2016/06/19
動機を見つめる「僕らが生コンを作る理由」
「どうして生コン作っているの?」どんな職業でもいい。子供にこう訊かれて明確な答えを僕たちはもっているだろうか?なんでもいい。ブレない自分だけの動機。そんなものを常に大切にしていたい。
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小学3年生になる息子の課外活動は地元の狩野川放水路を見学。
放水路の目的は一級河川狩野川の氾濫を抑制するために、
駿河湾へのバイパス運河により水流を2分するという壮大なもの。
これにより、その後の多くの台風による氾濫は防止されたろうし、
狩野川台風以降一度も甚大な被害をもたらしていないことからも、
多くの貴重な人命はこれにより守られてきたはずだ。
学校で息子はきちんとその狩野川放水路の目的をこたえることができた。
「その放水路にコンクリートを納めたのは誰か知ってる?」
教科書には載っていない不意の質問に顔をきょとんとさせていたが、
「パパのパパが生コン工場を作ってコンクリートを納めたんだよ」
と聞いた時の息子の表情がぱあっと明るくなって、誇らしげに、
「じゃあ、有名人てこと?」
なんて無邪気な質問を投げかけてくる他愛のないコミュニケーションから、
僕らの動機づけを改めて知るに至った。
商売、ビジネスの動機づけ、理由はいろいろとあるかもしれない。
行動の動機は行動の連続の中でいつしか忘れられ、
いつのまにか目的と手段は入れ替わり、
日々の仕事に漫然と追われてしまうようになる。
亡き父と大人になって会話したことがないから本心はわからないけれど、
狩野川放水路建設工事をきっかけに生コン工場を創業した父の、
いくつかある生コン工場操業の理由の一つにはきっと、
「生コンクリートを供給することで2度と多くの犠牲者を出したくない」
というのもあったはずだ。
【生コンでいいこと】型枠を外してゾッとしたことがある?
斜陽産業などと言われて久しいし、
建設業はまるで世の中の悪者くらいのむきも少なくないが、
生コンクリートがもたらしている付加価値は絶大だ。
後始末と前始末があるけれど、
ひとたび大きな災害が発生して、救援活動やそれに供される物資やらはものすごく、
「派手でかっこいい」
そこには多くの失われた犠牲者がいてたくさんの涙がながされていて、
人はそうした側面ばかりをみて美談としてしたてあげるのだけれど、
鉄筋コンクリート造りの建物や土木構造物が巨大な災害にもものともせず、
周辺の人たちを守ったことはあまりにも、
「地味であたりまえ」
すぎて誰にも話題にされることはない。
せいぜい、僕ら建設関連の人たちが声高に主張するものだから、
多くの自慢話とともに、ナチュラル無視されるのが関の山だったりする。
僕たち生コン産業は大自然の恵みを削り細らせていただいて、
その富を人の住むまたは人の役に立つ場所に再生産して送りだしている仕事。
生コン産業が67年成熟期を迎え、
人口は減少に転じ、
それでも山河は荒れ狂い、
大自然から人を守る手段を提供していく使命を、
僕たちはもっている。
金儲けや名誉のためではなくて、
いつ起きるともしれない、地震・洪水・土砂崩れに備えて、
「前始末」
それが僕たちの使命。
そもそも流される必要のない多くの悲しみの涙を生まないために、
僕たちは堅牢なコンクリートを世の中に送り出している。
地味だけど、息子との会話の中で、もしかしたら息子と孫の間で数十年後に語られる、
「パパのパパは南海トラフ地震被害の未然防止に供給するために生コン工場を創った」
なんて親子間で他愛もないコミュニケーションがされる日があってもなくても、
僕らが生コンをつくる理由こそ、
きちんと清めて忙しさに取り紛れないように、
いつも純粋に守っていきたいと思っている。
「なんで生コンを作っているのか?」
その質問にいつも自信をもって答えられるようにしていたい。
宮本充也