2020/03/03
【固まらない生コンと固まる生コン、どちらをご所望ですか?・言葉の解釈】
「朝打った生コンが固まってないんだけど...」
暗くなる夕方のちょっと前、事務所へと電話が入る。
「こんなに固まらない生コンは見たことがない」
エクステリア業者からの言葉には、その不愉快な想いがにじみ出ていた。
こうなると、電話でやり取りしていても埒が明かない。
現場まで15分、「今から駆けつけます」と電話を切る。
その時間、試験室職員で残っていたのは2人。
現場へと軽トラを飛ばしながら状況の整理をする。
・配合は「24-18-25N」
・エクステリア業者なので、打ったのは外構だろう
・10時に打ったとしても、7時間は経過している...etc.
向かう途中で事務所からの追加情報が入る。
「運転手の○○さんに確認したら、何もおかしい所はなかったって」
○○さんはこの道何十年のベテラン運転手。
であれば、生コン製造自体には問題なし、ってことか...
そんな会話をしながら、気持ちが少し安定する。
でも、そもそも「固まらない」ってどういうこと?
・朝打ったのに、まだ乗れない?
・ブリーディング(浮き水)が止まらない?
・コーヒー、コーラでもこぼしたのか?
2人で話をしていると、道中、解釈・妄想が止まらない...
いざ、現場に到着。さて、件の生コンとご対面。
ふ~~...
安堵の呼吸が漏れる。
結論からいうと、<固まっている>
<硬化に時間がかかったかもしれないが、それは異常ではない>
試験室職員から見たら、それがまがいのない事実。
2人は言葉を交わさなくとも、お互いの気持ちは分かっている。(はず)
さ、後はお客さんの<気持ち>のフォローだ。
「すいませんでした。心配させてしまって申し訳ありません...」
「こんなに固まらない生コン、見たことないよ!ほら」
「指で押すと跡がつくんだよ!」業者さんの語気は粗くない。
「えっ本当ですか?押してみてもいいですか?」
そう言われると、やってみたくなるのが人の心。
「ダメだよ!」
「えっ、じゃ、じゃあ...ど、どうしましょう...?」
エクステリア業者さんは、いろんな生コンに接し、様々な現場を体験している。
そういう意見に耳を傾け、やり取りを20分ほど繰り返し、話も煮詰まってきた。
「では、明日の朝、もう一回見に来ますので、そこで判断していただけませんか?」
「明日はこの現場には来られますか?」こちらから解決策を提案する。
「おう、来るよ!それでいいよ」
周囲はすっかり暗くなり、現場には3人が立ちすくんでいた。
このくらい硬化が進んでいれば、ネコが乗っても大丈夫!
「翌朝、7時30分に再度ここで確認しましょう」
そんな約束をして、その場はお開きとなった。
「固まらない」という言葉、人によってその解釈は異なるんだな...
つづく
NR試験室 二見