2021/02/04
「生コン製造者が臨むべきダウンサイジングLLPという手法について」
今生コン産業ではさらなるダウンサイジングが進んでいる。往時7000超を数えた生コン製造者は現在3200、さらには3000も割り込もうとしている。史上原理に翻弄されるだけじゃない。業界では2個1と呼ばれ、意識的に組織のサイズを市場に合わせる取り組みがなされている。木田組生コングループの挑戦、LLP(Limited Liability Partnership)について。
さすがは木田組生コンLLPへの挑戦
南九州生コン有限会社吹上工場(南州平田南九州LLP)
南九州生コン有限会社吹上工場は、南州コンクリート工業株式会社・平田コンクリート工業株式会社と有限責任事業組合(LLP)を設立し、本日2月1日より鹿児島市小山田にある共同の新プラントにて生産開始しました。
生産性向上や担い手不足対策としてLLPでの事業活動とはなりますが、我々の信念や品質は今までと変わらず運営して参りますので今後もよろしくお願い申し上げます。
「コンクリートは人を守る」
(https://www.facebook.com/192207037537451/posts/3639903319434455/)
LLP(Limited Liability Partnership)とは。
アメリカから輸入した組織形態の考え方であり我が国でも20年程度の歴史を数えている。
特徴は、資本比率にとらわれない自由な機関設計。
そして、パススルー課税(パートナー企業に直接課税されるため二重の課税を避けられる)。
https://www.ashita-team.com/jinji-online/category2/9431
九州を中心に、生コン製造者の2個1、ダウンサイジングの枠組みとして広く普及している。
市場は猛スピードでシュリンクしている。
僕が生コンに入職した頃は月産10,000m3なんてこともあったが、今は3,000m3出荷するのがやっとといった所だ。
この20年で、7割減。
それもそのはずで、聞くところによるとピーク時には7000以上の生コン製造者を数えていたが、その数は今や3000を割り込もうとしている。
半分以下だ。
生コン出荷量もピーク時2億m3を伺うところまで伸びたそうだが、今は9000万m3を割り込んでいる。
底はまだまだこんなもんじゃない。
人口半減社会にこれから向かおうとしているのだ。
ますます生コンを取り巻く市場環境は緊縮していく。
その現実を踏まえれば自ずと取るべき選択肢は浮かんでくる。
これまで通り拡大再生産を続けるのではない。
新しい時代の新しい要請に対して生コン製造業も自らの姿を変えていかねばならない。
この度木田組生コングループ関連会社の南州生コンはLLPによるダウンサイジングを選択した。
我々の信念や品質は今までと変わらず
2個1やLLP成功の鍵は、「統合と多様性の両立」だと思う。
3工場あった生コン工場は市場が縮小したことによって「3個もいらないよ」と言われる。
悲しいことだが、仕方ない。
「1個で十分だよね」という市場の要請に対応してLLP等の手法を駆使して1工場へダウンサイジングする。
実際に、1工場で足りてしまうほどの市場なのだ。
これが地方の生コンの現実だ。
「3工場が飯食えるだけの単価にすればいいじゃない」という考え方は一部地域の組合に見られる考え方だ。
ただ、それって、「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」みたいな理屈だと僕は思う。
土台世間からずれている。
日本だけに許された独占禁止法適応除外の完全なる濫用だ
閑話休題。
市場の要請にきちんと応えることで製造設備(固定費)こそ3分の1に圧縮する(統合)。
でも、我々の信念や品質は変わらず、それぞれの組織が育んできた企業文化はそのまま継続(多様性)。
それが、最も大切なことなんじゃないかと思う。
素晴らしい宣言だと思った。
かくいう生コンポータルの生コン製造事業、長岡さくら工場も今年新たなフェーズを迎えようとしている。
名付けて、漫画「寄生獣」の後藤作戦。
こちらはLLPではなく新会社と設立して製造プラットフォームとする。
そのプラットフォームに地域の生コン製造者は自由にジョインすることができる。
出資比率は均等が原則だ。
市場は待ったなしで縮小している。
新会社、製造プラットフォームはその変化に応じてパートナー製造者に広く門戸を開く。
パートナーが増えれば増えるほど、それぞれの企業が負担する固定費率は下がっていく。
製造に関わる経費負担をそれぞれのパートナー事業者の出荷数量に応じて負担するスタイル。
どんなに市場が緊縮しても「災害時に最も必要とされる」「水の次に流通する材料」「インフラの基礎資材」は必ず必要とされる。
その製造・供給責任を全うするためにも、僕たち生コン製造者は常に変化し続けなければならない。
そして、長岡生コンクリート。
これまで地域の施工者と構築してきた関係性や育んできた組織文化は消してはならない。
新しい姿に変化することで、その文化はさらに濃度の濃いものになっていくはずだ。
同時代を生きる経営者が臨むダウンサイジング。
決して消極的な話じゃない。
クローズドループ。
マイナス成長。
そんな時代にあって、生コン製造者が取りうる自然な候補として前向きに捉えている。
「大地を削らない、汚さない、蓋しない」生コン。
新しいあり方を、今を生きる生コンパーソンは常に志向している。
宮本充也