2020/08/19
「グッドデザイン賞に続き《静岡ニュービジネス大賞》に挑戦するドライテック」pt3《収益性(成長性)・市場性(将来性)》

前回「新規性(革新性・独創性)」に続き評価項目は「収益性(成長性)」、そして「市場性(将来性)県内・国内・アジア・世界のジャンルごと」に続く。本事業のテーマは「世界で水の次に流通する材料」生コン。その成長範囲はどれほどの規模なのか?
pt2:https://www.nr-mix.co.jp/dry_tech/blog/pt2_1.html
地球上で最も大地を削り、汚し、蓋している産業「生コン」
2 収益性(成長性)
3 市場性(将来性)県内・国内・アジア・世界のジャンルごと
本事業の現在の対象エリアは日本全国となっている。
「自前の流通」として、全国350社に及ぶ製造協力生コン工場(現在全国には3,200社余りの生コン工場が操業しているため、約10%)、そして全国各地に700社の主に小規模な建設事業者との協業関係を有している。
5年以内にこの製造・施工インフラを生コン工場800社(我が国のアスファルトプラントの数を意識)、施工者4,800社(生コン工場1社あたり6社を目安)に拡大を目標としている。
主な手段としてはインターネット(「生コンポータル」「庭コン」などオウンドメディア)での情報発信を通じて市場に環境コンクリート(透水性コンクリート、再生コンクリート)を広めている。
発注者(主に個人・施主)は直接地元の施工者や製造者に問い合わせることのできる仕組みとなっており、その土地で製品を供給(製造・施工)できる施工者や製造者に直接発注できる。
例えば、本取り組みが発信した情報である「透水性コンクリート」をインターネットで見つけた埼玉県三郷市に住む施主が家の周りを舗装したいとなった場合、生コンポータルや庭こんで地元の施工者や製造者を見つけられるという仕組みだ。
(https://www.nr-mix.co.jp/niwakon/subcontractor_list.html)
市場対象は「今、生コンクリート(あるいはアスファルト)が用いられている分野全て」だ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55084430R30C20A1QM8000/
現在生コンクリートは年間8300万m3生産されている。
https://www.dohkenkyo.com/shiryo/g_pdf/gozai/h9_h29.pdf
一方、アスファルト合材はおよそ4000万t(密度2.35として容積換算1700万m3)。
供給可能性は別として市場としては最大1億m3が想定される。
(コンクリート舗装はアスファルト舗装に比べて版厚が厚く設定されるため実際よりはもっと)。
さらに、アスファルト以外にもインターロッキングブロック舗装などを考え合わせると供給対象となる市場はさらに拡大する。
その市場性は他産業には比べるべくもない。
SDGs、クローズドループ、サステナビリティ、深刻化する環境破壊、自然災害
上記想定が適切に市場化するための要素は揃っている。
いうまでもなく産業は持続可能なあり方を模索すべきであり、本取り組みが取り扱っている製品(生コンクリート)は、「大地を削らない、蓋しない、汚さないコンクリート」だ。
⚫︎透水性コンクリート
自然災害によってもたらされる洪水被害の原因の1つとしてあげられるのは、大地を舗装で被覆してしまうことによる大地そのものの級水力が失われてしまったことだ。降雨は被覆された大地の上を排水設備を経由して河川、海洋に投棄される。往時人々の暮らしを潤していた井戸水や湧水は果たして枯れてしまった。排水設備(それ自身もコンクリート!)の想定を超えた雨量はすぐさま都市部の冠水被害をもたらす。さらに、舗装されている地表面は熱を持ちやすくヒートアイランド現象、ひいてはゲリラ豪雨を誘引することがわかっている。
大地に蓋しないコンクリート「透水性コンクリート」の普及拡大は降雨をダイレクトに地下水系に還元することを許し、さらには排水設備の負担そのものも軽減することがわかっている。
⚫︎再生コンクリート
我が国のコンクリートストックは100億m3と言われている。それらコンクリート構造物が供用期間を満了すると解体され、そのコンクリート塊(ガラ)のほとんど全ては路盤材・埋め戻し材というコンクリートではない分野の資源として再利用されている。新たに設置されるコンクリートの99.9%以上は山河を削り自然を弱らせ(自然災害の遠因)た上で、さらに大地に蓋をしている。現在0.1%にも満たない再生コンクリートの市場を活性化させることはクローズドループ・サステナブル社会という要請にかなっている。また、残コンと呼ばれる生コンが現場で用いられずに余った生コンクリートの再生化は最終処分場で埋め立てられている残コンスラッジ(ヘドロ・汚泥)の発生を抑制させ、土壌(水質)汚染を止めることが期待されている。
飛行機や山の頂から大地を眺めて目に入るのはコンクリート構造物だ。
自動車や洋服は小さすぎて目視することはできない。
コンクリートが地球という惑星、地球環境全体に大きなインパクトを与えている証拠だ。
それはそれはすなわちコンクリート(水の次に流通する材料「生コン」)の市場性の大きさ、そしてそこで生まれるイノベーションの収益性・市場性をそのまま意味する。
産業の文脈が世界の要請(SDGs、サステナブル社会、クローズドループ)に寄り添う。
そのことで、産業はリニューアルを果たす。
そして、そこに新しい文脈の市場が生み出される。
pt3では海外に目を転じた場合にいかに巨大な市場が眠っているかについて論じていきたい。
(pt4に続く)
宮本充也