2021/06/28
「CO2はかぶれや流行の類ではなく確実にこれからの世界を規定する」

CSRやらSDGsやら横文字・略称がが飛び出ると、「かぶれ」「流行」と断じる向きもある中で、特別世界情勢に明るくない地方の生コン屋の1である僕自身が強く感じていること。「CO2はかぶれや流行の類ではなく確実にこれからの世界を規定する」。(週刊生コン 2021/06/28)
通貨としてのCO2定量化
⚫︎先週の記事1: 再生骨材市場を活性化させるために必要なこと | RRCS対談座談会 Vol.8 (月刊残コン Vol.49)
再生骨材市場を活性化させるために必要なこと | RRCS対談座談会 Vol.8
※字幕付きでの再生が可能です
第8回の今回のテーマは「再生骨材」
再生骨材の普及について、生産者・施工者・発注者・研究者の
様々な目線から考えます。
00:00 オープニング
01:18 再生骨材‟H"がJISに制定された経緯
03:19 再生骨材の現状
17:42 再生骨材コンクリートの性能
21:00 コストと性能の問題点
25:18 再生骨材を普及させるには?
29:26 大阪万博での使用について
33:02 再生骨材普及の見通し
37:17 再生骨材のアピールポイント
41:08 エンディング
テーマ:
リサイクルなのに、JISもあるのに、なぜ流通量が少ない?
「再生骨材市場を活性化させるために必要なこと」
※月刊コンクリートテクノ7月号に詳報掲載予定
参加者:
野村不動産㈱ 住宅事業本部商品戦略部 吉田安広
㈱淺沼組 技術研究所 建築材料研究グループリーダー 山﨑順二
㈱安藤・間 建設本部 土木技術統括部 白岩誠史
㈱東京テクノ 工場長 松田信広
RRCS代表理事・東京大学 野口貴文
RRCS理事・ACRAC理事長 柴谷啓一
RRCS理事・明治大学 小山明男
これまで、多くの才能や大先生と呼ばれる権威がこぞって取り組んできた環境コンクリート。
とりわけ、再生骨材コンクリートの歴史は長い。
諸説あるかもしれないが、僕の認識しているところでは50年近く数々の研究や論文が積み上げられてきた。
結果、生コンクリートの総生産量の1%未満。
これが、その蓄積のアウトプットだ。
過酷な現実と言っていい。
なぜ、世界が求めているにもかかわらず、そのニーズに産業は応えることができないのか。
おそらくそこにはニーズに応える性能についての適当な評価基準の不在というものがあるのだと思う。
「世界はクローズドループやサステナビリティ、未来永劫地球上の生態系の営みが続くことを願っています」
このニーズに対してあらゆる人や企業がその叡智を結集してテクノロジーひいてはプロダクト・サービスで応えようとする。
コンクリート産業からの具体的な答えが、再生骨材コンクリートとなる。
でも、普及しない。
これまでの評価基準は経済価値として値札がつけられてきた。
もしかしたら新しい時代の新しい価値に対してこれまでの値札をつけることができないのではないか。
新しい通貨、その環境性能を適切に評価しうる貨幣のようなもの、それがCO2の定量評価になるのではないか。
そう考えると昨今のESG融投資やカーボン・ニュートラルの情勢が腹落ちする。
つまり、CO2はかぶれたり流行したりするものではなく、新しい世界の新しい通貨なのだ。
⚫︎先週の記事2: 《動画》「コンクリートの夜明け・環境問題・中性化・脱炭素・CO2固定化について」
「宮本さんは誤解されがちで勿体無い」
こんなふうに僕を評した方がいらっしゃる。
僕の発信しているブログ、動画の類でこのところ頻繁に登場する、中性化・脱炭素・CO2固定化。
今や猫も杓子も、「カーボン・ニュートラル」。
ああ、宮本、本当に流行り物にすぐ乗っかるよなあ。
その方は僕のセメント・コンクリート界隈における評判を教えてくれたのだろう。
確かに、CSRだのSDGsだのにすぐにかぶれて乗っかる人々と表面的にはまるっきり同じ活動をしているように見えるかもしれない。
「これからは、CSRだ」。
「これからは、SDGsだ」。
全く同様の文脈で、「これからは、CO2だ」。
昔、ギターで曲を作っていた時に親戚の叔母さんに聞かせたところ、「最近の曲は全部同じに聞こえる」と評された。
僕のオリジナルで荒削りで全く洗練されていない曲なのに、「最近の曲」と一括りにまとめ上げられたのだ。
これ、もしかしたら、本当に勿体無いのだろうか。
「何が生コン屋が横文字を使ってやがる」と同業らから白眼視されてしまいがちな行動なのだろうか。
上述の文脈、「CO2は通貨だ」と考えれば、僕は他人にどのような白眼視を向けられようとも自分の信条に従いたい。
通貨、媒介(金融)は物事の本質だ。
今時の若者にいったいどれほど「現金主義、カードや電子決済は怖い」と頑なに電子通貨を拒んでいるものがいるだろう。
CO2は物事を定量評価する際の通貨なのだ。
流行りでも、かぶれでもない。
電子決済、そしてキャッシュレスに見られるように、確実にこれからの世界を規定する本流を成している。
これまでの経済価値、値札から、新しい評価基準CO2に全ての産業は飲み込まれることになる。
誰が、「生コンクリート、建設は別」と断じ切れるだろう。
世界は特定の意図とは無関係に循環し発展していく。
同業の生コン屋が僕のことをどう思おうとも、僕がどんな信条を大切にしていようとも、なるべくして世界の景色は変化する。
だから、自分の意思を他人や外部世界に押し付けようとするのではなく、求められるのは世界のニーズを見つめる曇りない視点を養うこと。
そして、そのニーズに応えるべく自分自身を変化させていくこと。
もう、安心だ。
再生骨材コンクリートが評価されてこなかった時代と違う。
新しい通貨としてのCO2定量評価という基準が共有されたあたらしい世界では、すべての有益な活動は適正に市場と顧客の判断にさらされることだろう。
新しい通貨が生まれ、環境経済とも言うべき新しい循環が創造されようとしている。
建設、コンクリート産業もその循環を通して自身の産業構造(縦割り・階層)を刷新し新たな時代の要請に応えていくことだろう。
僕たちにできることは、それぞれの役割の実践以外には無い。
宮本充也