2021/01/26
《生コン110番》「エフロが出たからって支払わないって言うんですよ〜」「な〜に〜?!やっちまったな!!」

市場と顧客の健全性を期待して始まった企画、「生コン110番」では被害にあった施主だけではなく、無体な言いがかりで支払いを止められそうになっている生コン製造者をも救済する。「エフロが出たからって支払わないっていうんですよ〜」。そもそも、製造者が保証する製品の性能って?
⚫︎参考記事: 【青森】《犯人だ〜れだ》「生コン110番を設置致します」#3
プロなら知ってる「エフロはコンクリート固有の現象」
昨年末とある愛知県の現場に納品されたドライテックの表面が白くなっている。
プロなら知っている、エフロレッセンス(白華)という現象。
なんと、この施工者は納入した製造者に対して、「エフロ」を理由に支払いを拒否しているという。
こういうのを一般には「パワハラ」という。
「金を払う側」という地位を濫用し、納品業者に難癖をつける。
生コン110番ではこのパワハラを看過できぬものとし、以下にエフロの発生要因や生コン製造者が材料に対して保証する内容などを詳しく説明していきたい。
エフロレッセンスとは、コンクリート中の可溶成分を含んだ溶液がコンクリート内部から表面に移動し、乾燥に伴って水分が蒸発することで、コンクリート表面に濃縮。 これが空気中の炭酸ガスと統合することによって、コンクリート表面に沈着した『白色の物質』のことを言います。(出典: エフロレッセンス(白華)に関する解説
エフロの発生に不可避なものは、「水」。
コンクリート中の可溶成分が水に溶け出して、コンクリート内部から表面に移動し、そのまま残る。
つまり、エフロには必ず水の移動がついてまわる。
今回のドライテック打設は2回行われたという。
その施工者の言い分は「1回目はエフロが出ないのに、2回目は発生した。サンプルと違うものを納品したのだから、支払う謂れはない」というもの。
もし、これを本気でおっしゃっているのであれば、プロとは言い難い。
なぜなら、エフロを発生させた要因は明らかに施工者側にあるのだから。
生コン製造者はいわば、「餡子」を販売するもの。まんじゅうの品質まで保証できかねる。
そもそも生コン製造者は、材料を販売している。
施工者はその材料に加工を施し、プロダクトとしてドライテックを施主に納品する。
施工者が施主に対して納品する性能の1つに、「出来型」がある。
出来形とは、工事の目的物のできあがった部分、工事施工が完了した部分のことである。建設工事は日々進捗しているので、部分的には工事が完成した所も出てくる。出来上がった部分が契約図書等に基づいて許容範囲の寸法で出来ているか/作られているかを、発注者立会いの元に(出来形)検査して、その寸法差を図面化し検査書類に添付して発注者に提出し、出来形の承認を得るものとされる。なお、工事現場に搬入した鋼材やコンクリート二次製品等の工事材料も(出来形)検査を受ければ、出来形の対象になるとされる。(出典:施工の神様)
出来形管理という言葉があるように、施工者が管理する内容だ。
つまり、搬入された材料を所用の寸法(形)になるよう管理するのは施工者の責任であることとなる。
さらに、コンクリートを施工するプロであれば、エフロレッセンスの発生は想定すべきことだ。
ひび割れや色むら同様、エフロはコンクリートである以上不可避な現象であり、あらかじめ発注者に説明しておくべき性質のもの。
その前提を踏まえて「絶対に発生しないよう抑制できる」とまではいかないものの、ある程度発生抑制を期待できる対策はある。
それが、「水の移動管理」となる。
上述したように、エフロは水の移動に従って発生するもの。
顕著な例としては施工直後のドライテック表面にブルーシートなどで密閉するとエフロが発生しやすいことがわかっている。
⚫︎参考記事: 【注意】梅雨など雨の時期発生しがちな【エフロ】という現象について
発生原因は、路盤以下の水分が蒸発する際、通常は大気中に蒸散する水分がブルーシートなど遮蔽物に遮られ雫となり表面に停滞すること。
停滞した水分にコンクリート中の可溶成分が溶け出し、そのまま白く固着して残る。
なお、当該現場が期待している性能は、「雑草対策」であったため、エフロの発生は問題にならないため、施工直後に降り出した雨を防ぐためにブルーシートで養生した。
施工者にとっては常識と言っていい「エフロ=水の移動」という因果関係を前提とするならば、なるべく水の移動が施工後発生しないように配慮することが対策となる。
今回問題となっている現場だが、昨年12月25日に打設された。
(出典:https://weather.goo.ne.jp/past/636/00001225/)
生コン製造者の報告によれば、当日名古屋地方は雨天が予想され同社営業担当から出荷・施工の可否の確認を入れる。
無論、降雨が予想される場合に水の移動も想定されるためエフロの発生は当然懸念されるが、施工者は断行している。
そして、翌日にエフロが発生。
「生コンからエフロが出ないことを保証します」なんていう生コン製造者は皆無。
そもそも、製造者が顧客(施工者)に対して保証する材料の性能には出来型は含まれない。
一般に舗装コンクリート用材料に関して製造者が保証する性能は、「強度」「配合(計量値)」などであって、どこにも「エフロでません」などは謳っていない。
エフロには、滞水や水の移動を促進する要因として路盤(下地)の状態も深く関係する。
仮に路盤以下が水はけの悪い施工がなされている場合、ドライテックは水を通すもののその下で滞水が起き施工初期に高含水状態に曝されたとしたならば、エフロの発生確率は高くなる。
いずれにせよ、エフロ発生要因は「施工上の問題」と言って間違いない。
然るべき施工者の姿勢として、まずは施主に対してエフロの発生可能性について事前にきちんと説明しておくこと。
さらに、水はけの良い路盤以下をきちんと施工して対策すること。
それでも、発生しないというわけではないことをきちんと伝えておくこと。
ちなみに、このエフロは従来の土間コンでも発生しているのだが、表面が真っ白いため目立たないというだけ。
どこにも生コン製造者の責任を裏付ける事実は見当たらない。
自分が作った饅頭がまずかったからといって、餡子屋(生コン屋)に因縁をつけるとはいったいどう言った了見だろう。
姿勢を正すよう促したい。
エフロレッセンス事後対応について。
コンクリート内部から析出する可溶成分が乾いてそこに固着しているエフロを除去するには水で希釈した酸で洗い流すことが有効とされている。
⚫︎参考:エフロの最適な除去方法
ただ、それほど慌てずとも、ドライテック表面に発生したエフロレッセンスは供用期間が長くなるに従って自然と目立たなくなることがわかっている。
いずれにせよ、施工者の責任範囲できちんと施主・発注者に対して誠意ある対応をすべき。
そして、普段の取引をかさに来て「エフロが出たから支払わない」なんて言ってると、取引してくれる生コン屋さん無くしますよ。
プロなんだから、コンクリートのイロハくらい学んで、ちゃんとものづくりに励んだ方が良い。
インターネットのこの時代、御社の名前を晒すことくらいいとも簡単にできるのですから。
そして、生コンポータルの発信力で御社の悪名はあっという間に愛知エリアで轟くことになるのですから。
見てますよ、たくさんのお施主さんが。
生コン製造者をなめるのは大概にしたほうが無難だと思いますよ。
コンクリート製品である以上、エフロは出ます。
誰も、エフロは出ません、なんて言ってません。
その理由も明確です。
明確だからこそ、対策も明確。
降雨が予想されている環境で、わざわざ心配して連絡してきた生コン製造者に対してもしも支払いに応じないようでしたら、結構恥ずかしい目に遭わされることになるでしょう。
生コン110番。
ちゃんとした価値あるものが市場と顧客に届くためには、生コン製造者と施工者の良好な関係性が必要。
悪事を働いてバレなかったのは過去の話。
ものづくりのパートナー同士、節度ある関係でこれからも良いものづくりに励みましょう。
宮本充也