2021/08/30
「完全にカーボンマイナスなコンクリートが生まれた1週間」(週刊生コン 2021/08/30)
「大地を削らない、汚さない、蓋しない、CO2を収容するコンクリート」は当社長岡生コンクリートのコーポレート・ステートメント。額に入れて飾っておくだけの詭弁じゃない。ガチでコミットすべき必達目標。先週1週間は、完全にカーボンマイナスなコンクリートが生まれた。(週刊生コン 2021/08/30)
カーボンマイナスコンクリート
⚫︎先週の記事1: 《0.5m3に魂を燃やせ》「ゴミ焼却場・アスファルトプラントが近所にある生コン工場集まれ!」エコタンカル
とあるスーパーゼネコンの役員は慈しみ深い方だ。
生コン産業の展望を悲観されている。
ものづくりのベースは素材にあって、水の次に流通する材料生コンクリートの担い手たる生コン工場の健全な経営が必要であると説く。
トップゼネコンの役員がそうおっしゃってくれるのだから心強い。
そして、僕のこれまでのライフワーク、生コン工場との垣根や枠組みを超越した連携についてもことあるごとに鼓舞してくださってきた。
そんな恩人からの紹介を受けて生まれたご縁、そのプロダクトが、エコタンカルだ。
生コン工場などで発生する上澄水にゴミ焼却場やアスファルトプラントで発生する排気を封入することでCO2を発生場所で固定化する技術。
生コン工場は発生した上澄水を生コン車でゴミ焼却場やアスファルトプラントに持ち込む。
設置されているブレンド設備に投入する。
透明な液体は次第に白濁色に変化する。
液体の中で炭酸カルシウムが生成されている証拠だ。
その白濁水を濾してさらに天日乾燥させることで得られるのがエコタンカル。
(ちなみに、濾した後の透明な水は上澄水を運び込んだ生コン車が持ち帰って練り水に用いれば、貴重な水資源を捨てることもない。)
つまり、まあ、ありていに言えば、炭酸カルシウム。
炭酸カルシウムは食品から工業まで幅広く利用される汎用的な物質。
身近なところではモルタルの粘性を除去したりなどの用途で用いられている。
そんな炭酸カルシウムは僕たち産業ではフィラーとか石粉と呼ばれ混和材料として幅広く用いられてもいる。
地場産業生コン工場に新しい役割を付すような事件だと僕は考えている。
地場で発生したCO2を地場産業生コンが固定化する。
地産地消型カーボンマイナス。
さらに、その炭酸カルシウムの出口(用途)をも、生コン工場が提示するのだから、つまりCO2固定化の地元のハブとしての新しくて重要な役割を求められているのだ。
⚫︎先週の記事2: 《雑草革命》「防草・透水コンクリ舗装 "オワコン" 1号・2号 発信!」 #1
⚫︎先週の記事3: 《雑草革命》「防草・透水コンクリ舗装 "オワコン" 1号・2号 発信!」 #2
⚫︎先週の記事4: 大地を削らない、汚さない、蓋しない、CO2を収容するコンクリート
陽光物産との雑談の中で生まれたプロダクトが防草・透水コンクリ "オワコン" だ。
単純な話で、残コン由来や解体コンクリート塊由来の再生骨材100%で製造された生コンに残コンソリューション(Re-con ZERO など)をドライテックにおけるF材さながらに投入・攪拌することで出来上がる団粒化された再生骨材コンクリートのことだ。
(残コン由来の骨材を用いることで、場内で突如発生した骨材はカーボン0ということができる)
この団粒化コンクリートを舗装コンクリートとしてドライテックの施工要領で施工する。
すると出来上がる、ポーラス状で水も空気も流通するコンクリート舗装。
点接着ではなく、面接着で構成されている分、強度も確保されやすい。
転圧コンクリートであることから配筋は必要としない。
つまり、いくらでも中性化(CO2の固定化)を許す。
空気も水も流通するのだからつまりCO2の固定化量も相当に上る。
さらに、配合自由度が特徴だ。
上述のエコタンカルをいくらでもぶちこむことができる。
1kgあたり440gものCO2を固定化しているというのだから、仮に100kg配合すれば44kgのCO2を固定化したスーパーカーボンマイナスコンクリートということができる。
さらに、ジオポリマーなど、先端のコンクリートテックでは「セメントを使用しないで固まるコンクリート」が実装されるようになり始めている。
つまり、数ある産業の中で最もCO2を輩出している産業としての不名誉を脱することのできる生コンクリートの誕生だ。
生コン産業が世界のCO2抑制という問題に具体的な道筋を示すことができる。
市場領域は「舗装」だ。
95:5で大きく水を開けられているコンクリート舗装は、往時石油生成の過程で発生してしまう残渣(ごみ)の受け入れ先として「舗装」に着目したように。
産業が発生させてしまったCO2(ごみ)の受け入れ先として、この度新たに「舗装」に注目したい。
建築でも、土木でもない。
新たな市場領域、「舗装」。
「大地を削らない、汚さない、蓋しない、CO2を収容するコンクリート」
これは、詭弁でも額に飾って眺めておくものでもない。
ガチでコミットすべきコーポレート・ステートメントとしてここ1〜2年の間に当社長岡生コンクリートで意識されるようになった言葉だ。
生コンは「水の次に流通する材料」と言われている。
環境インパクトが最も大きいマテリアルに数えられる生コンの担い手、コンクリート産業の底流にある文脈をアップグレードする。
地場産業生コンが世界の飢餓(CO2という問題)を癒すことになる。
これが先週1週間に得られた大いなる気づき。
「完全にカーボンマイナスなコンクリートが生まれた1週間」
明日、そのコンクリート、 "オワコン" の試験施工が行われる。
施工されたオワコンはそのまま透水性能がわかる展示品として生コンポータルに設置されることになっている。
幸か不幸か生コンを職業に選んで21年が経過しいよいよ産業人としての使命のようなものの輪郭が朧げながら浮かび上がる。
僕はその輪郭にきちんとした実線を与えて具現化しなければならない。
このコンクリートの普及に心血を注ぐことが僕のすべきことだと思う。
宮本充也






