学といえば村上春樹みたいに、
打ち放しといえば安藤忠雄みたいな、
コモディティ化した打ち放しの奥深さを改めて再定義してみる。
そんなブログだったら読む側も多少は価値を感じてもらえるかもしれない。
ちゃんとした価値を発信できれば、
冒頭に女子トイレに入った恥などことさらに書かずとも、
ある程度は読んでくださるのだから。
精進したいところだ。