2019/10/19
「ピカソやゴッホが尊敬される理由」に見る建設、生コンの抱える課題

現場最前線で活躍している人に光が届き公平に評価されるために必要な要素とはなんだろう。ピカソやゴッホが尊敬を集める理由とは何か。次世代の産業に求められるのは流動性。新流通と接続することで開かれるラストマイルの可能性。
ピカソやゴッホが尊敬を集める理由とは何か?
例えばこの技法。
打ち放しではない面(モルタル補修面)に杉板浮造りを再現する技術。
この技術を持つ一部の人の価値は知られることなく必要としている人に届きづらい。
「杉板も補修できるなんて知らなかった」
杉板型枠で施工不良を起こしてしまって失意の中にいる現場監督のほとんどはそんな反応を見せる。
その価値が知られてさえいれば。
知られていないことは存在していないのと同じ。
透水性コンクリート。
https://www.nr-mix.co.jp/dry_tech/case/800_2.html
その知られていない舗装は200年前の何にも覆われていなかった大地を再生する。
降雨は地下水系に還元され湧水が蘇る。
時代は持続可能性を志向しているのにどうして変わらずコンクリートやアスファルトは今日も大地を被覆し続けるのだろう。
ピカソやゴッホが尊敬される理由。
誰もが知るピカソやゴッホの描いた絵画は美しい。
その才能は誰も否定しないはずだ。
極論かもしれないがそれと同じかそれ以上に杉板浮造りを再現したりできる人や200年前の大地の再生を具現化できる製造者や施工者は素晴らしい。
なのに、ピカソやゴッホは尊敬を集め、一方建設のラストマイルたちには光が届かない。
今生コンに携わる若手の誰が合コンで「生コン工場で働いてます」と胸を張るだろう。
生コン工場に勤めてると言っとけばモテる。
そんなふうに思っている人間はどれだけいるだろうか。
素晴らしい価値や才能をラストマイルで具現化する人々はどうしてその価値や才能をピカソやゴッホのように評価されない。
尊敬を集められないのか。
その理由を僕は流動性だと思っている。
絵具と筆とキャンバスさえあれば誰でも書ける絵画。
ギター1本あれば作れる歌。
スマホやパソコン、紙やペンがあれば書ける物語。
どんな人にも公平に門戸を開いている。
だからこそ、ピカソやゴッホの名声は嫌でも高まる。
そして、絵画という分野はいろんな人たちの憧れの的になる。
絵画という分野は永久に続くだろう。
そして、その分野で最高に活躍する人はその名声を恣にするはずだ。
それは、絵画という分野が開放的で流動的だからと言える。
アイディアと紙とペンさえあれば書ける物語や小説という分野だからこそその最前線にいる人は尊敬を集める。
建設、生コンはどうだろう。
ラストマイルで活躍している人たちの価値は疑う余地はない。
日々素晴らしい成果を生み出し発信している。
なのに、評価されない。
悪い場合には下請けや孫請けに甘んじて埋もれている。
なにかその技術を難しい分かりづらいものにしているのではないか。
建設、生コンに従事して19年、僕はこの課題を常に立て続けてきた。
なにやら難しそうに語るのだ。
一般人を「素人」として下に見る。
門外不出を衒うのだ。
自分が何か特別な存在であるかのように。
そしてその技術を隠そうとする。
努力して作ってきたその価値は簡単に人に渡せない。
絶対に教えてやるもんか。
そして、いつしか建設、生コンは閉鎖的になり、産業構造は縦割りとなっていく。
ますます世間からは知られない存在となって、本当はすごい素晴らしい技術や価値をもっているのに、知られない。
存在していないのと同じ状態になる。
ピカソやゴッホに描き方を教えてもらったところであなたは同じような絵は描けるだろうか。
隠す。
教えない。
栄光は離れていく。
誰も志向することはない。
それは当然の帰結だ。
その価値が知られていなければ、若い才能はそちらを向かない。
産業はますます痩せ細っていく。
まるで今は絶滅してしまった伝統芸能の数々のように。
杉板浮造りや透水性コンクリートの製造方法や施工方法も同じだ。
業界特有の縦割りな運営を続けている限りいつまで経っても光は当たらない。
世界から必要とされているその価値は必要なところに届くことはない。
そして、ラストマイルは適正な評価を得ることもなく経済的にも回らなくなっていくだろう。
今必要なのは解放。
もしあなたが建設ものづくりのラストマイルにいるのであれば、あなたの価値は素晴らしい。
あなたの才能は簡単に否定されるものじゃない。
そう、自信を持って欲しい。
隠し守る必要はない。
どんどん発信し解放されるべきだ。
とらわれていては一生を棒に振ることになる。
流動性という言葉からもっとも遠いように見える建設、生コンという産業。
今、ITベンチャーなど新流通と接続をしようとしている。
解放する。
隠さない。
発信し続ける。
その意味で建設がITと接続することは大きな意味を持つと信じている。
無数のラストマイルたちの仕事がITの文脈に乗って解放される。
知られるところとなる。
すると、憧れる無数の若い才能が生まれる。
才能が流入する。
やがて、建設産業に栄光が取り戻される。
「ピカソやゴッホが尊敬される理由」に見る建設、生コンの抱える課題。
内向き、門外不出を脱しよう。
僕たちの価値は素晴らしい。
そう、胸を張って仕事をしよう。
宮本充也