2020/12/03
【静岡】「新しいものに対して《はい》または《YES》で応える企業風土は55年目」水中不分離コンクリート
伊豆半島では実にバリエーション豊富な生コンクリートが楽しめる。駿河湾と相模湾の間にあり、天城山、箱根山などを望み、一級河川狩野川が南から北へ流れ、日本の大動脈国道1号線や東名・新東名高速道路、そして新幹線の駅がある。そんな立地では、建築土木、さまざまな用途に用いられる様々な生コンクリートが必要とされる。
水中不分離コンクリート出荷しました
朝6時着を指定されれば出荷は当然5時台となる。
マリーナ敷地の地下に燃料タンクを設置するための基礎に用いられるコンクリート。
海岸に面しており、掘削すれば海水が入り込んでくる。
干潮時に生コンを打設して満潮に晒されるより、満潮時に水中不分離コンで施工をして干潮を迎える方がいいという判断でこの時間帯に注文が入った。
日本全国津々浦々いろいろあるだろうけれど、水中不分離コンを年中出荷している工場も珍しいのではないか。
こちらは水中不分離コンを水中不分離コンたらしめる増粘剤。
このネバネバが多少の波に晒されても水中で生コンクリートが分離しないよう作用する。
増粘剤はこうしてプラント直下で生コン車の中に直接投入されて混練される。
この時期、早朝の作業は相当応える。
荷下ろしの後もこのネバネバを除去するのに大変な作業が待っている。
仲間達の熱意に感謝するとともに、これこそが長岡生コンクリート、そして長岡さくら工場の強みなんだと改めて確信する。
どんな生コンクリートにも「はい」または「YES」で応える企業風土。
たまたま土地に恵まれていたというのもあるかもしれない。
海に囲まれ、一級河川は暴れ、山は荒れ、三島や沼津に行けばそこそこの規模の建築もある。
土木、建築問わず。
土木の中でも、鉄道、港湾、河川、道路問わず。
いろんな種類のコンクリート構造物がこの土地では必要とされる。
鉄道があるということはつまり夜間工事だって必要とされる。
日本でも有数のバリエーション豊富な生コンクリートが必要とされる土地ということができるのではないか。
「うちは土木が9割だね」
とか、
「ほとんど、建築。土木なんてほとんど出荷しないよ」
なんて生コン製造者が結構いることに以前驚いたことがある。
そして、長岡さくら工場の出荷する生コンクリートの土木と建築の比率はなんと、
50:50
見事日本の縮図と言って良い事業環境。
そんなだから、求められる生コンクリートも、一般には「特殊」と呼ばれるものが多い。
(比較的温暖な伊豆半島でも山間部では冬期寒中コンクリートが求められることもある)。
ただ、当の本人たちにしてみれば、毎度特殊、つまり、もはや特殊じゃないってことになる。
さらに、幸か不幸か、地方の生コン屋さんあるあるかもしれないけど、出荷先件数のほとんどは小口・小型、小規模案件。
とにかく現場数が多い。
個人のお客様をとても大切にしている。
「大口に1日300m3どば〜っと出荷したら終わり」
みたいな業態ではないから、いちいちがとても手間がかかる。
言葉は悪いが「面倒くさい」の生コンが当たり前。
毎度面倒臭いのであれば、それはもはや面倒臭いではなくなる。
普通になる笑。
そんな事業環境、そんな生コン工場だったから、透水性コンクリート《ドライテック》も生まれたのかもしれない。
何せ、「面倒臭い」とか「特殊」という感覚で生コンクリートに接していないのだ。
とにかく、新しいものに対して「はい」または「YES」つまり肯定から入る企業風土が55年目を迎える長岡生コンクリートの精神なのだ。
15年以上前に出会った透水性コンクリート。
何も、面倒ではなかったし、何も奇異なものではなかった。
面白そうだから、やってみよう。
そんな発想しかなかった。
そして、その透水性コンクリート《ドライテック》は2020年の今年グッドデザイン賞金賞・経済産業大臣賞の栄冠に輝いた。
日本の生コン産業ではその名を知らない人がいないほど有名になった。
今回仲間達からメッセンジャーグループに共有されるやりとりを見ていて思った。
「これぞ、僕たちの最大の強み。0.5m3に魂を燃やせ。現場至上主義」
これが、僕たちのエンジン。
それを55年も続けてきたのだ。
これからも、この強みを常に大切にして、さらに磨き込んでいきたい。
生コンクリートに面倒くさいとか特殊とかはないのだ。
僕たちの仕事は「求められているものを届ける」以上だ。
求められているから、僕たち生コン産業はその存在を許されている。
自分たちがやりたくないからってやらないでいたら、もう生コン産業には衰退しかない。
いわゆる特殊コンクリートに積極果敢に取り組む仲間たちを僕はとても尊敬している。
宮本充也