2018/11/03
「【経験を創る】建築と地域性が紡ぎだすもの」
昨日2018/11/02(金)は静岡県建築士事務所協会50周年記念事業として、SANAAの妹島和世氏と西沢立衛氏の講演があった。「建築と地域性が紡ぎ出すもの」。そこには何度も「経験を創る」というキーワードが。
静岡市立歴史文化施設の建築
※施設イメージ(設計:SANAA)。https://www.shizuoka-bunkazai.jp/project/2018/03/post-2.html より引用
重要な基礎資材である生コンクリートを供給する生コンポータル。
協力会員として登録する静岡県建築士事務所協会。
この度めでたく50周年の節目を迎えた。
現在着工を控える静岡市立歴史文化施設の設計を受託したSANAA。
同事務所は建築の栄誉、金獅子賞やプリツカー賞を受賞する世界的に有名な建築家ユニット。
新たなランドマークが地域の流動性を高めることが期待されている。
そんなSANAAの妹島和世氏と西沢立衛氏が招かれ、
「建築と地域性が紡ぎ出すもの」
として記念講演が開催された。
同日は日本平(静岡市)にて隈研吾氏が設計した展望回廊のオープニングセレモニーも開催されているなど、
基調講演の他にも地域(静岡市)と建築の密接な関わりについて関連した話題が続出した。
そこで妹島和世氏から何度も発せられた、
「経験を創る」
というキーワードは建築だけではないすべてのものづくりに共通するもの。
※SANAAの代表作、ルーヴル=ランス。3.5mの傾斜など地形に逆らわずそのまま生かした(自然と調和した)設計が特徴。そこにも「経験をつくる」が巧まれている。
※丘の地形をそのまま生かし、コンクリートで覆った後に、中の土壌を掻き出し排出した形がそのまま残るて豊島美術館(SANAA)。https://benesse-artsite.jp/art/teshima-artmuseum.html から引用。
建築が障害にならない、地域に溶け込む。
静岡市立歴史文化施設の設計思想に何度も発言のあった、
「雁行動線」
静岡駅から駿府城公園に至るまるで雁が飛んでいるときの斜めの形。
その雁行動線に逆らわずそのまま生かした建築。
作り手のエゴを押し付けるのではなく、
地形や地域性にそのまま従う(活かす)設計。
壁や障壁を作るのではなく、
地域の交流を促すような仕掛けとしての建築。
人々に新しいことに関心を持ってもらえるように。
流動性を高め街を活性化させる建物。
「経験を創る」
ものづくりにとっての経験をつくる。
あらゆる設計の根底にある、「経験を創る」。
これは、設計だけでなくあらゆるものづくりに共通する重要なワード。
産業の歴史が古く市場と供給者の関係性が固定化するといつしか忘れられること。
生コンも含めて僕たち作り手が市場と顧客に提供するもの。
それは、経験。
生コンはそれそのものではなく、経験を提供しなければならない。
高流動コンクリートは何を提供しているのか?
単純に柔らかい生コンではない。
型枠の中で自己充填されるため、
作業員の負担が少なくなる。
そんな経験を提供するために開発されている。
1DAY PAVEというコンクリート。
24時間で硬化するという性能を提供しているのではなく、
翌日すぐに利用できる土間コンという快適さ。
そんな経験を提供している。
多様化する社会にとってのものづくり。
物質的に豊かになった現代社会において、
誰かのエゴを押し付ける形ではなく、
社会全体になじみ溶け込む、つまりニーズを包含する形。
講演を聞いていて何度もあった、
「経験をつくる」
ますます、「ものがいらなくなる」時代にとって、
誰かのエゴを貫いた「もの」を押し付けるあり方から、
社会要請(サステナビリティ、人口減少、高齢化、環境)を意識したあり方。
超あするあり方にものづくりも変化していくのだろう。
ものを作っていては選ばれない。
経験を創る。
転換期を迎える建築士事務所協会50周年事業。
時代の変化を意識させる機会となった。
生コンも、経験(コト)を紡いでいく必要がある。
ものではなく、
生コンでいいコト。
宮本充也