2020/06/04
「現場最前線の工夫が世界に共有される時代」大里ブロック工業
所用で訪ねた大里ブロックには鉄人がいた。今も世界中のどこかで見出されないながらも仕事に誇りを持って素晴らしい成果を上げている多くの人たち・ラストワンマイルの存在がある。僕はこの時代に生きていることを心から嬉しく思う。「現場最前線の工夫が世界に共有される時代」。
それぞれの地域の現場最前線の工夫(大里ブロック)
⚫︎参考記事: 【茨城】「午前中は別の仕事してたよ」「アスファルトや土間コンと比べて透水性コンクリートに決めた」カナザワ・大里ブロック工業
昨日(2020/06/03)急遽施工が決まった透水性コンクリートの現場に立ち会った。
現場・現実・現物を大切にしたいと日頃から思っているが、大里ブロックの透水性コンクリート(生コン)納品の現場に立ち会って改めて現場の大切さを実感する。
それは、角田さんという主に配送(運転)を担当されている工夫だった。
以下で紹介する工夫はすべての生コン関係者にとって参考になるはずだ。
ただし、多くのこうした現場の工夫は見出されず知られずその場だけで埋れてきたのだと思う。
そう考えるとこうしたラストワンマイルの工夫が瞬時に世界に共有されることを実現しているインターネットと企業間連携の現代に仕事していることを心から嬉しく思う。
生コン排出用のレバーに取り付けられているのは百円均一で購入できるカーテンレール。
不思議な光景にしばらく視線を注いでいるとはたと合点がいく。
カーテンレールでレバー操作することでシュートからレバーまでのほんの2〜3mの移動が不要になる。
僕自身運転業務に主に携わっていた頃経験がある。
特に一輪車やバケットへの荷下ろしの時にはブレードの様子が視認できないレバーからでは適量を荷下ろしするのはそこそこの経験が必要となる。
入れすぎたり、少なすぎたりすればそれは現場の方の手を煩わせる。
時間もかかる。
また、生コンは流動体だからシュートで見張っていないとポタポタと垂れてしまうことも懸念される。
そうなれば現場にも迷惑がかかるし荷下ろしの時間も嵩んでしまう。
この工夫ではほんの2〜3mとはいえ1回あたり10秒程度を時短できる。
小さな時短のように思われるかもしれないが、3m2もの材料を一輪車に荷下ろしするのに一体何回の操作が必要かを考えればこの小さい工夫の偉大さがわかるはずだ。
「シュートとレバーの行ったり来たりの煩わしさから解放された結果こんな体格になっちゃった(笑)」
発明の主はご自身の体型をおどけて見せては笑顔をこぼす。
こちらは生コン車に装備されているダクトホース。
マフラーの排気ガスで粉塵が舞わないように地面を濡らしていたきめ細やかな角田さんのことだ。
きっとこのダクトで排気ガスがお客様の方に向けられないように、あるいは地面の粉塵を舞い散らせないように、そんな工夫なのかと思っていたら、そこにはもっと奥深い配慮があった。
「排気ガスを抑制する意図ももちろんありますが、冬期凍結してしまいがちな水ポンプやホースを排気ガスで温める(ホースをダクトホースの中に仕舞い込む)ことで解凍のための時間を短縮できます。また、寒い現場で暖を取ることもできるんですよ(笑)」
南部とはいえ茨城県の冬の寒さは生コン設備の水回りを凍らせる。
そのことは運転者に多くの労務を貸し、貴重な時間を奪う。
その現場の困ったに自ら変化する。
角田さんが編み出したこうした現場の工夫はその土地、その工場だけで埋れさせていいはずがない。
こうしたちょっとした、それでもとても偉大な工夫を埋もれさせず、インターネットや企業間連携を通じて全国の生コンラストワンマイルに共有することで数千、数万時間の時短を達成することができるはずだ。
もちろん、誰もがその工夫に取り組むことはないだろう。
「仕事は必要最低限。」
「余計なことはしなくていいさ。」
「時間が来れば家に帰るだけ。」
「工夫なんかしない。」
そんな人たちを尻目に、角田さんのように目の前の課題に積極果敢に取り組むラストワンマイル。
きっと埋もれているだけで世界中に多くいるはず。
ちょっとした、それでも、偉大なる工夫はそんなラストワンマイルたちと瞬時に共有される。
それは一方通行ではなく、双方向に広がっていく。
世界中の角田さんのような人たちは情報がないだけでこうした工夫を知る由もなく苦しんでいる。
情報発信の手立てがないまま有意な工夫は埋れてしまう。
現場・現実・現物。
中央集権的な現場を理解しないいろんな規格やルールはいっぱいあるかもしれないが、それらは現場の現実とは程遠い的外れなものだったりする。
辺境で起きている素晴らしいことにこれからも真摯に向き合い、そこで起きている素晴らしいイノベーションに光を当てて、少しでも「生コンでいいこと」を世界と共有することによって、僕たち産業はもっともっと素晴らしいフィールドになるはずだ。
こうした才能が生まれ見出される大里ブロック工業の企業風土に改めて感動した。
宮本充也