2021/05/20
「21年間を振り返ってみればそこに足跡があった」丸壽産業

生コンポータルでは生コン製造者や施工者はもちろん、関連事業者との連携も行なっている。生コン製造をより実りある分野にしていくために。施工者にもっと自由にもっと身近に生コンをお届けできるように。長野県に本社を置く丸壽産業とのパートナーシップが本格的に動き出す。
産業構造の刷新と役割の変化
昨日(2021/05/19)長野県に本社のある丸壽産業に事業連携のさらなる強化を目的として訪問した。
同社は国内有数のセメントの販売事業者として数えられ、バッチャープラント関連設備の設計・施工でも定評のある成長期業だ。
もとよりドライテックをはじめとする生コンポータルの事業に関してパートナー関係にあったが、この度その連携をより組織全体に広げた連携について議論をもった。
同社はその事業特性上多くの生コン製造事業者との関係性を有している。
一方生コンポータルにとって「生コンをもっと身近に」ドライテックや残コンソリューションなどの普及を通して産業構造を刷新する上で同社とのより踏み込んだ提携は事業領域の拡大を期待できる。
なるべく多くの生コン事業者との連携が生まれればそれだけ価値(プロダクト、サービス)は市場と顧客に届きやすくなる。
本社を訪ねてまず面食らったのはこの展示品。
以前テレビ番組「なんでも鑑定団」に一志社長自らが持ち込んだこちらの掛け軸はなんと1200万円もの値打ちがついたそうだ。
もう、これだけで、圧倒された。
一旦雰囲気にのまれてしまうと、もう展示してある何もかもがお宝に見えてくる笑。
「さざれ石」なんて国歌で口ずさんだことはあるけど実物を目にするのは実に初めてだ。
恐るべし丸壽産業。
この後「巌(いわお)となりて」と続くのだろうか。
そして、プレゼン突入汗。
完全に場の雰囲気に呑まれ支配された状態でのプレゼンは生まれて初めてだ。
一志社長、川北営業部長、戸石東京支店長ら錚々たるメンバー相手にプレゼンってだけでも十分緊張するのに、前段で1200万円やさざれ石を見せつけられた心中は想像できるだろうか。
「断言しときます。ここ数年でインターネットが小売りで起こしたことが生コンの現場にも到来します」
圧迫面談のような緊張感あふれる雰囲気の中プレゼンは辿々しく始まった。
内容はプロダクト(ドライテック)と言うよりも、僕が生コンに入職した2001年から現在に至るまで生コン産業がどのように変化してきたかについて。
その変化の中で、今後一体どんなことが生コン産業に起きるのかについて。
特に、インターネット(情報革命)と生コン産業の関係性を主題に説明した。
「6年前、生コンをインターネットで発信すると言っていた僕に対する大方の反応は、『生コンにインターネットは関係ない』というものでした。ただ、グラフを見ていただけるとわかるように、特にドライテックはインターネットにおける認知に比例して事業規模(問い合わせ件数、案件数、売り上げ規模)が拡大しています」
2001年から僕が生コンに携わり一貫して市場は低迷を続けた。
「下りのエスカレーター」
景気浮揚など外部環境に鼓舞された経験はたったの1度もない。
僕の世代は余命宣告された状態の中で必死に生き残りをかけてもがき続けてきたロスジェネ世代だ。
縦割り・階層でがんじがらめの生コン産業にあって6年前一念発起、背水の陣で「インターネット1st」経営資源の配置をそれまでとは一新しほとんど全てをインターネットを活用した情報発信に振り向けた。
「インターネット1st」以降のドライテック事業の推移を示したグラフ。
⚫︎参考記事: 「インターネット1st、ドライテック1st」長岡生コンクリート55期(2021/02/末期)決算報告並びに56期以降経営計画
これを見て「生コンにインターネットは関係ない」と言える人はいるだろうか。
僕たちはB2B、いわゆる法人間取引の業態。
だからまだまだインターネットの底力を見せつけられているとは言えない。
ただ、世界の片隅では小さいながらもインターネットが生コンの流通を刷新しはじめている。
これは言ってみれば新しい生コン産業の兆しと読める。
B2C、小売の世界でインターネットがここ10年20年で起こしたことは必ず僕たちB2Bにも押し寄せてくる。
「Amazon、楽天、モノタロウはあくまで小売だからできたこと。生コンにインターネットは関係ない」
生コンの大方(特に年配世代)は引き続きこの姿勢を貫くだろう。
ただ、僕は確信を持っている。
「断言しときます。ここ数年でインターネットが小売りで起こしたことが生コンの現場にも到来します」
1200万円の掛け軸やさざれ石に圧倒されながらもこれだけは伝えることができた。
刷新された生コン産業で変化する生コン工場や施工者、小売、そして商社の役割
情報の流通が制限された縦割り・階層の構造における生コン工場、施工、小売、そして商社の役割は静的だった。
ドライテックがここ数年経験してきたようにインターネット、そして企業間連携はその壁や天井に穴を開けた。
理論上シームレスに生コン工場や施工者、小売、商社がつながることができるようになった。
事実ドライテックは指数関数の成長軌道を示している。
その世界でそれぞれは今まで通りの役割を全うするだけでいいはずがない。
そこでは新しい役割、新しい関係性が求められていく。
小売の分野で協業をしているエクスショップも含めて、これからの世界で求められる新しい生コン・施工・小売・商社の関係性の実践。
丸壽産業にはそんな協業を正式に申し入れることになった。
今後世代が移りインターネットネイティブが産業の中心帯を占めるころにはインターネットと企業間連携は生コン産業の全てを刷新してしまうことだろう。
その時代の到来を見据えた今からできることへの協同。
僕の話は「インターネット」「生コン」に終始していた。
「21年間を振り返ってみればそこに足跡があった」
ミーティングの最後に一志社長からこんな発言があった。
「インターネットは大きな要素ではあるかもしれないけど、21年間足を使って必死に実際の生コン工場らとの関係性を構築してきたからこそ、インターネットはチャンスとなる」
そういう趣旨の共有だった。
生コンの素人がインターネットというテックだけを頼りに構築するような中身(インフラ)の無い事業ではない。
当社だけではない。
丸壽産業、あるいは事業を連携するすべての人と企業が培ってきた経験(経営資源)が新しい産業構造で新しい関係性を結ぶ。
従来の階層構造でのように埋もれることはない。
見出され、有機的に結びつく。
全体が生き物のように動き出す。
インターネットに利用されるのじゃなく、利用する。
Amazonが小売の世界で起こしたことと同じことが僕たちものづくり、B2Bの分野でも始まろうとしている。
役者は揃った。
「生コンにインターネットは関係ない」
それでもまだそう思うなら、ずっと思い続けていたらいい。
産業構造を刷新することによってものづくりの価値がいささかも減衰することなく市場と顧客に届く生コンが動き出した。
宮本充也