長岡生コンクリート

2022/06/07

《解説》有限会社小島建材店がJIS規格に適合しない疑いのあるコンクリートを出荷した事案について(関東地方整備局)

このところ騒然となっている小島建材店のJIS取り消しが発表されたのは今年の2月21日。昨日6月6日に今度は国土交通省(関東地方整備局)から掲題の発表があった。個人的には「もう少し早く動けたんじゃね?」と思わないでもないがそれでも事態が収束に向かうことを祈るばかりだ。なんで問題が大きくなってから動くんだよ。



切り落とすのではなく解決へ全員協力

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今、まさにめざまし8で小島建材店のニュースが報じられている。

被害者(社会全体)と加害者(小島建材)という単純な構図として報じてはならない。

途中まであたかも「生コン屋が丸儲けするために残コンを使ってます」という論調に暴走し始めていた。

最初の方一瞬出てきた僕だったが、「あれ?これでおしまい?」と思いきや、今回の事件に関する背景についてのコメントがきちんと紹介されていてホッと胸を撫で下ろしているところだ。

それにしても、無精髭とか髪の毛とか、もう少しちゃんとした格好で取材を受ければよかった。

で、JIS規格が話題になっている。

コメンテーターが「JISだから信じてただろうにこれは気の毒」ということだが、まさにそうだろう、家主やハウスメーカーにとっては気の毒な話だ。

ところで、ミウラっていうコメンテーターなかなか鋭い。

「どうしてこういうことが起こったのか?」

「1社の特殊な状況とはとても思えない」

「国民生活に与える影響はすごい大きい」

後、ベラベラ喋っている外国人、ちょっと単細胞さんのようだ。

ルールを違反したらダメ、ってのは当たり前で、ミウラが言っているように「どうしてこういうことが起こったのか?」という視点が大切だ。

「努力をする会社が報われるべき」とか当然のことをおっしゃっておられるが、独占禁止法適応除外の生コンでは「出る杭は打たれる」わけで、前にも後ろにも行けないのが現実だ。

素人がペラペラわかったような口聞いてんじゃねえという気持ちでいっぱいです。


さて、これ、JIS A 5308にとって岐路として行きたい。

生コンが関わる全ての人たちが当事者にならなければならない。

社会の目(メディア)、発注機関、建設コンサル、設計事務所、ゼネコン、工務店、生コン組合、流通(商社)、生コン工場、セメントメーカー、骨材メーカー、その他全ての人たちだ。

「残コンが問題になっているなんて知らなかった」なんて言わせない。

多かれ少なかれ、関わっていれば残コンのことは目や耳にしてきたはずだ。

今回これだけの事件に発展してしまった。

建設・コンクリートは長年の垢をここで落とさねばならない。

これまでまかり通ってきたことはもう許されない。



生コン工場の大半は中小零細企業なんです

コメンテータの外国人が単純な構図にまとめようとしていたが、あんたの母国はそうかもしれんが日本は違う。

担い手の大半は当社も含めて売上が3〜5億とさほど大きくもない中小零細(町工場みたいなもん)で低迷し続ける建設市場にあって不遇を託っている惨めな存在だ。

この僕がいうのだから間違いない。

「真面目にやってる人がバカを見る」というよりも、現実は、「やってはいけないこととは思っていても、やらなければ来月の手形が落ちない」という切実な状況にある。

事実、関東でもまさに「残コン」が原因で倒産に追いやられたケースもあるやに聞く。

途中「損害賠償」という話題があったが、そんな僕たち中小零細がこれだけの社会的負担を賠償できるだろうか。

無論、やったことは悪い。

ただ、現実問題として、その社会に与えた衝撃を賠償できるほどの資力は僕たち中小零細企業にはない。

じゃあ、どうするのか?

この視点がとても重要となる。



現実的にどこへ向かうべき?

まず、第一に、今回関東地方整備局から発表もあるように、とにかく建てられた建物の安全性をきちんと評価し大臣認定という制度をうまく利用し安全性を保証する。

購入者の感情としては理解はできるが、そもそもJIS品と同等の強度や耐久性が確認できるのであれば取り壊すまでをするのはただただ社会負担を増加させるだけだ。

(もちろん、感情面の保証は精一杯尽くすべきだ)

これは理想的な着地だが、泣いても笑っても時は経ち、なんらかの形で事態は収束に向かう。

そうしたら今度は「どうしてこういうことが起こったのか?」に論点が移る。

僕たち建設・コンクリートに関わる人たちはここで背を向けてはならない。

半製品生コンクリートの現場・現実・現物における実態とその安全性を保証するJIS A 5308が偽りなく融合し合う。

今回の小島建材店ほど悪質ではなくとも、ルールがあったら破ろうとする人が必ず出てくるのは事実だ。

では、なぜ、「破ろうとする」のか。

そのことは、単純に「悪」なのか。

ルールは普遍的に正義で、それを変えよう刷新しようとするのは悪なのか?

地場産業生コンクリートがそれぞれの操業環境でそれぞれの特殊な背景を抱えている中で、あたかも精密機械のように、あるいは金太郎飴のように、どこを切っても同じ、全部同じです、ってことは果たしてあり得るのか。

多様性が話題になっているが、いわゆる「アソビ」というか、実態に沿った規格というものがあったら、ルールを破ろうとするむきは減るのではないか。

善・悪という二項対立ではなく、関係者全員で現実に向き合い、その上で健全な全体像の中の生コンクリートの在り方を模索する。


しつこいようだが、小島建材店のやったことは悪い。

これは、間違いのないことだ。

生コンポータルとしては断じて肩を持っているわけではない。

たださ、個人的な話になっちゃうけど、20年以上、職業人生の大半を「残コン」という問題に献げてきた僕からすると、辛い。

もっと大きい声で僕が発信していて、そして、もっと力があって、もっと早く大勢の人たちがこの問題を認知してもらい、社会が動いていたならば。

ラストワンマイルを苦しめない現実的なルールや規格がもっと早く出来ていたならば。

小島建材店は悪の道を歩むこともなかったのではないか。

いまだに我が国では「残コン」に法的位置付けがない。

RRCSが発足したとはいえ、まだまだ成果は将来のことだ。

今もラストワンマイルでは残コンが過酷な物心両面の負担を生み出している。



事件としては大きいが、物事は単純だ。

産業全体を学級と捉えればいい。

先生(規格)と生徒たち。

みんなお行儀がいいってわけじゃない。

ワルもいるし、できる子もいる、いろんなキャラクターがいる。

先生ができる子ばかり(でも、もしかしたら点数稼ぎでいい顔してるだけかもしれない)をほめそやし、悪には「お前はいつも悪さばかりして」と袖にしていたらどうなるだろう。

ワルはワルになりたくて生まれてきただろうか。

これを、精密機械を扱う工業規格が多様性を全て単一なモデル(いい子ちゃんモデル)の型に嵌めようとしたらどうなるか。

ワルはもっとグレるよね。

30人いたら1位からビリ(30番)まで決めつけられるよね。

お前の価値はそんなもんだ、と、レッテルを貼られる。

色々いる生コン屋さんを実態や実情を無視して一つの画一的な型にはめるようなものではなく、さまざまな環境を想定して先回りして手を差し伸べてあげられるようなJIS A 5308。

夢想かな。

でも、絶対に必要だと僕は思っている。

もしも、そうならないのであれば、そんなJIS A 5308なんかいらねえ。



宮本充也

宮本 充也

主な著者
宮本充也

危険物取扱責任者(乙4)/1級(舗装・造園・建築・土木)施工管理技士/コンクリート主任技士・診断士

毒物劇物取扱責任者/日本農業検定(1級)/エクステリアプランナー(2級)/運転免許証(大型・中型)

勉強中の資格:採石業務管理者/2級FP技能士