2015/10/15
「僕らが補修をやる理由」生コンクリート工場の恩返し
10年前生コン屋でありながら補修を始めたのは、生コン市場が低迷していて会社として経営が苦しかったからなのですが、その頃頻繁に言われたのが「生コン屋さんが維持補修なんかしたら仕事減っちゃうんじゃない?」という意味のこと。
確かに古くなり朽ち果てるままにしておけば解体するほかないわけで、そうしたらそこに更地が生まれそこに建てものが計画されるとするならば私たち生コン工場の出番てことにはなるのでしょうが、冷静に考えても人口が半減に向かう局面で建物を計画する確率は圧倒的に低くなるでしょうし、ましてや計画されるかもしれないその建物に当社の生コンを納入できる確率なんて万に一つもないはずです。
そんなわけでどうせあやかれない利益なら補修を業として営んでしまった方がきっと利益に資するだろう。
毎度のことですが、新規事業の始まりは夢と希望と楽観にまみれており、御多分に洩れずノリノリでコンクリート構造物の維持補修の分野に船出をしたのですが、毎度懲りないというかここでも当社長岡生コンクリートは数え切れない苦難の連続に臨むことになったのでした。
会社潰れちゃうかも、と真剣に悩んだこともあるくらい補修の分野は生コン屋にとって苦難の連続となり、やめてしまおうと思ったことも1度や2度ではありません。
生コン業とコンクリート構造物維持補修の最大の違いは生コンが0→1を提供することであり、維持補修は既にできあがっている1に対して手を加えるということ。
ほんの些細な違いのように思えるのですがその実は大きな違いで、生コンの場合変なものができてしまったら納品を取りやめるか壊してしまえばいいことに反して、維持補修は他人様が作った作品に対して手を加えることになります。場合によってはピカソの絵に油絵の具で手を加えるようなもの。。
まだ事業を始めたばかりの頃、経験の薄いことを背伸びでカバーして臨んだ総工費億円単位の建物の最上階部分のお仕事を請け負った時に悪夢は起きました。完成直前、総打ちっ放し仕上げの高級マンションのその現場で、当社工事の手違いで打ちっ放しコンクリートの表面を派手に汚してしまうという大事件が起きました。
新事業がいかに大変かをお伝えするためにブロク書いているのではありませんので苦労話はこの辺にしておき、そんな失敗だらけの新事業をなぜ当社は10年近くも続けられているのか。
「生コンクリートを毎日作っているということ」
数多くの失敗を経験した私たちをお客様がそれでも支持し常にご購入いただける理由は実はそんなことなんじゃないかと思うことが多くあります。
少なくとも私たちはコンクリートとセメントについてはプロとしての自負があります。その性質については理屈だけでなく現場の知識として知り尽くしている自信もあります。さらに、生コン屋は地域に根ざしていてその多くは長い業歴を誇っています。そんじょそこいらの昨日今日始めたばかりの耳触りのいい社名の会社とは違い、多くの場合はがちでその土地と心中する覚悟で仕事をしています。
「圧倒的に信頼感が違う」
地域のお客様にそう思われていることが私たちをここまで引っ張っていただけたのではないかと。
以前にも書きましたが水の次に流通するコンクリートの長寿命化は水の汚染の次に社会的意義があると思っています。今や「生コン屋の維持補修」の輪は日本全国に及ぶところとなりました。65年間近代日本のインフラを支えてきた私たち生コン屋の次なる使命は私たちがお届けしたコンクリート構造物をプロとしての知識からさらに10年20年と長持ちさせることだと信じています。
すべての生コン工場がそうであるように、私たちは社会のすみずみに存在しています。「顔が見えて安心な生コン屋さん」、までの道のりはまだまだかかりそうですが、そんな気持ちで毎日仕事しています。