2020/04/01
「型枠の中に異物混入?!凹まないために身につけておくべきスキル」強度・耐久性・審美性

型枠内部の面木(めんぎ)が砕けてずれて、くぼみができた現場。異物が型枠内部に混入して凹みができる現場は結構よくある。現場作業員のスマホが混入したケースも。どんな時にも邪魔にならないコンクリート色合わせ(見た目補修)というスキル。
異物が型枠内部に混入して凹む
Before写真を見ただけでは「なんのこっちゃ?」かもしれない。
打ち放しコンクリートでは結構こうした事例は後を絶たない。
型枠内部に異物混入。
この現場では面木がずれて混入してしまった。
肌色が面木と呼ばれる建材(出典:https://www.genbanodon.com/shopdetail/000000002186/)。
これは、「面を取る」時に使われる一般には知られていないコンクリート打設には必需品の材料。
もしこれがなければコンクリートの構造物の角という角は全て鋭角(90°)で刃物のように尖ってしまう。
想像しただけでも危ないことがわかるはずだ。
その鋭角を面にする(面であれば危なくない)ために用いられる。
今回の現場はこうした面木が何かの拍子でずれてしまい型枠の中に混入してそれが凹みとして残ったもの。
型枠を外してこの凹みを見た現場監督さんもきっと凹んだだろう(うまい!)。
こうした事例実は現場では枚挙にいとまがない。
以前は現場監督さんのスマホが打設中型枠に流し込まれ型枠を外したらスマホが顔を覗かせてたなんてのもあった(写真が出てこないのが残念)。
打ち放しコンクリートは機能材であり意匠材でもある唯一の建築表現
通常のコンクリート打設の場合異物の混入なんてさほど問題にはならない。
断面修復といってモルタルなど補修材料でその欠損部分を埋めれば耐久性・強度などにおいて問題は解消される。
生コンの現場に身を置いていて額面状求められる性能は、
⚫︎強度
⚫︎耐久性
という定量化されるものであり、僕たちは日夜こうした要求性能を満足するように勤しんでいる。
なんのに、今回もそうだし、土間コンクリートもそう。
現実に問題とされる性能は、
⚫︎見た目(審美性)
非常に抽象的で度合いとして定量化しづらい概念。
これが問題となる。
こちらは土間コンで問題となった「色むら」という見た目。
せっせと世に送り出している性能が強度・耐久性でありながら、実際に求められる性能は審美性というギャップ。
なんならJIS規格に審美性の項目を規定してもらいたいくらいだが、まあ難しいはず。
なぜなら、人それぞれ価値観が違うように、美醜も価値観に支配されるからだ。
誰かが「これが美しいのです」と決めるわけにはいかない。
そして最もややこしいのが、打ち放しコンクリートの好みも100人いたら100通りという現実。
打ち放しコンクリートは型枠を外した後塗り壁材料やクロスなどで覆い隠すことができない。
一発勝負。
コンクリート表面に立ち現れた偶然の模様。
その美しさを強みとする意匠材として考えられている。
尚且つコンクリートの果たす強度や耐久性なども同時に併せ持っている。
建築においてこうした分野は他に類を見ない。
求められる審美性に柔軟に対応できるコンクリート色合わせという技能。
60年の歴史あるこうした技能はそんな「見た目」を要求される打放しコンクリートに携わる全ての人たちにとって必携のスキルといっても過言ではない。
現場でよくある「ああ、型枠の中に入っちゃったよ!」みたいな時でも、凹む心配はない。
断面修復をした後にささっとお絵かきで終了。
そこにはあたかも最初から何も問題がなかったかのような「美しい」打ち放しコンクリートが再現されることになる。
宮本充也