2021/03/07
「出荷量10分の1だからね」伊豆中央JV構想
不定期ながらも間を開けずに行われるパートナー野村勝也さん(野村商店代表取締役)とのランチミーティングでの話題は生コン全般や生コンを取り巻く社会環境に及ぶ。当座のテーマである新しい生コン製造プラットフォーム伊豆中央JV構想に関してふと「出荷量10分の1だからね」の発現。くぐり抜けてきた死線を想像するだけでヒヤリとした。これから生コン産業はどうなっていくのか。
生コン業態変革へ
今日は久しぶりに宮本社長と打ち合わせ。
道も混んでる、お客さん伊豆に来てくれていますね
(https://www.facebook.com/100002448551170/posts/3716841278407454/)
きっかけはもう引退されてしまった橋本政昭前副会長だ。
19年前だ。
僕は駆け出し、20代前半。
低迷する静岡県東部地区にあって倒産覚悟でやれることを全部やっていた。
今から考えても非常にアグレッシブな時代。
その時に、業界の大先輩、油の乗り切った50代の橋本さんにお会いした。
「宮本くん、生コンだけしかやってないと頭バカになるよ」
衝撃的な人だった。
僕の今の原体験。
行動派。
次から次へと新しいことにチャレンジする。
大胆。
その橋本さんからの声かけで、長岡さくらJVというプロジェクトが始まった。
「税金対策にもなるし、赤字垂れ流してたっていいんだ。でも、さくらは畳む。長岡とJVを組んで合理化する」
あまりにも堂々としたJV申し入れに僕はただただ「お願いします」とだるま寿司の個室で遜っていた。
あれから、17年経過して、世代は勝也さんにバトンタッチ。
同世代だ。
あの頃よりもさらに業界環境は低迷している。
もし、あの時、橋本さんからの申し出がなければ、間違いなく今の僕や長岡生コンクリートはなかった。
下落していた価格も下げ止まり、本日に至るまで生コン組合の尽力のもと100%組織率の有数のエリアに変貌した。
「出荷量10分の1だからね」
昨日、長岡生コンクリートの55期最終月(2月度)の月次決算がまとまった。
急落する生コン市場にあって当社は5年前に生コンプラントを一新し文字通り背水の陣を敷いている。
多少出荷低迷も落ち着くかと思いきや、プラント建てた直後からさらにシフトチェンジして出荷量は低落の一途を辿った。
結構な試練だと思っていたが、目の前にいる勝也さんは同時期にさらに過酷な激流に飲み込まれていたのだ。
静岡県東部地区(伊豆や三島、沼津、御殿場などをカバー)の出荷低迷も一服という希望的観測があるが、僕たちはそんな勝手な希望は持たない。
外部環境に依存しない。
他人のことは気にせず、自分たちができることをただひたすら実行する。
限られたパイを分け合う(奪い合う)市場環境では怨嗟や嫉妬、猜疑心が醸成されてしまう。
「あいつはきっと裏で何か仕組んでるはずだ」
「いいようにさせないぞ」
内側ばかりを見ていると人の心は荒んでいく。
それが嫌で、「宮本くん、生コンだけしかやってないと頭バカになるよ」橋本さんに焚き付けられた形でドライテックや残コンソリューション、コンクリート補修やLSSといった新規事業を始めたのは16年前。
勝也さんとの本格的なパートナーシップはここ数年の話だが、それ以前に相当の試練に見舞われていたことを彼の居住まいから感じ取った。
いまだに、長岡さくら、そしてさらにアップデートされた伊豆中央JV(他生コン製造者らとのさらなる協業)に対する組合内部からの疑いの目は向けられているようだ。
(実際、その原因の大半はこの僕にあるのだけれど)
真意が理解されないのは悔しいけれど、他人を動かそうったってそうはいかないことは知っている。
自分たちができることをひたすら続けるしかない。
「出荷量10分の1だからね」
10分の1だ。
僕が入職した頃は月産5000m3以上出荷していたこともある。
10分の1。
月産500m3。
背筋が凍る。
今は2000m3だから、さらに4分の1。
耐えられるだろうか。
今は理解されなくとも、いつかは理解される時が来るはずだ。
生コンが500m3なっても耐えられる強靭な生コン業態を確立するために、今日もドライテックをはじめとした「生コンでいいこと」の発信をしているし、勝也さんを中心に静岡県東部生コン組合の関係者への説明は進んでいる。
不思議なことに、同じようなことは同じ時代、同じ生コン業界では、他の地域でも同様に起きているようだ。
今を生きる産業人としての僕たちは業界を取り巻く情勢を見据えて然るべき姿に変化していく必要がある。
生コン産業がこのままでいいはずがない。
インターネットや企業間連携を通じて圧倒的な光にさらして浄化を促したい。
今の生コンは決して世間に誇れる素晴らしい産業ではない。
自覚している。
だからこそ、僕たちは同志たちとともに、今自分たちができることをひたすら続けていくほか手がないのだ。
宮本充也