2016/08/30
「安本隆晴先生」
仕事に就くと先生と呼べる人に出会うのは難しいと思う。
僕の場合はふつーに大学までみんなと進学していき、
一人だけぽつんと田舎の家業に戻った。
そこから孤独に「生コン」という当時地味だと思ってた仕事にいそしんだ。
卒業して公務員や有名企業に進んでいった友人たちは、
僕からすると、なんだかきらびやかに見えたし、うらやましかった。
一方毎日毎日山奥の生コン工場で現場に生コンを届けている自分が、
なんとなく情けなかったのを覚えている。
後ろからがけが崩れてくるのを必死に避けるように、
僕は毎日様々なことが起きるガタガタで問題だらけの会社で必死にもがいていた。
裁判に巻き込まれたり、刑事事件に発展しそうなことまでたくさんあったけれど、
今思えば経営者にとってもっとも大切なのは、
「何を成し遂げたいのか」
という情熱だと思う。
あの当時の情熱はまだ成し遂げたい対象もよくわかっていなかったけれど、
今はかなり明確に自分がやりたいことをイメージできるようになっている。
8年近く前、安本隆晴先生に出会った。
ユニクロやアスクル、リンクセオリーなど名だたる優良企業を上々に導いた先生。
当時無知すぎてユニクロやらアスクルがどういったすごい会社か全く知らなかった。
ただ、まるで「僕の会社を見てきたかのように」鋭い指摘をされる先生の洞察力に、
とても驚いたのを印象深く覚えている。
今、僕が心から経営の先生と呼べる方は安本隆晴先生を置いて他にない。
そして、そのような恩師に出会えた自分の運命をとてもラッキーだと思っている。
はっきり言えることだけれど、先生との出会いがなければ、今の長岡生コンは絶対にない。
情熱を持っている人は多くいる。
成し遂げたいイメージを明確に持っている人だって同じくらい多いだろうし、
その目はとても輝いているけれど、
それを達成する人
は数%なんじゃないか?
ヤマト運輸の創業者小倉昌男が著した「経営学」に経営を定義づけるくだりがある。
「社会のために貢献したい。自分の才能を困っている誰かのために発揮したい。そう思っている人の想いをきちんと形にする道具」
それが、経営。
そんな意味だったと思う。
感じていたり、問題意識を持っているだけじゃなく、
それを実際の形にするためには、現実的なプロセスが存在する。
ものの形には、「それができる理由」が残酷なくらい存在する。
情熱や強い想いが、レール(枠組み)にはまって仕組みとして動き出してこそ、
きちんとした形で誰かの役に立つ。
その意義をまだ若かった僕に教えてくれた恩人でもあるし、
また、その手段である経営という体系的知識を学ばせてくれた人でもある。
大学を卒業して、突如つぶれ掛けの田舎の会社を継いだ僕には、
どこかの会社で当たり前に運用されている体系的仕組み(会議やら決裁ルールやらなにやら)が、
まるで分らなかった。
「会議?なんじゃそれ?」
と運転手控室に大の字に寝そべった屈強な運転手にすごまれたことだってある。
「稟議?食えるのか?」
「寝言はいいから、生コン売ってこい」
そんな会社だった。
友人たちは有名企業に入る人も多く、なんだかキラキラして見えて、
僕はわけのわからない怖いおじさんたちに脅されたりしていた。
そんな中でも折れずにそして安本先生に出会うことができて本当に幸福だった。
先生に頼るわけではなく、
「自分の頭で考えて実行する習慣を身に着ける」
それが安本隆晴先生からいただいた宝物だ。
あれから8年、第1期未来経営塾も卒業でき、今も同期の仲間たちの活躍に刺激を受けながら、
安本先生から学んだ様々なことを実践する毎日。
そんな安本先生に、50周年記念誌のインタビュー特集に応じてもらえ、
これまで僕たち長岡生コンクリートを支えてくれた工場や、
今や完成間近の新設工場を視察していただき、
たっぷり経営について伺うことができた。
その内容はNR Times10周年記念の時に発表予定だが、
安本先生が顧問をし衣料品業界にイノベーションを起こした、
「ユニクロがかすむくらいイノベーション」
を僕たちが実現することで先生へのご恩返しとしたい。
まじで。
宮本充也