2020/08/15
「グッドデザイン賞に続き《静岡ニュービジネス大賞》に挑戦するドライテック」pt2《新規性(革新性・独創性)》

静岡ビジネス界の権威のお歴々とともに神の審査を受けることになった《静岡ニュービジネス大賞》へのドライテック(透水性コンクリート)事業応募。以下は審査基準ごとにドライテックの価値についてのプレゼンラフ。本稿を叩き台とし、静岡ニュービジネス大賞の審査に挑戦する。
pt 1:https://www.nr-mix.co.jp/dry_tech/blog/pt1_3.html
審査基準
第 3 静岡県ニュービジネス大賞の審査(評価・評点)の視点と点数
(1) 総点数は、最高25点とする。
(2) 注目度の視点及び点数(最高25点)
1 新規性(革新性・独創性)・・・・・・・・・・・・・ 最高5点
2 収益性(成長性)・・・・・・・・・・・・・・・・・ 最高5点
3 市場性(将来性)県内・国内・アジア・世界のジャンルごと・最高5点
4 社会性(環境・社会生活への貢献度)・・・・・・・・ 最高5点
5 起業家精神性(マインド)・・・・・・・・・・・・・ 最高5点
※注目度点数は、上記1~5の合計点とする。
《静岡ニュービジネス大賞》の審査は上記5つの視点から実施される。
以下はそれぞれの視点における「透水性コンクリート他環境テクノロジー普及拡大の取り組み」(以下、「本取り組み」とする)のプレゼン素案とする。
はじめに
生コン産業ではJIS規格で定められた画一的な製品(生コン)を全国各地で画一的に流通させている。規格は中央集権的な縦割り・階層構造の頂きで制定され、辺境(底辺)に至るまで産業は上意下達で統制されている。また、JIS規格により商圏が限定される製品特性上、地域ごとに閉鎖的な市場が形成されやすく、特定の地域で生まれたイノベーション(環境コンクリートなど)は全体に共有されづらい通気性・流動性の極めて低い産業構造を生成した。その構造の中では、ヒト・モノ・カネ・情報等リソース(エネルギー)は特定の脈(縦割り・階層型の伝達系統)を辿って移動するよりほか手立てがない。そこでは、市場と顧客が要請する価値としての製品は見出されず、規格が要求するものづくりが生み出した製品のみが市場と顧客に押し付けられて来た。
一方、インターネットと企業間連携はあらゆるリソースが空間・時間の制約なくシームレスに繋がり合う構造を可能としている。どこかの辺境で生み出されたイノベーションは、特定の伝達系統のみを前提とした旧来の産業構造に埋もれることなく、自由に移動しうる空間の中で全体に共有されあらゆるセクターにおいて見出される。特定の全体構想が制定した従来の規格では見出されることのなかったイノベティブなテクノロジー群(製品)は、この新しい世界では瞬時に全体に共有・統合され、縦割り(地域)や階層に遮られることなく市場と顧客に届く。とある辺境(底辺)において創造された価値はその場で産業全体に共有され、それはまた別のあらゆる辺境においてさえ規格に依存することなく供給され消費される経済循環を意味する。上意下達ではなく、辺境でさながら細胞分裂のように変化し生み出された価値としての製品は埋もれずあらゆる辺境(地域)で市場と顧客の要請に応える時代がやってきたのだ。
1 新規性(革新性・独創性)「インターネットと企業間連携による産業の再定義」
本ビジネスは個別テクノロジー(透水性コンクリート、残コンソリューションなど環境コンクリート技術群)やビジネスモデル(マーケティングや生産方式)そのものの改善やイノベーションではなく、産業構造・枠組み自体の再定義・再構築に取り組んでいる点を新規性(革新性・独創性)としている。
建設、生コン産業において製品(生コン)は JIS規格の定めにより「1時間半以内に荷下ろしできる範囲」と商圏が限定されている。さらに、生コンクリートの独占禁止法適用除外により、生コン産業ではカルテルが認められており、200以上の地域で合法的な協販体制が敷かれており、産業構造は階層化され、他産業(隣接異業種)との流通は限定的で、閉鎖的・保守的な縦割り・階層型の産業構造を形成している。
このため、産業はJISにより統制(特定の全体構想が示した規格内の製品の指定)され、規定の製品のみが産業・流通脈(多段階の階層、ピラミッド型)を辿って市場と顧客(ゼネコン、工務店などを経由して消費者)に届けられいる。縦割り・階層型の産業構造は辺境で創造されるイノベティブな製品の市場全体への共有を前提としていない。新技術・工法を見出す各種制度はあるものの、いずれも産業脈(上意下達)が整備したものである以上、本来の市場と顧客の評価を反映したものとはなっていないのが現状だ。
本取り組みはその背景にあって、全く新しい文脈による産業構造・枠組みを定義・構築する試みとなる。
⚫︎産業の底流を流れる文脈の再検討
現在の産業構造は高度経済成長を支えるためにいわば「拡大再生産」を前提として整備された。生コンは「水の次に流通する材料」とも言われ、いわばこの惑星の上で最も「大地を削り、汚し、蓋をする産業」(環境を破壊する産業)の 1つと言われている。
地球規模の生態系の破壊や洪水被害の深刻化の例を引くまでもなく、市場と顧客(世界)は「有限な惑星における無限の拡大再生産」を求めていない(そもそも不可能)。それにもかかわらず、産業は当初設計された構造から今なお拡大再生産を志向している。産業は世界の要請に応えて「拡大再生産」を脱し「サステナビリティ」「クローズドループ」を志向すべ気であることに議論の余地はない。
個別テクノロジーとしてはサステナビリティ・クローズドループを志向する試みは見られる。ただし、現行の産業構造ではそうした個別テクノロジーグループがプロセス化されることはなくほとんどが埋もれ規格化されていないのが現状となっている。また、仮に規格化されたとしても縦割り・階層で整理された産業構造では実用化されていないのが現実だ。
※参考:本来は資源循環型が求められているはずなのに年々生産量が低迷するリサイクル生コン(再生骨材コンクリート)(出典:https://www.nr-mix.co.jp/)。
こうした現実からも、産業が新たな時代の新たな要請に応えるためには「拡大再生産」という文脈を廃し、「サステナビリティ」「クローズドループ」を新たに実装する必要性があることがわかる。その文脈を前面に押し出すためには現行の情報格差を前提とした縦割り・階層の産業構造の刷新が求められる。
本ビジネスモデルでは辺境のエネルギーが抑圧される現行の構造から、すべての当事者がシームレスにつながり合う区分のない産業構造を創造する上で鍵となる要素「インターネット」に機会を見出した。インターネットと企業間連携が産業全体を有機的に駆動させる、さながら「ニューラルネットワーク」としての役割を果たし、市場と顧客の要請に柔軟に応えられるシステム・産業構造を構築することで、従来では応えることのできなかった「サステナビリティ」「クローズドループ」を実現する「大地を削らない、汚さない、蓋しないコンクリート」産業を模索している。
⚫︎インターネットの活用
(生コンポータル:https://www.nr-mix.co.jp/)
産業構造はインターネット以前の情報格差を前提に設計されている。発注者(国・県・市・町)は産業の規格を整備し、コンサル→ゼネコン→商社(多段階に及ぶ)→生コン組合→生コン工場、という順を追った構造が構築されている。
生コン産業の場合、エンドユーザー(一般消費者)に至るまで、生コン工場から複数の段階を経て製品・富(公共インフラ)は届けられる。その過程で製品はJIS規格の範囲内で製造されることを厳しく求められる(統制)。厳格な産業構造の中では底辺(辺境、ラストワンマイル)におけるイノベーションの全体への共有は期待しづらい。仮に辺境・底辺で生まれた付加価値も幾重にも連なる階層を経過する過程で減衰しその価値は埋もれる。
こうした現状を踏まえ、本取り組みは2016年3月1日よりインターネットサイト「生コンポータル」をローンチした。従来の階層構造(BtoB)で価値を減衰させるのではなく、Consumer(市場と顧客)にダイレクトに辺境で生み出され市場と顧客の要請に応えうるテクノロジー群の情報や価値を発信しようとする試みである。
生コン産業70年の歴史の中で市場構造は厳格に整えられBtoBの鎖で構築される流通構造には一見インターネットの必要性は皆無のように見られる。後述「2 収益性(成長性)」でも触れるが、その取り組みの生コン産業における成果はPV数やコンバージョン数などのKPIの変遷に見ることができる。なお、現在生コンポータルのPV数は生コン・コンクリート産業において国内最大規模の水準を記録している。
⚫︎テクノロジー・製品の選定
生コンクリートは有限な惑星において最も大地を削り、汚し、蓋している製品の1つである。
近年深刻化する水災害は生コン産業が山河を削っていることも大きな原因の1つとなっている。「想定外」の自然災害に備え、産業はさらに治水(コンクリートの排水設備や護岸構造物)の整備を急ぎ、結果それだけさらに山河は削られる「いたちごっこ」が続けられている。
さらに、拡大再生産は「50年で枯渇する」と言われる石灰岩(セメントの原料)を今なお削り続けている。また、一方の原料である骨材(砂・砂利)の枯渇ももう数年前から深刻化しており、原材料価格の高騰という形で産業を席巻している。
こうした現状を踏まえ、本取り組みでは以下の2つの製品・テクノロジーを具体的なソリューションとして採用した。
1.透水性コンクリート舗装
都市部ではおよそ大半の土地がコンクリート(あるいはアスファルトコンクリート)で覆われており、降雨はすべて排水システムにより統制されている。貴重な水資源は地下水系に還元されることなく舗装・コンクリート構造物の上を流れて排水設備を経由し、河川・海洋に廃棄されている。そのことで、湧水や井戸水が枯渇するだけでなく、ヒートアイランド現象は深刻化し、冠水被害は年々その度合いを増している。
透水性コンクリート《ドライテック》(https://www.nr-mix.co.jp/dry_tech/)は「大地に蓋しない」機能を有しており、如上の社会的課題のソリューションとして注目されている。
2.残コンリサイクル生コン
コンクリートの生コン産業における再生利用率は0.1%にも満たない。つまり、構築されたコンクリート構造物は共用期間を終えると解体され、そのほとんどはコンクリートではない分野で再利用されており、それはすなわちその分のコンクリートを生産するためにそれだけの山河が削られていることを意味している。
残コン再生(https://www.nr-mix.co.jp/econ/)の取り組みを通して本取り組みでは生コン産業が資源循環型社会のハブたる機能を果たすことを模索している。仮に解体されたコンクリートや現場で持ち戻された生コンクリートの大半が再生コンクリートの原料に還元されるのであれば、生コン産業はその分の山河を削らなくて済むようになる。
インターネットによるこうした技術情報のダイレクトな訴求により、これまで階層で隔てられて来た顧客(エンドユーザー)と、製造・施工現場(ものづくりのラストワンマイル)がダイレクトに結び付けられるようになった。今やこうした先端コンクリートテクノロジーは規格に依存することなく産業のあらゆる辺境(地域)で求められ、その土地で供給され、消費されるようになっている。
⚫︎産業構造の再構築
旧来の産業構造では果たしえない「クローズドループ」「サステナビリティ」を志向するために、インターネットと企業間連携というニューラルネットワークを駆使して、具体的な環境テクノロジーとしての透水性コンクリートと残コンソリューションの普及に取り組んでいる。
いずれのテクノロジーも旧来の産業脈とは異なりインターネットを通じてダイレクトに市場と顧客にその価値を訴求しマーケティングがなされている。さらに、実際の需要と供給構造も旧来の階層を前提としていない。
従来の産業構造で考えた場合、ある地域のある消費者(発注者)が「自宅の庭に透水性コンクリートを購入する」となった場合、その問い合わせ(情報)は従来のよう地方公共団体などを経由して工務店・ゼネコンに流れ、多段階の流通階層(商社や大手ビルダーの本社機能など)を経由してものづくりの担い手(ラストワンマイル)たる地元生コン工場や地元施工者の元(底辺)に届く。
底辺が生み出した付加価値(もの)は、その産業構造を逆にたどり(商・物流)、辺境を解さない規格に従うよう強制され、さらには階層を辿るごとにその階層が必要とする経費が付加された状態で発注者の元に届くことになる。求められていた価値にはベタベタと余計な夾雑物がまとわりつき、発注者の手に届く頃には原型を留めないほどに変わり果ててしまっている。
そこで優先されるのは市場と顧客の製品に寄せる願いではなく、産業構造つまりは産業団体の都合となる。いかに市場と顧客が「サステナビリティ」「クローズドループ」を志向する製品の購入を希望したとしても、従来の産業構造から導き出されるアウトプットは必要以上に経費が嵩んだ「高くて良いもの」となり、結果経済合理性が生まれず市場と顧客の要請の応えることができない。
こうした実情から本取り組みでは消費者(c)とものづくりの担い手(地元施工者や製造者)(b)をダイレクトにつなげるインターネットマッチングサービスを2019年よりローンチした。
(https://www.nr-mix.co.jp/niwakon/subcontractor_list.html)。
このサービスでは全国3,200社の生コン工場や数十万社と言われる施工者(ものづくりのラストワンマイル)らを新しい視点で捉え直しネットワーク化に挑戦している。
インターネットで情報格差が是正された現代において産業の重層構造はその役割を失い、ともすると搾取構造となる。
本取り組みでは本来の価値を必要としている市場と顧客と、その価値の創造主ものづくりのラストワンマイルが、ダイレクトにつながり合う構造を志向することにより、これまで目覚ましい成果を上げてきた(「2 収益性(成長性)」にて詳しく説明)。
冒頭にも述べたように、本稿における「新規性(革新性・独創性)」とは個別テクノロジーやビジネスモデルの刷新を論うのではなく、既存産業を眺める視点の刷新、産業の構成要素を新しい視点で組み替えた産業の再定義・再構築を主題としている。
「拡大再生産」が限界を迎え、「サステナビリティ」「クローズドループ」新しいコンセプトを要求する新しい時代にあって、新しいパラダイムによるものづくり(産業)が求められている。インターネットと企業間連携は新しい時代の新しい産業構造を構築せしめる欠くべからざる重要要素となる。
(pt3「2 収益性(成長性)」に続く)
宮本充也