2020/06/08
「技術の研鑽だけが評価を得た時代は終わった」週刊生コン 2020/06/08

「いいものを作れば売れる」こうした考え方が蔓延っている。技術を研鑽すれば、きっといつかは努力は報われる。これはもはや妄念と言っていい。生コン20年。技術・製品の普及を通して分かりかけてきたこと。「技術の研鑽だけが評価を得た時代は終わった」。
【静岡】「いいものは売れない」「テクノロジーは飽和している。必要なのは産業の再定義」コンクリート舗装が売れない本当の理由
https://www.nr-mix.co.jp/dry_tech/blog/jis45.html
生コンの歴史も70年以上。
あらゆる産業が縦割り・階層的に整理され社会を形成している。
産業と産業は分断され区分されている。
「あんこ屋を子会社にもつまんじゅう屋にあんこに変わるイノベティブな製品を売り込んでも買ってもらえない」
区分され成立している産業の中では求められるものが画一化される。
あんこよりも俄然美味しく消費者を魅了するであろう「それ」はまんじゅう業界では受け入れられない。
その開発にどれだけ心血を注いでどれほど長年打ち込んできたかは無関係だ。
個別技術がいかにイノベティブであってもそれは売れる売れないには関係ない。
透水性コンクリートの普及に携わった15年で分かりかけてきたこと。
「技術の研鑽だけが評価を得た時代は終わった」
「地球は困っても《産業は困っていない》コンクリート再生」1.1 本研究の背景(博士号取得への道 #12)
https://www.nr-mix.co.jp/econ/blog/11_12.html
同様のことは同一の産業の中でも言える。
前提としている文脈に沿わないイノベーションは産業に求められない。
よって、見出されず、汎用化はされない。
営業力があるとか無いとかでは無い。
情報発信やマーケティングの問題ですらない。
そもそもが闘うフィールドの問題だ。
バスケットコートでバレーボールをするようなものだ。
どれほどジャンピングサーブに磨きをかけたとしてもその努力は評価されない。
バスケットというルールの中で求められる技術をもってのみ個別の努力は評価される。
どれほど地球環境や全体がその努力を求めていたとしても、産業が指定しているルールに恭順でなければどんな努力も報われない。
透水性コンクリートや環境(再生)コンクリートを通して蓄積してきた努力は現在のルールでは見出されないようになっているのだ。
「バズった《土間コン》ドライテック」庭ファン
https://www.nr-mix.co.jp/dry_tech/blog/post_1150.html
既存の産業の統制が届かない分野がある。
権威や資本の目が届かない分野、辺境・ボトムライン。
無限に広がるインターネットという空間で無闇な情報発信(毎日ブログ3本以上、各種SNSでの共有)も5年目となる。
既存産業では相手にされなかった透水性コンクリートが今急速に普及を始めた。
産業の統制が及ばない辺境ではルール(規格)でがんじがらめになることはなく本来の価値が見出される。
とある大ゼネコンの購買部長は自分の家ではドライテックを購入するけど会社としては採用しない。
辺境の想いが全体に共有されづらい産業構造を象徴した一幕だ。
歴史ある産業では規制や規格でプロセスががんじがらめとなり、イノベティブな製品が適切に評価されづらい。
イノベティブであることを認知するための受け皿としての産業構造であってこそ、その製品はイノベティブたる評価を得る。
この現実の前で製品そのものの価値を高めたところで評価は限定的だ。
必要なのは、産業の再定義。
辺境で生み出されているイノベーションを適切に知覚するための産業のあり方。
「花王の製品はどの店でも買える」【生コン】インターネットと企業間連携が拓くBtoC市場
https://www.nr-mix.co.jp/dry_tech/blog/btoc_2.html
産業の中枢と市場の間に複数の階層が存在する産業構造。
メーカー、1次卸、2次、3次、小売、そして顧客。
生コンも含めてあらゆる産業が多かれ少なかれ情報格差を前提とした階層構造を有している。
消費者に届くまでに数多く存在する階層経る過程で顧客の要望(市場と顧客の評価)は減衰してものづくりの現場に届く。
製品や技術の評価とは書斎にこもる学者や研究者らではなく「売れる」という事実によってのみ下される。
どんなに性能を高めても「売れる」ものでなければ自己満足だ。
売れもしない研究に身をやつしていても学会で威張っていられるのは、産業が内向的である証拠と言っていい。
どれほどSNSで自社製品の特徴を主張し、それを理解しない顧客をなじろうとも、それらは負け犬の遠吠えだ。
どんなに自己評価でイノベティブであっても、「売れる」という事実によってのみ技術や製品は評価される。
その意味で、今求められるのはルールので出所となる産業そのもののあり方の変革だ。
ファーストリテイリング社長の柳井正さんの至言「唯一絶対の評価者は市場と顧客」。
「売れる」こそ市場と顧客の評価。
その意味では現在の産業構造は市場と顧客の評価を適切に代行しているとは言い難い。
「売れる」つまり、顧客をスタート地点として自社の製品に立ち戻る。
残念ながら顧客が求めていることと産業が求めていることは乖離している。
本当に顧客に支持される価値を創造するためには、産業を0ベースで捉え直す「再定義」が必要となる。
かと言って既存産業が不要であるということにはならない。
必要なのは産業を構成しているピースを新しい文脈で再構築すること。
シームレスな産業構造を模索すること。
市場と顧客の声に即応できる新しい産業のあり方。
「技術の研鑽だけが評価を得た時代は終わった」
これからのものづくりをリードするのはテクノロジーではなくコンセプトだ。
宮本充也