2019/12/03
「高通気性組織の創造」郷土に溶け込む理想の生コン事業所とは?(その2)
(郷里の葛城山)
これからの時代郷土から求められる生コン工場の姿は一体どのような形をしているのだろう。所有と経営というあり方はこれからも続くのだろうか。特定の意図に左右されない、郷土の求めに柔軟に応じられる生コン工場を模索するプロジェクト「郷土に溶け込む理想の生コン工場」その2。
高通気性組織の創造
室内朝礼の様子(撮影は野村勝也さん)。
伊豆の国市長岡1407-34という住所に生コン工場がある。
水の次に流通する材料。
生コンはどの地域でも人の営みがある以上必ず必要とされる。
ご多分にもれず伊豆の国市長岡1407-34を中心とした円のエリアでも必要とされる。
その必要に僕たちはこれまで54年間。
さらに、長岡さくら工場としてジョイントベンチャーがスタートしてから15年間。
変わらず水の次に流通する材料「生コン」を地域社会に届けてきた。
その円が次第に大きくなっていくことを感じる。
ピーク時の5分の1や8分の1なんてのもザラ。
70年産業の生コンを振り返ればピーク時5,000を数えた工場数は今や3,000を切ろうとしている。
時代が変化した。
人口半減社会。
今目の前の建設需要になにか不自然を感じるのは都心部ではない地方で生コンを操業するすべての人たちの感覚なのではないか。
事実地域(静岡県東部地域)も生コン出荷量は特需を除けば下のエスカレーター。
もちろん、生コンを製造・販売することによる売り上げと利益も下降していく。
このままのペースで下降を続けたら未来は暗い。
それは誰もがわかっていることだ。
高通気性生コン工場という実験について。
「生コンがだめなら他をやれ」
という態度にはどうしてもなれない。
19年携わってきた生コン工場。
(地域)社会がそのあり方に変化を求めている。
その求めを無視してまったく異業種に投資する気分にはなれない。
求めには真摯に向き合い自らの形を変える。
それが健全な生コン工場のあり方だと思う。
この取り組みはなにも静岡県東部地区に関することではない。
日本全国の生コン工場がその地域から同様の求めを受けている。
僕もその1として真剣に向き合い真剣に変化に取り組んでいきたいと思っているのだ。
長岡生コンクリートから新会社への設備定借。
高通気性組織、つまり外部との境界線が曖昧で自由に変形する空間としての新会社を設立する。
その組織が生コン製造を行う場所となる。
会社組織の形態にもよるが、出資比率は常に均等。
2社であれば50:50。
3社であれば、33:33:33。
4社であれば・・・。
組合におけるシェアは関係ない。
均等に出資を行う。
そして出資者はその高通気性組織に自由に出入りすることができる。
出資者は出資することによってその工場で製造された生コンを自社の生コンとして販売するようになる。
いろんなあり方が許容されるべきだと思う。
「こうしなければならない」
という固定観念は捨てることを期待される。
それらは地域社会、つまり地域の市場と顧客の求めに応じている限り自由であるべき。
さらに、出資者それぞれの文化は尊重される。
ある日を境に別の組織文化を強要されることはない。
長岡生コンももちろんその1だ。
自社の54年の蓄積は解体されることもなければその必要もない。
長岡生コンという法人はその主体性を担保される。
ただし、生コン製造事業所は長岡生コンの法人が単独で所有するものとはならない。
出資者らにおける共同所有という形をとる。
そのキャンバス(生コン製造事業所)は無色だ。
誰か特定の意図だけが尊重されるべきものではない。
社会の求めに呼応したそれぞれの出資者がそのキャンバスにそれぞれの筆と絵具でそれぞれの色彩を描いていけばいい。
途中でまた消したって構わない。
非常に曖昧な叩き台だが今僕は高通気性組織としての生コン事業所が地元社会に求められる生コン工場のあり方なのではないかと考えはじめている。
定借という形はつまり長岡生コンから設備や土地が新会社に移ることを意味する。
所有を失うことになる。
もちろん怖い。
所有(あるいは支配)という概念は甘い蜜のようなものだ。
死んでもなお所有するなんてことがないように、所有(支配)なんてものは単なる幻想だ。
それでも一度手に入れた「所有」というものと決別する。
地域社会は僕も含めて誰か特定の存在のためにあるのではないのだから。
さあ、これから地域社会のあらゆる人たち、または地域の異なるあらゆる生コン関係者とこの取り組みは共有され進んでいくことになる。
それぞれの地域で求められる生コンを届けている生コン工場。
その業態がサステナブルであるためには時代の要請に応じた変化が必要だ。
一度災害が起きたときに経営が青色吐息では許されない。
それが、生コン工場であるからだ。
宮本充也