2021/12/04
《コラム》「造粒ポーラスコンクリートの基本物性の確認が進んでいます」

生まれたてのコンクリート舗装の新ジャンルは仮に「造粒ポーラスコンクリート」と名付けられ現在圧縮強度や曲げ強度などの基本物性の確認が進んでいる。「これは、一体、なんなのか?」転圧コンクリート舗装(RCCP)なのか、あるいは普通コンクリートに近いのか。実装に並行して研究は進む。
造粒ポーラスコンクリートとは何か?
なんともマニアックなことだが、練り水に「海水」を採用したテストピース。
この後に出てくる標準品に比べて綺麗に脱型(だっけい)されている。
なぜ、練り水に海水なのか?
⚫︎参考: 海水を利用したコンクリートについて
まず、造粒ポーラスコンクリートを「転圧コンクリート舗装(RCCP)」と定義づけたとするならば配筋が要らないので、海水中の塩分による鋼材腐蝕という問題がない。
世界規模で水資源の枯渇化が問題となっている。
生コンクリートはそんな貴重な水資源(地下水や上水)をふんだんに消費して作られているのが現状。
例えば生コンポータルの長岡さくら工場が操業する伊豆地域で造粒ポーラスコンクリートを製造するときにはから練りと言って水を含まない配合を生コン車のドラムに積み込む。
時間として5分程度の距離の海岸にそのまま向かって海水をポンプアップしドラムに投入。
練りながら現場に向かう。
そして、そこで、高分子(キーマテリアル)を投入し高速攪拌することで造粒が促され「海水で練られた造粒ポーラスコンクリート」が完成する。
当面の適応部位はエクステリアなど家周りの「予算がないけど、雑草やぬかるみは解消したい」というJIS外品の分野であるから実装上全く問題がない。
一般の方には全く訴求しないことかもしれないが、こちらをご覧になられているコンクリートの専門家にとってはこれがどのようなことを意味するかお分かりだろう。
いよいよコンクリート産業は貴重な地下水や上水を消費することなくプロダクトを製造することができる。
さらに、ECMやらセメントフリー(セメントを一切使わないコンクリートの技術)、残コン再生骨材などを実装することで、いよいよコンクリート産業完全毒性0、完全クローズドループを達成しようとしている。
その実践を造粒ポーラスコンクリートに託すことができる。
こちらは通常配合(18-8-25N)普通の骨材、普通のセメント(普通ポルトランドセメント)を用いた造粒ポーラスコンクリート。
応用も、基本も、造粒ポーラスコンクリートは現在、全くの白紙ということができる。
基準となる座標軸がない。
様々なレンジの配合、いろんな変数を投入してみて、一体造粒ポーラスコンクリートはどのような材料なのかを明らかにする旅は今まさに始まったばかりだ。
セメントって誰が発明したの?
僕の仕事は研究でもなければ理論構築でもなく社会実装だ。
生コン屋風情が「研究」だの「理論」だの烏滸がましい。
僕たちは練って運んでなんぼの存在。
その実装、そのプロダクトで評価されるのが生コン製造業だ。
その基本を忘れてはならない。
最近、感じることがある。
パテントとか、特許とか、産業の進化を妨げるのではないか、ということ。
そう思うように至ったのは、ごまんと発明され特許化する果たしてどれだけのプロダクトやテクノロジーが実際に世界の景色を変えているだろう、という問いを立てたとき。
ほとんどの特許技術が有り体に言えば売れてない。
権利もクソもなかろう。
そして、もう一つの大きな問い。
「セメントって誰が発明したの?」
答えは誰もが知る通り、誰でもない、大昔にたまたま自然現象(森林火災)で焼かれた石灰岩土壌に雨が降った時にそこがカチコチに固まっていた、ということを人類が知覚し、その後「固める」という分野で多くの人々がこの自然現象を応用した、というだけのこと。
誰か天才がある日突然生み出したものではない。
集団的知性ともいうべき、誰のものでもない知恵により生まれた技術。
無論、特許技術ですらない。
このように考えると、僕たち現場ラストワンマイルで生み出されたいちいちは、特許化するべきではないと思う。
なるべく知財化するのではなくなるべく多くの人々の目に触れ参画してもらった方が、セメントの利用方法が多様化したように進化が早いのではないか。
少なくとも僕はそう思う。
だから、造粒ポーラスコンクリートのアイディアが生まれた瞬間、というか、翌日に、僕はブログでこのアイディアを公開した。
いわゆる、「公知」というやつだろうか。
自ら生み出したアイディアを権利化できないように自らオープンにしたのだ。
このスタンスは引き続き変えないつもりだ。
現在、自社の試験室はもちろんのこと、MAPEIやこの技術に関心を寄せる全ての人々が並行して「造粒ポーラスコンクリートとはいったいなんなのか?」を探る旅が始まっている。
従来のポーラスコンクリートと違って、細骨材をも含むポーラスコンクリート。
生まれたてのその技術を見て、いろんな人がいろんな思いを寄せるだろう。
無視したって構わない。
熱烈に心酔してもいいだろう。
修士論文のテーマに!と取り組んでくれる学生の存在もある。
セメントが世界の片隅で人類に見出されたように。
造粒ポーラスコンクリートだけじゃなく、辺境で生まれているイノベーションの卵はそれに関心興味を寄せる全ての人たちの創発により世界全体をより美しくしうるテクノロジーに進化するのだ。
僕はこのプロダクトの生成を通じてものづくりの本質を思い出すことができた。
宮本充也
オワコン工事一式原価例
(生コンビニ仕入れ配送料無料)
◆施工面積40m2
材料費 (配送料無料) | 80,000円 | 40m2 x 0.05m(50mm厚) = 2m3 x 40,000円(単価) |
---|---|---|
工事費 | 70,000円 | 2名 x 35,000円(日当) |
諸経費 | 7,500円 | 5% x (80,000円(材料) + 70,000円(工事)) |
合 計 | 157,500円 |
※単価:165,000円/40m2
= 3,938円/m2
◆施工面積60m2
材料費 (配送料無料) | 120,000円 | 60m2 x 0.05m(50mm厚) = 3m3 x 40,000円(単価) |
---|---|---|
工事費 | 95,000円 | 2名 x 35,000円(日当) + 1名 x 25,000円(手許) |
諸経費 | 10,750円 | 5% x (120,000円(材料) + 95,000円(工事)) |
合 計 | 225,750円 |
※単価:225,750円/60m2
= 3,763円/m2
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