2021/03/22
「世界の要請に従って変化するプロダクトの価値」(週刊生コン 2021/03/22)

ポーラスコンクリート舗装を始めたばかりの頃は、「水を透すこと」が価値だと信じて疑わなかった。そのエゴを世界に押し売りして歩く毎日に次第に聞こえてくる世界の要請。「世界の要請に従って変化するプロダクトの価値」。エゴではなく、世界が何を求めているかを大切にしよう。(週刊生コン 2021/03/22)
水を透すからCO2を収容するへ
続ける、ということはとても偉大なことのように思う。
ブログを毎日3本365日6年目。
ポーラスコンクリート(ドライテック)に関していえば16年目。
濃淡はあれど、あきらめず、今日まで毎日続けてきた。
まだ若く経験も浅かった20代の僕にとってポーラスコンクリートの価値は「水を透す」ことのみにあった。
普通、コンクリートは水を透さない。
そのギャップ、その性能が価値だと信じ、若さと行動力を武器に、その価値の伝導を始めた。
今となってはエゴの押し売りと言っていい。
(そのプロダクトの普及を通して会社を成長させたいというエゴ)
そして、購入者(施工者)はコンクリートが水を透すことに価値を見出さなかった。
彼らが欲しかったのはそんなものじゃなかった。
これまでの土間コンの常識
- ブリーディングや仕上げなどで作業が1日仕事となる
- 左官屋さんと生コン屋さんの予定が合わず工期がずれる
- メッシュ配筋施工の面倒と打設中の足元の面倒
- いつも頭を悩ませる水勾配の問題
- 土間コン表面に発生する「色むら」と「ひび割れ」でお施主さんとトラブル
- そのほか面倒くさいが沢山
新しい土間コンの常識
- 夕方から打てる土間コン→完成までたったの30分(住宅外構)
- 午後なら生コン屋さんの予定も入りやすい
- 水勾配を考えなくてもいい、透水性コンクリート
- メッシュ配筋の設置不要、打設作業も楽
- ペーストがないから「色むら」がない「ひび割れ」が見えない
- その他ハッピーが盛り沢山
(施工者が一体何が欲しいのかを現場に寄り添うことで感じ表現した対比)
今となってはエゴ(自分本位)は動機付けとしては非常に有効であるということを理解している。
だが、エゴだけではダメだった。
世界は特定の人物のエゴによって動くものではない。
世界に貢献しうるものが見出されるという本質を理解する。
そのためには、エゴだろうとなんだろうと、動機付け・エネルギーを駆使して世界と対峙する必要があった。
それが毎日30件以上の訪問営業やブログ毎日3本のようないわゆる「ジタバタ」。
ジタバタしていると上述の比較のように次第に世界がプロダクトに何を求めているかがわかるようになってくる。
施工者は水を透すことではなく、「早く終わる」「楽できる」「水勾配・排水に困らない」が欲しいのだ、と。
⚫︎先週の記事1: 《35,000円あげます》「ドライテック(透水性舗装)を採用すると役所から補助金が出る?」補助金・住宅エコポイント
施主が欲しいのは、施工者が欲しがる「早く終わる」でも「楽できる」でもない(「排水」は後になってニーズに気づくかもしれないが)。
安く、問題が生じない、庭の舗装という潜在的な価値が欲しいのだ。
ニーズが顕在化することはなかなかない。
ただ、各種行政が打ち出している補助金はそのニーズを喚起する、つまり「欲しい」価値になる。
価値とは受益者によって変化する。
その意味では僕たち担い手のしかるべき姿勢はプロダクトの価値を決めつけず、現場(世界)がそのプロダクトに何を求めているかを見つめそれを伝えられる形にして伝えることだ。
⚫︎先週の記事2: 「コンクリートを使わない」カーボンニュートラル社会を実現するための実装 #1
⚫︎先週の記事3: 「ポーラスコンクリート舗装の企業会計基準(LCC、減価償却)について」
⚫︎先週の記事4: 「2050年カーボンニュートラル」カーボンニュートラル社会を実現するための実装 #2
⚫︎先週の記事5: 「つけてた時計が高そうだった」カーボンニュートラル社会を実現するための実装 #3
⚫︎先週の記事6: 「テクノロジーは飽和している」カーボンニュートラル社会を実現するための実装 #4
まさかこんな価値が突然浮上するなんて16年前には想像し得なかった。
無論、その現象については知っていた。
中性化と言ってコンクリート構造物の表面から大気中のCO2と反応して炭酸カルシウムに変化する現象。
この現象により水と酸素が内部鉄筋に供給され発錆による堆積膨張でコンクリート構造物が破壊される。
「でもね、見方を変えるとコンクリートはCO2を固定化しているとも言えるんだよ」
ドライテック黎明期から僕の師匠のように行先を照らしてくれた恩人・元住友大阪セメントの渡辺夏也さんからそう聞いたことがある。
「2050年カーボンニュートラル」
大きく舵を切る現在、これまで忌み嫌われるべき中性化は転圧(無筋)コンクリート舗装の1であるポーラスコンクリート舗装の性能として突然に見出されることになる。
そこに、「水を透す」当初僕が見出していた価値はカケラも見当たらない。
この価値に到達できた理由はたった1つ。
続けてきたこと。
もし、10年以上前に勢いで受注して大炎上した1000m2のポーラスコンクリートでくらった赤字を苦にやめてしまっていたのなら。
もしも、あのクレームで事業を諦めてしまっていたら。
CO2収容性などというポーラスコンクリートの性能に気づくことはなかっただろう。
そもそも僕たちにポーラスコンクリートに取り組むきっかけを与えてくれた恩人はその数年後にさっさと諦めてしまった笑。
色んなことをいう人々を尻目に、僕たちは来る日も来る日も、生コン、そしてポーラスコンクリートを続けてきた。
誰か仕事を与えてくれる特定の大企業や行政の指図によるものじゃない。
内側からの創造的衝動ともいうべきものに突き動かされ今では生コン21年目となっている。
途中で多くの関係者と共同することもあった。
くっついては離れ、離れてはくっついてなんかも経験している。
出会いがあれば別れがある。
別れがあっても、また別の出会いがある。
⚫︎先週の記事7: 「匿名・ROM大歓迎!コンクリートオンラインサロン《夏子ンクリート》のススメ」
足を使った地道な人脈構築や、もう離れてしまったけどGNNのような生コングループにも参画していた。
いろんな別れや出会いはあっても、完全に生コン、ポーラスコンクリートから逃げてしまったことはない。
すると、世界の方から僕たちの扉を叩いてくるようになる。
たった16年続けていただけでいつしか僕たちは世界でも有数のポーラスコンクリート舗装に詳しい人であり企業となっている。
「世界の要請に従って変化するプロダクトの価値」
その変化を捉えられるのは諦めず続けてきた人にしかできない。
ぶれず、生コン。
続ければ続けるほど世界はその経験を必要とするようになる。
1年や2年ではダメだ。
続けてきた道のりを振り返ってみることで、これからもまだまだつづくだろう長く険しい道のりに一歩踏み出す勇気が湧いてくる。
やめちまったらそれまで。
せっかくここまできたのだ。
最後の1人になろうともやり通す覚悟で。
もし途中で消滅してしまってもきっと誰かにこの想いは継承されるはずだ。
脇目もふらず直進しよう。
(いい時も悪い時もあるからすぐに諦めたりやめてしまったりせずグッと堪えるといつかきっといいことがあるはず)
宮本充也