2020/03/22
「建物から見える内側のため目につく」

擁壁内側の打ち継ぎ補修。通常であればコンクリートの見た目補修は適応されない軽微な打継ぎではあるものの「建物から見える内側のため目につく」とのことで対応。
庭や建物って誰が見るもの?
Before写真のコンクリート打継ぎ。
発生原因は生コンを施工する際に「打ち重ね」の時間が空いてしまったような時に「打継ぎ」「コールドジョイント」と呼ばれるひび割れに見える線がコンクリート表面に見られる現象。
これ自体はセメントペーストなどの補修材で適切に被覆すれば問題は無い。
「内側のため目につく」
ここに、建物と庭、そして人の関係性について洞察を得た。
「庭や建物って誰が見るもの?」
裏表のあるネットフェンス
(出典:エクスショップ)
ネットフェンスにも裏と表がある。
当然のことながら門柱や郵便受けなどにも表側と裏側がある。
庭の考え方は通常「外側に向けて」見栄えすることを前提としている。
花壇などは通行人に向けて咲き誇っていたりもする。
ただ、実際にそれらを目にして楽しむのはそこに一生住う施主だったりする。
ネットフェンスの裏表に関してプロの視点と一般の視点に齟齬が生じるケースもあるそうだ。
(見栄えのする表側を建物のほうに向けて欲しいお施主さんと、通常通り外側に向けて施工しようとする施主)
打ち放しコンクリートに話を戻すと、今回のような軽微な打継ぎは外側に発生していたらきっと見た目補修の出番はなかったはずだ。
ここにもプロと一般の溝を意識させるものがある。
プロからするとコンクリートというのは「強度」「耐久性」を満足させるように納品するのだけれど、一般からすればそんな性能はあって当然であって、それよりも「見た目」を大切にするという違い。
建築や土木の設計図・仕様書の中にコンクリートの「見た目」を規定するものは一切存在しない。
ただ、現実問題として現場でコンクリートが施主から要求される性能は「見た目」。
今後ますますコンクリートの見た目補修「色合わせ」のニーズは高まっていくのだろう。
人々の暮らしを支えるコンクリート。
「強度」「耐久性」はあって当然で、それに加えて「美しい」サステナブル社会に貢献することがこれからの産業に求められる実相なのかもしれない。
宮本充也