2020/03/05
「自分で自分の給与を決める。コミットメントを表明する」

生コンポータル運営会社長岡生コンクリートでは昨年より「自分で自分の給与を決める」を始めた。一見無秩序の始まりのようにも見えるかもしれないこの取り組み。改めてこの取り組みに寄せる僕の思いを記したい。
参考記事:「自分が自分を評価し自分で自分の報酬を決める」
「自分で自分の報酬を決める」理由と注意点
⚫︎そもそも評価なんて言葉が危うい
あまりにも「評価制度」というのが当たり前に流通しているが、そもそも特定の誰かによる「客観的評価」なんていうものはありえない。
どのような合議制であったとしても特定の誰かの評価(主観)である。
その特定の誰かにとっての、「優」「良」「可」「不可」だけであって、その評価はその人本来の魅力を表しているとは到底考えられない。
そのため、当社では評価制度を撤廃した。
⚫︎評価する側も大変
以前はそれなりの評価制度をこしらえて経営チームと呼ばれる特定の数名で一人一人の評価に臨んでいた。
評価される側も嫌だろうけど、評価する側の心理的負担も相当なものだ。
「もしかしたらその人には僕たちには見えていないだけでものすごい可能性があるかもしれないのに、それを見出すことなく10点から1点までの物差しに押し込めようとしていないだろうか?」
こんな不安にいつも苛まれて来た。
⚫︎唯一絶対の評価者は市場と顧客
社内でどんな評判があっても、社長のお気に入りだったとしても、会社の評価制度では「優」だったとしても、それは市場と顧客の評価ではない。
会社という器は市場と顧客(社会)に貢献することが求められている。
その貢献の結果が、「市場を創造し、売り上げと利益を生み出す」ことで測られる。
組織がその貢献を果たすために、組織の一員としての個人は自らが最も貢献できる分野を見出し実践をする。
その結果を評価する唯一の物差しが会計(KPI:Key Performance Indicator)となる。
つまり、「自分で自分を評価し自分で報酬を決める」の大前提として組織の会計に関する理解が必要となる。
「会社が儲かってるか儲かってないかよくわからんけど、今年は〜〜円欲しいです」
というわけにはいかない。
仮にそんな提示があったとしてもボランティアによるタスクフォース(給与の算定を協議する会議体)から待ったがかかるだろう。
⚫︎算定根拠となるコミットメントについて
つまり、会計に対する理解をきちんと深めた上で、その会計目標に対する自らの貢献を明文化(コミットメント)する。
増収をもたらす要因(例えば売り上げの件数を増やす等)であったり、経営合理化(コスト削減)に対する具体的な行動目標であったり。
そのコミットメントは会計との因果関係が不明瞭なものでは無く、会計数字と明確に紐づいている(あるいは過去の経験側から相当の因果関係が示されている)ものでなくてはならない。
「毎日腕立て伏せを100回やるから給料増やしてください」
みたいなコミットメントであってはならない。
ましてや「生活が苦しいので今期はちょっとあげて欲しい」というのも違う。
生活は僕にもあなたにも誰にだってある。
その生活を理由に給与を算定するのは自主的な選択とは言えない。
⚫︎決まった給与は全てガラス張りとされる
上述のプロセスに基づいて全ての個人の希望額は全員に対してオープンにされる。
残念な事に今期特定の誰かの報酬に関して「僕よりあいつが貰ってるのはおかしい」というような陰口があったと聞いている。
この態度は主体的に組織に貢献しているとはいえない。
もしそうした疑義があるのであれば話しやすい組織の誰かに陰口するのではなく、タスクフォースなど報酬が協議される場で自らの意見を提示すべきだ。
それを怠ったその個人は組織に貢献していないということになる。
社会貢献は組織はもちろんいずれの個人でも行う権利のあるものだからだ。
生コンポータル(長岡生コンクリート)では今期55期(2020/03/01〜)も「自分で自分の給与を決める」を推進している。
代表取締役の僕は他の誰よりも優れているから他の誰かを評価したり決めつけたりその人の行動を決めたりするのではない。
単に代表取締役役であって組織の最終的な責任者にすぎない。
だから僕は一切他人を評価しない。
「それは社長としておかしいでしょう!」と言われることもあるかもしれないが、それはその人の僕に対する評価であって市場と顧客の評価ではない。
その上で僕が組織の中でやることは、「信頼し、感謝する。(他人を)決めつけない。(他人の行動を)決めない。(自分のできる最大の貢献を)自分はやる。ひたすら続ける。良く生きる。役に立つ」ということだけだ。
一人一人が全ての現象を「自分ごと」として捉え主体的に行動を起こす。
会社にぶら下がったりサラリーマン根性丸出しでいられるほど社会は甘くない。
そんな社会にあって組織が最大の価値を創出するために始めた僕たちの答え。
「自分で自分の給与を決める。コミットメントを表明する」
宮本充也