2021/04/30
「インターネット1st、ドライテック1st」長岡生コンクリート55期(2021/02/末期)決算報告並びに56期以降経営計画
生コンポータルは長岡生コンクリートという企業が運営している。先日決算がまとまり金融機関や債権者向けの決算報告会は昨年に引き続きオンラインで開催された。社会の機関としての企業であるからこそ財務資料も含めて全ての企業情報は公開していきたい。当社決算情報に関心のあられる方はいつでもお問い合わせください。
55期決算と経営計画
昨年からオンラインで開かれるようになった決算報告会の模様。
⚫︎参考記事: 「54期(2019年度)決算ならびに55期(2020年度)事業計画について」生コンポータル・長岡生コンクリート
長岡生コンクリートは51期(2018年2月末期)に新プラントに関わる資金出動を行なった。
新プラント建設費用だけではなく、旧プラントの土壌汚染対策などを含めると6億に近かった。
売り上げが10億に満たない程度の事業規模の会社で5億以上の出費。
51期から始まる生コン出荷の予想外の更なる低迷。
「もう、生コンの低迷は一服、底をついたか」
と思ってから、さらに降り始めた。
昨年(2020年4月時点)の資料だが、プラント建設(資金出動)の時期から一段と出荷量が減少しているのがわかる。
ここ4カ年はプラントの特別償却などの特大損失で全社の最終損益は赤字を続けてきた。
追い討ちをかけるように低迷する地元生コン市場。
地元経済を分母とした生コン製造業でこの状況を突破することはほぼ不可能。
50期からこっち5カ年はそんな日々だったと振り返ることができる。
(なお、今期55期の生コン出荷は54期から横ばいとなった)
インターネット1st、ドライテック1st
危機が会社や人を強くするというのは本当だ。
本業生コンが予想外の角度で急降下し続ける。
5億以上もの資金を出動し新プラントを背負ってしまった。
55期にはプラント用地として借りていた底地も購入してしまった。
もう、後に引けないところまで、自分たちを追い込んだ。
日々、刻々とキャッシュアウトしていく中で、打開策を生み出さなければならない。
5年といえば、まさにブログを毎日3本書き続けてきた期間とそのまま重なる。
これまでの自分たちのやり方では打破できない危機に臨み打開策を生み出す新しいモデルを作りださなければならない。
これまでのやり方を踏襲していては絶対にダメだ。
退路を絶って掲げたスローガンが、「インターネット1st、ドライテック1st」だった。
事業規模が10億前後の業態、つまり中小・零細企業ではあらゆる事業活動にバランスよくリソース(経営資源)を配置することで成長は見込めない。
この混迷を打破するためには、経営資源を尖らせ、一点集中して突破しなければならない。
それまでは地元組合に時間を割いたり、大手ゼネコンや道路会社など首都圏の大手企業などを訪ね歩いたりなど、バランスの良い営業活動を行なっていた。
「それら活動全てをやめちまおう」
1万枚を超える名刺が象徴するようにそれまで積み上げてきた人脈は誰にも負けない自負がある。
それでも、これまで培ってきたモデル(やり方)で目前の危機を打破することはできない。
仮に成長したとしても、低迷する生コン本業を支えることすら難しいだろう。
だから、営業活動(マーケティング)の方法を完全に白紙に戻しインターネットに180度舵を切ることを決断した。
さらに、プロダクトも絞ることにした。
50期時点でもおよそ2億弱の生コン以外の売上があったが、その内訳はバランスが良かった。
ドライテック、色合わせ補修、残渣式流動化処理土、残コンソリューション。
年により多少の増減はあったものの25%ずつで、それこそ割いたリソースと比例する割合だった。
その「全てを満遍なくバランスよく」というリソース配分を、「1点集中、ドライテックでブレイクスルーだ!」と決めて、その他のプロダクトのことを頭の中から消し去った。
「ドライテックでまずはブレイクスルーを起こす。それ以外の事業は、勝手に後からついてくる」
これまで大手の手法を模倣して事業部制、独立採算を念頭に予実管理を行い毎月会議を開いたりなどしていたが、そんなものも全てやめてしまった(もちろん、会計数字KPIはきちんとモニタしてはいるけれど)。
「インターネット1st、ドライテック1st」
このスローガンとともに歩んだ5カ年の足跡となった。
ドライテック問い合わせ件数の5カ年推移。
まさに、ブログ毎日3本が始まった期からまる5年の軌跡を追従している。
現在は、お庭づくりは0円マッチング庭コン(https://www.nr-mix.co.jp/niwakon/subcontractor_list.html)で意図的に問い合わせ受付を自社以外に分散させているため、今後の問い合わせ件数の伸びは期待できない。
また、5年以上前は売上の多くをいわゆる「大物」(大手ゼネコンや道路会社に営業をして成約した案件)に頼っていたが、「インターネット1st、ドライテック1st」に軸足を移すことで案件数を重要なKPIとして設定した。
ここ5年で二次曲線のそれの推移を見ることができる。
ドライテックの売り上げ推移。
この5カ年は一貫して150%ペースの成長を記録しており、直近54期比較では230%の成長となった。
内訳でもわかるように、売り上げ金額が小さくなる材料販売にシフトしたのに、ドライテック全体の売り上げ楽は成長している。
全社での利益もなんとか残すことができ、56期に向けて明るい気持ちでスタートを切っている。
この5カ年は本当に苦しい期間だった。
燃料がバンバン蒸発していく中で必死に舵を切っていた。
このままだと燃料が燃え尽きてしまう。
会計シミュレーションで余命が明確に示される中で退路をたって「インターネット1st、ドライテック1st」に全力投入してきた。
それが正しいか、正しくないかなんて、当然全くわからない中、もがき苦しんでいた。
今期56期も引き続き「インターネット1st、ドライテック1st」を踏襲していきたい。
ドライテックに関しては2.3倍の成長を予算として立て関係者全員ボルテージも上がっている。
これまでやってきたことに市場と顧客から評価されたことは組織にいる僕を含めて全ての人にとって最高のプレゼントだ。
拡大再生産を求められていない産業生コンクリート。
あらゆる産業の中で最も「大地を削り、汚し、蓋し、CO2を排出している」コンクリート産業は成長してはならない。
引き続き生コン製造業、生コン出荷量は低迷するだろうし、しなければならない。
そんな逆風の中、僕たちが掲げているコーポレートステートメント。
「大地を削らない、汚さない、蓋しない、CO2を収容するコンクリート」
特定の企業のエゴで社会は動いてくれない。
エゴだけでは成果も限定的だ。
環境、そして社会(あるいは市場と顧客)が僕たち組織、あるいは産業に求めているものは何か?
僕たちがこれからも社会に必要とされるためには、そんな社会の声に耳を澄ませて、然るべき姿に変化し続ける以外に方法はない。
その目標を達成するための具体的な戦略として、「インターネット1st、ドライテック1st」を56期以降も踏襲していきたいと思っている。
2050年カーボンニュートラル。
今度は猛烈なフォローの風が背中を押してくれている。
引き続き、組織にいる全ての人(少なくとも僕だけ)は、コーポレートステートメントに全集中していきたいと思っている。
宮本充也