2022/02/06
「超特殊コンクリート《granZ con》が果たして社会実装を見るために必要なこと」

高炉スラグ微粉末、高炉スラグ骨材、製鋼スラグ、海水・上澄水、re-con ZERO EVOで製造される造粒ポーラスコンクリートgranZ conは誕生した。当社透水性コンクリート事業、ドライウェイ、ドライテック、そして、オワコンで経験したこと。社会実装のために必要なこと。
テクノロジーは飽和している
⚫︎参考記事1: 《セメントフリー》「海水とスラグだけで作った造粒ポーラスコンクリート」granZ concrete
⚫︎参考記事2: granZ-con 実機試験練り - 2022/02/04@長岡生コンクリート -
プロダクト普及に間する僕の座右の銘は「テクノロジーは飽和している」だ。
世の中に必要とされているからといって、それはひとりでに売れていくものではない。
散々「セールス」という分野で拗らせてきた人生を振り返ってもつくづくそう思う。
いいものや、素晴らしい製品が必ずしも売れるのではない。
売れる、というとなんだか卑しいように思われるのであれば、社会実装などと4字熟語に置き換えよう。
当社透水性コンクリート事業のきっかけとなったプロダクトはドライウェイだった。
⚫︎参考:https://www.rande.co.jp/dryway.php
非常に勉強になった。
「テクノロジーは飽和している」に辿り着いたのは、このプロダクトのおかげだ。
なぜ、当社は、このプロダクトを売ることができなかったのか。
この問いが重要だった。
現在世界に流通するあらゆるプロダクトがそうであるように、当初僕たちはこのドライウェイを「いいもの」として世に送り出そうとしていた。
「いいもの」
超高強度(曲げ強度4.5N以上)、7号砕石(5mmアンダー)を標準とすることで粒の細かい見た目、厚み5cmで掘削・残土処分などの省力化、顔料を配合することによる意匠性。
ぱっと見、「何が悪いの?いいじゃん、それで」と思われるかもしれないが、これが落とし穴だった。
まず、高強度を確保するために、1m3のドライウェイを製造するのに、セメントの他に20kg袋のキーバインダーをプラントで手投入する必要があった。
また、7号砕石は通常生コン工場においては標準品ではないため、貯蔵ビンをドライウェイのためにわざわざ開ける必要があった。
厚みを5cmで理論上強度の面では問題がなかったのだったが、乾湿の繰り返しによるコンクリート板の挙動が制御できず施工端部が跳ね上がるなどの問題が生じた。
さらには、顔料をプラントで投入するということで、ドライウェイを練るとその次の生コンを製造する前にプラント設備全般を洗浄する必要もある。
これら一連の作業が生コン工場職員を疲弊させたことは想像に難くない。
つまり、生コン工場にとっては「ドライウェイ、何様だお前、あ?」という存在だったわけだ。
僕たちが勝手に「いいもの」と信じて疑わないそれは、結果僕たち自身生コン工場の共感を得ることがなかった。
そして、生まれたのが、フッコーと共同開発した「ドライテック」だった。
既におよその方々がご存知のように、このドライテックはドライウェイの反省点を全て網羅したプロダクトだ。
曲げ強度はせいぜい2.5N(簡易舗装のレベル)で十分だし、だから、土間コン同様の100mmも厚さを確保しておけば問題ないし、顔料は入れないでトップコートを標準とし、さらには7号なんか求められてもいないのに標準にせず、元々の生コン工場が貯蔵ビンにストックしてある骨材(2005や1505、あるいは砂利)を標準とした。
その後、ドライテックが普及していることは誰もが知るところとなっている。
最近登場しているオワコンもさらに製造者らにとって共感を得やすい仕様となっている。
そこに気づくまでに多くを失ったが、それ以上に得たものは大きい。
その経験は、完全環境負荷0のgranZ conに生かされることとなる。
超特殊コンクリートgranZ conはこのままでは売れない
さて、いいものというよりも、「革命的に素晴らしい」granZ conは上記の理屈から言えば、売れない。
高炉スラグ微粉末なんか常設している生コン工場は皆無。
高炉スラグ骨材までならともかく、製鋼スラグ骨材なんかこないだ僕は初めて見た。
海水なんかを生コン屋にはない(という意味では、上澄水を採用するのはありよりのあり)。
そんな、異例づくしを要求するgranZ conでも、おそらくスペック・インまでは問題なく進むだろう。
これは僕の経験だが、スペック・インは頑張ればいける。
なぜって、僕のような一介のしがない生コン屋でも足を使ってせっせと営業していた頃にはそこそこスペック・イン(設計折り込み)ができていたくらいだ。
例えば、奥村組土木工業や横浜国立大学などのブランドネームがつけば、さらに順調に進むだろう。
一方、売れない。
いや、生コン工場が梯子を外す。
受注したゼネコンなど施工者は途方に暮れる。
練ってくれない。
現場承諾で、「実際に買える他の生コンでいいですか?」みたいなことになる。
発注者としても民民取引が成立しないということであれば変更を認めざるを得ない。
結果、granZ conは果たして世界の景色を変えるに至らない。
大きいロットで夜間や休日など生コン出荷がない時にから練りでgranZ conを製造しトンパックに詰めておく
(出典:https://fujimotogumi.com/tips/post_152.html)
よく、緊急工事とか、あるいは地盤改良(セメント改良)なんかだと登場する入れ物「トンパック」「フレコンパック」を利用する。
生コン工場に「granZ conを1m3練ってください」という依頼は直ちに「他当たってください」という返事に見舞われること必至だ。
例えば、30m3〜、50m3〜、100m3などまとまったロットをバッチ生産するなら、採算性も生まれる。
それに、休日や夜間など生コン製造が通常されない時間帯での製造をすることでプラントの操業度も高まる。
また、granZ conはセメントを用いていないため、「風邪をひく」と呼ばれるセメントの劣化による効果不良も心配ない。
生コン工場にドライミックスでトンパックにプレパックされたgranZ conを備蓄しておく。
発生現場にトンパックが配送される。
現場で海水(あるいは上澄水)を投入することで、granZ conは完成する。
先ほどブログでgranZ conを反芻していてこんな仮説が生まれた。
是非とも検証してみたい。
まだ、関係者らにシェアしたばかりの生まれたてほやほやのアイデアだが、オワコンが破竹の勢いで実装されていることからも分かるように、インターネットの現代変化のスピードは指数関数の軌跡で成長している。
もしかしたら、いとも簡単にそれが実現してしまうかもしれない。
もちろん、田舎の山奥の生コン屋(長岡生コンクリート)の独りよがりではダメだ。
施工者、研究機関、発注者、関わるすべての人たちにとって有益な多角化を図ることで循環が生まれ、プロダクトは果たして社会実装を見る。
ラストワンマイルはもちろん、僕たち製造・施工者なのだけど。
若き大学院生が指揮をするgranZ con。
僕はよくある「メディアには注目されて、すごい賞とかたくさん取ったんだけど、結局売れない」そんなプロダクトにはしたくない。
これまでの生コンポータルが蓄積してきた経験をもとに彼の背中を強く押したい。
テクノロジーは飽和している。
いいものが売れるんだったら、流通する生コンの大半は再生骨材コンクリートになっているはずだし、歴史あるポーラスコンクリートだって多くのシーンで採用されているはずだ。
でも、そうはなっていない。
なぜか?
この問いに対する答えを僕たちはこれから楽しく作り上げていく。
宮本充也
オワコン工事一式原価例
(生コンビニ仕入れ配送料無料)
◆施工面積40m2
材料費 (配送料無料) | 80,000円 | 40m2 x 0.05m(50mm厚) = 2m3 x 40,000円(単価) |
---|---|---|
工事費 | 70,000円 | 2名 x 35,000円(日当) |
諸経費 | 7,500円 | 5% x (80,000円(材料) + 70,000円(工事)) |
合 計 | 157,500円 |
※単価:165,000円/40m2
= 3,938円/m2
◆施工面積60m2
材料費 (配送料無料) | 120,000円 | 60m2 x 0.05m(50mm厚) = 3m3 x 40,000円(単価) |
---|---|---|
工事費 | 95,000円 | 2名 x 35,000円(日当) + 1名 x 25,000円(手許) |
諸経費 | 10,750円 | 5% x (120,000円(材料) + 95,000円(工事)) |
合 計 | 225,750円 |
※単価:225,750円/60m2
= 3,763円/m2
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