2020/11/02
「表面の骨材飛散はどうやって防げばいいの?」プロの施工者に指導する指導員養成《ドライテック施工指導マニュアル》動画 #2

加速する普及に対応すべく施工指導員の指導・育成のために撮影が始まった「ドライテック施工指導マニュアル」動画。ここでは施工の要諦やコツをプロ施工者や担当者まさつぐの経験という抽象的なデータを「伝えられる形にする」。撮影2日目は「表面の骨材飛散はどうやって防げばいいの?」を含む盛り沢山の内容。
よくある質問「表面の骨材飛散はどうやって防げばいいの?」
完成直後の透水性コンクリートの施工表面で足をグリグリして「わざと骨材飛散(剥離)を起こさせている」様子。
⚫︎参考記事: 「転圧はどのタイミングでやればいいの?」プロの施工者に指導する指導員養成《ドライテック施工指導マニュアル》動画
目的は不幸にも骨材飛散(剥離)が起きてしまった際にどのように対策・補修すればいいかの解説動画の撮影。
せっかくきれいに仕上がったドライテックの表面を足でグリグリ。
いつもは「抜き足差し足で歩いてください!」とお願いしているドライテック表面を足でグリグリ。
ドライテック骨材飛散(剥離)の原因と対策
そもそも、ドライテックは骨材剥離は起きにくいという前提を説明したい。
専門的な話になるが、セメントだけで配合した透水性コンクリート(ポーラスコンクリート)の場合、骨材の剥がれは起きやすい。
なぜか?
それは、セメントの物性、「圧縮には強いけど、付着・接着の強度はそんなに強くない」に由来する。
ボンドのように樹脂製品は付着・接着が強い。
セメント(無機質)は弱い。
だから、石と石を繋げているのはセメントだから、石と石は剥がれやすい、となる。
その弱点を補うために、元々無機系の壁材に技術を持っていたフッコーが開発したキーバインダーを配合することで、「セメントの弱点を補う」形で生まれたのが透水性コンクリート《ドライテック》。
ボンド(有機物)ではなく、無機系バインダーであるため、経年劣化や変性の心配もない。
それが、「ドライテックは骨材剥離がしづらい」の理由。
ただ、施工中の気象条件の影響や施工時間(転圧までの時間が長すぎなど)の影響でドライアウトを起こし、完成直後から骨材剥離が頻発するケースもある。
動画では詳しく説明したいと思うが、ひとたび剥離してしまった箇所はその後も剥離しやすい。
理由は以下の通りだ。
骨材が飛散・剥離した箇所は大小の凹凸が発生している。
通常であれば問題のない強度を有しているドライテックでも、こうした凹凸面にタイヤなどの荷重がかかると、「応力集中」を起こすことになる。
点ではみ出している骨材に荷重がかかれば、想定以上の荷重となってコンクリートに応力が伝わるため、さらに骨材剥離をもたらすことになる。
それを防ぐため、補修材は骨材サイズの小さなものを標準とし、凹凸面が「ツライチ」になるようにする。
平滑面であればタイヤなどの荷重は分散されてコンクリート版に伝わるため、骨材剥離などの懸念はない。
(マニュアル動画の解説より)
それでは、剥離部分の補修を解説。
あれだけ足でグリグリしたので、翌日骨材がポロポロと簡単に取れるかと思いきやなかなか頑固に付着しておりハンマーとドライバーで強制的に骨材をはつっているまさつぐ笑。
なかなか頑固なドライテックだ笑。
事実、前日ちゃんと骨材がポロポロ取れるように(笑)足でグリグリしたりバーナーであぶって強制脱水(ドライアウト)したりなど入念に表面を痛めつけていたのだったが、このようにバッチリ付着している。
撮影予定を後倒ししてみんなで骨材はつりから始まった笑。
ある意味、これだけ頑固に付着するならある程度ラフに施工しても大丈夫、という安心になるのかもしれない笑。
せっせと骨材をブラシで擦ったりして取り除くディレクター(左)とまさつぐ(右)。
ブログ用の写真撮影なんかしないで手伝ってくれという声が聞こえてきそうだがもちろん手伝わなかった。
ようやく完成した骨材剥離箇所。
このように凹凸になっているところにタイヤなどの荷重がかかれば「応力集中」が発生し、想定以上の応力がコンクリート盤に伝わることでさらなる剥離(飛散)が引き起こされる。
ここでは、その凹凸を補修用ドライテックを用いて平滑にすることで、荷重が分散して伝達するように対策する。
補修直後のまだ湿っている状態。
凹凸は硅砂タイプの骨材を用いたドライテックで見事に平滑に埋められている。
乾くと周りの色にあってくる。
気になる透水性はどうかといえば、
単粒の硅砂であるため、空隙はきちんと確保され、透水性も全く問題ない。
これで、飛散した箇所の凹凸も平滑となり、タイヤ等の荷重がかかっても、応力分散しそれ以上の骨材剥離は抑えられる。
「表面の骨材飛散はどうやって防げばいいの?」
詳細は動画マニュアルに譲りたいが、事前と事後の対策がある。
とにかく、最も大切なのは「しっかりと艶のある水分が確保された状態で施工する」。
ドライアウトを起こさせないよう注意すること。
だから、事前の接合構造物や路盤への散水は怠らないこと。
頑張って養生していたけど、残念ながら骨材剥離が起きてしまった場合には、補修用ドライテックを購入し、現場で手当てする。
なお、ほんのちょっと剥がれちゃったみたいな場合はこちらの動画が参考になるだろう。
普及が加速する透水性コンクリート《ドライテック》。
多くの地域で多くの人々に支えられて、今日もアップデートし続けるドライテック。
生コンポータルではそんなアップデートされる詳細をこうして動画やテキストにまとめて記録していきたいと思う。
多くの人々の共感が生み出した多くの施工経験をこうしてまとめておくことで後進の方々(それがたとえ競合製品だったとしても)のお役に立てられたらと思っている。
みんなで作り上げよう。
大地に蓋しないコンクリートの常識。
そうすることで、自然と人が調和する世界は形を表す。
宮本充也