2019/11/27
【オングストロームの悲哀・専門用語に要注意】
楽しそうに講演している人の話は面白い。
ただし、そこにはある条件が伴う。
それは「共通言語」という土俵で話すこと。
そこを外すと、楽しめるのは言語の分かる「力士」のみ。
結果、聴衆は置いてけぼりとなる。
しかも、そんな現実にも気付いてない、という二重の悲劇が繰り広げられるのであった。
建築士事務所協会に招かれて、講演をする機会を頂いた。
「今さら聞けないひび割れの話」という演目まで決まっている。
元々は宮本さんが承諾したものに、助っ人という体裁で参加。
前半「ひび割れ」、後半「補修」と分担し、語ること80分。
終わりには、聴衆からの質問もあり、個人的に話しかけてくる人もいた。
問題なく無事に終わったかと、後段の講演に耳を傾けてみると...
「今さら聞けないガス圧接の話」⁉
(なるほど、これは「今さら聞けないシリーズ」なのかな...)
語り手は、ガス圧接一筋と思われる大先輩。
パワポもしっかりと準備して、講演に臨んでいる。
「アセチレンガスでですね、1200~1300℃に熱するとですね。
鉄が、溶けてるんだけど溶けてない状態になるんです!」
(なるほど...溶ける?溶けてない?どっちなんだろう...)
「ここでですね、圧力を加えてですね。
この圧力も今は自動ですけど、昔は手動でやったりしてたんですが、職人によっては...」
(へぇ、熱を加えながら圧力も同時にね、なるほどなるほど...)
「あっ、圧力計を見て、圧が足りないんじゃないかっていう監督さんがいますが、
<これは単位面積あたりです!>って言えるくらいの知識がねぇ、現場の職人にも...」
(そうそう、ちょっと知ってる監督って、数値を見るんだよね、それからそれから...)
話は難解ながらも、はじめはフムフムと聞いていた。
初耳の言葉は多くとも、現場での余談などには想像がつく。
講演者もだんだんと話しがのってきた!(と思われる)
「ここでですね、この間隔がですね、2.8664オングストロームなんですよ!」
ここで、ノックアウト。
「オングストローム?」......「月面着陸?」
「地球は青かった?」......それはガガーリンだ。
そもそも「アームストロング」ではなく「オングストローム」
興味の薄い講演の中、妄想のスピードは脳内で光速回転をはじめる。
一度切れた集中力に、もう収集をつける術はない...
そこで振り返って、自分の話は大丈夫だったのか?と不安がよぎる。
「ガス圧接」と「生コン屋」、交わる接点がほぼほぼない反面、
「コンクリートのひび割れ」は「建築士」にとってどうだろう...
(興味の範囲内だよなぁ...などと自己弁護しつつ)
......!!
あっ、「アルカリシリカ反応」の話とかしちゃったよ!
「反応性骨材が、強アルカリ環境下にさらされると、ゲル状の物質を生成し、そこに水が加わると膨張圧が、うんぬんかんぬん...」
ここで、ノックアウトされてなければなぁ...くわばらくわばら。
配慮がなくていけない...そんな事話しても誰の耳にも入らない。
百歩譲って誰もとは言わずとも、98%の人はスルーする。
さながら「オングストローム」という単位のごとく!
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さて、オングストロームとは(webより)
・長さの単位で、100億分の1メートル
・原子や分子の直径を扱う際に使われる
・1オングストローム=0.1ナノメートル
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専門用語には要注意!
人は共通言語でしか語り合えない。(共通言語でも難しいのだから)
NR試験室 二見